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年中休業うつらうつら日記(2024年5月11日~5月17日)

24年5月11日

旅の疲れが残っているのか、あるいは階下の部屋で重力場発生装置の実験をしているのか、身体が重くてだるくて仕方ない症状が続いている。
それでもここ数日、よく寝ているせいか少しずつマシになってるかな。

毎晩、YouTubeの「呪術廻戦考察ちゃんねる」を何本も観ているが、GW進行で雑誌自体が1回お休みなので、どのYouTuberも2週間前の回を何度も考察し直したり過去に戻ったりしてなんとか2週間のうちに読者が離れないように頑張っている。

よく見るのが「魔理沙と霊夢」という2人の女の子アニメキャラみたいなのが語り合って考察を深めるやつなんだが、今日届いた内田春菊の「私たちは繁殖している」第23巻(もはや面白いとか感じる以前に意地で買い続けてる気分)で、「4MRナントカ」というYouTube作成ソフトが紹介されており、例の2人の女子が描かれていた。
なるほど、あれはデフォルトである型があって、そこに好きな話題や映像をはめ込んで作っていたのか、と目からウロコ。
人間、何で学ぶかわかったもんじゃない。
私の最近の知識の9割はマンガから来ていると思う。

というわけで「ゆっくり魔理沙と霊夢」その他大勢の皆さんのおかげで、読んでもいないジャンプ本誌の258話までしっかり追いかけている気分だ。
話の進み方を見ていると、コミックスになるのはまだ当分先だろうが、今年中にはコミックス最終巻が出る、というウワサもうなずける。
またひとつ、名作が終わってしまうのか。
ナナミンの死亡、狗巻棘の負傷以来、ちょっとやそっとでは動じなくなっていた私でさえ、やはり気になる対宿儺戦の展開だ。

何度目かわからない荒木飛呂彦のジョジョシリーズを読んでいる。
何回読んでも面白いのだ。
「だが、断る!」と言ったのが誰だったかもう忘れてる精度の読み方だが、息子が昔、「人間賛歌は勇気の賛歌」と座右の銘にしていたのもうなずける。
「またジョジョ読んでる」とメッセージ送ったら、「いいなー、僕も読もうかな」
「読むといいよ。勇気が出てくる。特にイタリア編は気高いね」
「うん、あれはいいね」と息子と話が合うのも楽しい。

24年5月12日

1日のんびり過ごした。
郵便物を取りに行ったせいうちくんが、「管理組合で配っていた」とカーネーションを1本持って帰ってきた。
赤の他人からとは言え、「母の日」にカーネーションをもらうのは何年ぶりであろうか。
いや、これまでの人生では1度きり、大学生の頃の息子が突然「これ、母の日だから」とぶっきらぼうに1本のカーネーションを突きつけてきた、あの時だけだ。なつかしい。

今、ハマっている韓流ドラマ「ハイクラス」全22話の半分ぐらいまで来ている。
上流階級イジメものかと思ったらサスペンスになってハラハラドキドキ。
何しろドラマの中で「SKYキャッスル(実はこっちも観た)とか言ってますけど、弁護士も医師もしょせんサラリーマンですからね」とディスるほどのセレブたちの、しかも済州島に小学校と住居を作ってしまうというビッグプロジェクトだ。

去年ダイヤモンド・プリンセスに乗った時、天気が荒れて花火見物が中止になったうえ、済州島見物が釜山になったのだが、そうでなかったら我々も済州島の土を踏んでいたのだ。
ジャグジーで見かけた中年男性と若い女性といういかにもな組み合わせの2人は、しきりに済州島に行けないのを嘆いていたため、それほど有名なリゾート地なのか、とびっくりしたものだ。
「ハイクラス」を観ていると、「うん、これは確かに高級リゾート」と思わされる。

今のところ不穏な事件や不倫が頻発しているが、ロマンスはちょこっとしかない感じ。
ロマンスこそ人の心の拠り所なので、頑張ってほしい。
韓流にそういうのを求めるのは間違っているのだろうか。

