とにー

元労働基準監督官の作家

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  • 小説:労働Gメンは突然に

    【労働基準監督官のお仕事小説】 厚生労働省の職員にして、専門職の国家公務員、そして労働法の番人である労働基準監督官――別名、労働Gメン。 23歳の時野は晴れて労働基準監督官となったが、配属された角宇乃労働基準監督署の先輩たちは、「冷徹王子」の加平をはじめ、癖が強め。 賃金不払のまま行方不明の事業主、有給休暇を取らせない事業場……次々に持ち込まれる労働問題の裏には、労働Gメンを陥れる闇の指南役「R」の影が――その正体は、加平が追う謎の女なのか。やがて辿り着く、ある労働基準監督官の死の真相とは――。 労働Gメンの仕事の日常、巻き起こる様々な事件、時々恋愛(?)を描く、お仕事小説。

最近の記事

労働Gメンは突然に:第3話「有給休暇」

第1話から読む 前話を読む 登場人物本編:第3話「有給休暇」1 「今日はたくさん飲んで、食べて、楽しんでください! それでは、乾杯!」  かんぱーい、と口々に言う声に続いて、グラスが触れ合う音があちこちから聞こえた。  角宇乃市の繁華街である明多町は、角宇乃駅から角宇乃労働基準監督署とは反対方向に10分ほど歩いたところにある。  角宇乃市は県庁所在地ではないものの、県内の中核都市として人口が多く、それに比例するように繁華街である明多町も栄えている。  今日は、角宇

    • 労働Gメンは突然に:第2話「所在不明」

      第1話から読む 登場人物本編:第2話「所在不明」1 「時野くんの名前さー、龍牙って。なんか強そうでいいよねー」  時野が書類を綴る作業をしていると、安全衛生課長の高光が話しかけてきた。 「名前負けしてるって、よく言われます……」  時野が恥ずかしそうに言うと、高光は笑いながら話を続ける。 「俺もさー、『漣』っていうんだけど、顔面に対して名前がかっこよすぎるってよく言われるのよ。こんな二枚目つかまえて、ひっどいよな」  高光は話好きで、雑談をしている姿をよく見かけ

      • 労働Gメンは突然に:第1話「賃金不払」

        あらすじ 本編:第1話「賃金不払」1  市役所や警察署、税務署といったメジャーな役所が市内の中心地にあるのに比べて、角宇乃労働基準監督署は「町外れ」と言っていいような場所にあった。  JR角宇乃駅から徒歩20分――。もはや最寄り駅とは言いがたいほど駅から離れた場所に、角宇乃労働基準監督署の庁舎はある。  時野は右手でスマートフォンを操作し、目的地である角宇乃労働基準監督署の位置をGoogle Mapで確認した。左手には重たいビジネスバッグを持っている。  幸い、角宇乃

        • はじめまして

          元労働基準監督官(労働Gメン)のとにーと申します。 労働基準監督官を卒業後は、労働法関連のセミナー講師、著者として活動。 まだまだマイナーな「労働基準監督官」の仕事内容について、「労働基準監督官ってどんな人たち?どんな仕事?」という疑問にも応えるコンテンツを作ろうと奮闘中。 noteでは、労働基準監督官のお仕事小説やお仕事マンガを公開していきたいと思っています! 公式ホームページ 公式X(旧Twitter) お気軽にフォローしてください♪ https://twit

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