24年5月13日

今日は息子妻Mちゃんが幼い時に病気で亡くなったお父さまのお墓に若夫婦、Mちゃんのお母さま、我々の5人でお墓参りをしようという話になっていた。
ついでに7月頭から1年間、ワーキングホリデーでカナダに行く若い2人の壮行会をやろうと。
ところが前日から天気模様が怪しい。
激しい風雨が予想されるという。

Mちゃんからラインで、「母とも相談したのですが、電車の乱れも心配ですし、今回は延期にしましょうか?」と聞いてきた。
私自身ちょっと風邪気味(抗体検査ではコロナ陰性)なので、ありがたくもこの流れに乗っかってしまった。
もうお花も駅前の花屋さんに予約したことは話してあるので、こちらの誠意は伝わっているだろう。

「明日、早起きしなくてすむ~」と20時頃から寝ようとしていた神経質な私はすっかり緊張から解き放たれ、結局寝たのは朝の5時であった。
それでもMちゃんが「9時ごろまでに連絡入れます」と言っていたのが気になっていて、6時半にいったん目が覚めてうろうろしていた自分の体内時計の優秀さにいつもながら感心する。

そこで二度寝して、9時にMちゃんから「今、雨はあまりひどくないけど体調がすぐれないと聞きました。今回は延期が良いと思うのですが、どうでしょうか?」と連絡があったので、「今回は見送りとさせてください」とお返事して、今日のお墓参りはなくなった。
初めて我々がMちゃんのお父さまにご挨拶する機会なので、花嫁姿のMちゃんと沖縄の海をイメージした花(花生けに入れられるよう2つに分けた花束)も用意してあったんだが、しょうがない、家に飾って、Mちゃんのお父さまに手向けよう。
花は雨が止んでたのでせいうちくんが受け取りに行ってくれた。

しかしそこでわかった衝撃の事実がある。
カナダの費用を稼ぐため、Mちゃんは明日っから1か月山小屋の住み込みバイトに行ってしまい、またカナダへの出発は7月1日とのこと。
息子のXで「7月頭」とは聞いていたが、前は6月中と聞いてて非常に流動的だったので、息子の言にはあまり注意を払ってなかったのだ。
それだとMちゃんが6月15日に帰ってきて我々がGくんと北海道車中泊に出てしまうまで、4、5日の猶予しかない。
リベンジお墓参りとか壮行会とか、2人との旅行とか甥っ子夫婦と一緒に会食とか、いろいろプランを立てていたのに、全部無理かも!
そもそもそこで北海道に行くなよ、というツッコミは置いといて、多忙な日々になりそうだ。

そして、やはりと言うか何と言うか、息子から「Mちゃんがいない間は寂しいし、都内でお芝居のADの仕事をしてるから、実家に行く頻度が増えるのは大丈夫?」と言ってきた!
たとえ彼が離婚するようなことがあっても二度と一緒には暮らすまいと決心してはいるが、今回は一時的なものだし、ある意味、彼との最後の蜜月となる半同居だろう。
「Mちゃんが帰ってくるまでに部屋を引き払う準備をちゃんとすること」と条件を付けて受け入れることにした。

「いいよー、時々おいでよー」という返事を追いかけるように、「どのくらいの頻度で実家来たら嬉しいか、体感的に教えて」と聞いてきた。
これはもう、ずーっと居座るつもりってことだろうか。
少なくとも26日に舞台が終わるまでは活動は都内に限られるから、うちにいた方が便利なんだろうし。
私は息子と会うとペースが乱れるからなぁ。
愛情なのか、歪んだ申し訳なさなのか、息子に好かれたいという欲求なのか、自分では全然区別がつかない。
気を強く持たねば。

ちなみに北海道に行くスケジュールを伝えたら、「(アフロ)田中みたいなことするんだね」と笑ってた。
「娘ちゃん以外の家中、みんな田中の真似して生きてるよ」と返事したら、「お姉ちゃんも頭の中は田中のように自由人だと思うよ」と言ってきた。
さすが、「手を握るととてもおしゃべりで雄弁な人」と姉を語るだけのことはある。

まったく、キャラバン(田中はハイエース)買うのも北海道行くのも日本の最北端で変なポーズの写真撮るのも沖縄行くのも全部家族の誰かがやってしまってるからなぁ。
やってないのは庭にプレハブ建てるのと猫を飼うのとトンネルを掘ることぐらいだろう。

住んでる部屋はMちゃんがさっさと手続きをして6月末で引き払うことになってるらしい。
そして出発が7月1日。無駄がない。Mちゃん、出来過ぎだぞ!
息子にはMちゃんが帰ってくる前に荷物を始末するという仕事が残ってるので、Gくんにキャラバンのスケジュールを広めにあけておいてもらうことにしよう。
今のままではいつ大物家電を処分したり本と本棚をうちに持ち込むかが決められない。

24年5月14日

もう今日から息子が来る。
大車輪でカレーを作るせいうちくん。
私はペットボトルに微糖のアイスティーを作っておく。彼はこれをすごく消費するから。
23時過ぎにやってきた彼は、「やあやあ、すまないね、お邪魔して」と言いながら風呂に入り、カレーを食べてご満悦。
黒四ダムで買った黒いTシャツを「ありがとう」と言って着て、黒四スコップ型スプーンは少し食べにくいそうだ。
ちょうど届いていた荒川弘の「黄泉のツガイ」最新巻を読んでくつろいでいる。

「お母さん、タバコ吸おう」と誘われた。
こないだMちゃんと一緒に来た時は半ば禁煙状態の息子が実家に来るとタバコ吸ってしまうのをMちゃんが嫌がってる気がして、灰皿とか隠しておいたのだ。
「お母さん、タバコ止めたの?」と聞かれた時も「んー」としか答えなかった。
Mちゃんが「息子くん、お母さんに無理強いしちゃダメよ」と釘を刺すのを見て、「うん、正解」と思ったが、1泊のその時と違い今回は長丁場だ。
隠しきれる自信がない。
なので灰皿もタバコも換気扇の下に置きっぱなしにしていた。

息子はさしたる矛盾も感じていないようだったが、一応こないだの私の内心と行動を説明したら「そうか、なるほどー」と納得してくれて、久しぶりに親子で一服。
車中泊で吸うのと同じぐらい美味しいタバコだ。

5月26日の舞台の楽日以降は息子も日雇いのバイトをするそうだし、部屋を引き払う準備にも入ると言うので、6月1日は我々側に用があることから決行日は6月8、9日の土日に絞った。
せいうちくんがGくんとこからキャラバンを借りてきて、冷蔵庫や洗濯機などを売りに行く、息子は事前に近くのハードオフなどに電話して、家電の種類と型式や使用年数を伝え、買取してくれるのかせめて処分だけでもしてくれるのかを調査、そして男手2人で運び出す。
あと、本棚と本はうちで預かり、スキャンしていいものはするし、取っておきたい本は別に箱詰めしてくれ、と息子に頼んだ。
ブックリストを作ってMちゃんと相談すると言う。
「写メ取って印付けてもらえばいいじゃん」
「いや、僕が作業するよ」
って、そこら辺の相談はまだなのかい。
他人の引っ越しってのは自分が考えるほどうまくは進まないものだなぁ。

いずれにせよキャラバンを使う日が決められたので、Gくんに連絡できてよかった。
ヘタすると「北海道に行くまで1人ドライブ旅に出ないでくれ」ってお願いになってしまうから。
Gくんも事がすんなり決まったので嬉しいのか、ベッドキットを外して荷物運搬用に車の床面をむき出しにしておいてくれるそうだ。

少しずつ、息子がカナダに行くのがリアルになってくる。
ビザも取れたしエアチケットも取ったようだ。
Mちゃんの即断即決がなければ話が進まなくて、Gくんがずっと言っていた「息子は行かない。あいつは行く行く言っといて絶対行かないヤツだ」って予言が当たっちゃうところだったよ。


息子とジョジョの話をしていて、「JOJOLandsは展開がゆっくりだね」と言うと、
「そうだね、思ったより静かな始まり方だね」
「ホームグラウンドなのが杜王町みたいだね」
「いや、でもあそこから世界に飛び出すんじゃないかな」
「そうか、岸辺露伴は人気だから出てきちゃうね」
「ああ、人気あるね」
「こないだ、岸辺露伴シリーズのドラマ、第9回をやってたよ」
「ああ、『密漁海岸』ね」
「イタリアンシェフのトニオとアワビ取りに行く話ね」
というような話ができて、楽しい。


ついでに三浦しをんの「舟を編む」が良かった話をしたら、
「あれって映画じゃなかったっけ?僕、観たよ」
「先期のドラマで10話ぐらいかけてやったんだよ。馬締さんがもう香具矢さんと結婚してて、原作でも途中から出てきた女の子、あの子が主人公の成長物語だったよ。良かったよ。母さんはアニメやドラマより原作がいい、って派だったけど、初めてドラマ版の方が素晴らしいって感想を持ったよ。実際、そのあとすぐ原作を読んだけど、『あれ、こんなに短い、薄い話だっけ?』って思ったもん。ドラマの出来が素晴らしかったんだよ」と語ってしまった。
いつか彼らもサブスクかなんかで観られるといいな。
DVDに焼いてあげてもいいんだが、今、荷物を減らしてる最中の人にあげてもなぁ。

24年5月15日

3か月に1回の眼科の検診日。緑内障がアヤシイので要定期検査。
寝ている息子を置いて10時10分前に着いた。
キライなんだよねー、あの、半球ドームに頭突っ込んで片目をふさがれ、もう片方も瞬きできる程度に固定されて「では、ドームのどこかが光ったと思ったらお手元のスイッチを押してください」の15分間ぐらいが。
もちろんもう片方の目も同じようにやる。

何らかのテストを受ける時、なぜ人は「なるべく正解しなければ」と思うのだろう。
たとえ見えない光があったり見逃したりしても、無数に出る光の見え方を機械が判断してくれるわけで、もし見えない部分があるのなら、それがその時の自分の検査結果であって、良いに越したことはないものの、無理に良くしようとする必要はないはずだ。
私はそんなにテストの点に悩まされたことはないバズなんだが、なぜだろう?

その話をせいうちくんにしたら、
「僕だってメモリークリニックで机の上に並べたものを隠されて、『はい、さっきあったものは何だったでしょう?』とか聞かれるとすごく焦る。ましてこっちはテストの点が悪いとド叱られるのは年季が入っているから、より間違えないように一生懸命になる」
「迷路を間違えると電流がピリッと流れるマウスみたいに?」
「そうそう。すり込みってのは恐ろしいもんだね」
てな話になった。

今回の検査では進行している様子はなく、低く保てば緑内障の進行を停められる眼圧も「1.5」と「1.6」で実に良かった。
これまで眼圧を抑える目薬を10年近く処方されているが、過去最低に低い数値だ。
これなら緑内障も進行するまいと、ちょっと浮かれている。
さすがに目周辺は気を遣う。マンガを読んで過ごす余生が台無しだから。

さて、こちらに引っ越してきてもう2年半、行きつけの眼科は駅前の大きなところに定まったが、なんとそこには駐輪場がないのである。
もちろん徒歩可能圏内だが、そんなことで歩きたくない不精な私は自転車で出かけ、となりのコンビニの駐輪場に停めている。
もちろん終わって帰る前に何かささやかなものを買ってお店に還元しようとは思ってる。

ところが、今日、検査も診察も終わって処方箋をアプリで家の近くの薬局に送信してからコンビニに入ろうとしてみたら…午前中は配電工事のため閉店なのだそうだ。
私以外にも5台ぐらい停めていたようだが、さて、その人たちはコンビニが使えないというのに一体どこへ行くために駐輪したんだろう?
全員が全員、眼科へ行ってる?いや、午前の部は私でほぼ終いだった。
世の中にはいろんな謎があるものだ。

帰ったのが10時40分ごろ。とても早く終わった。
息子はまだ彼に一時貸し与えたスペースでぐうぐう寝ており、私がキッチンに入った物音で少し目を覚ました。
「もう眼科は終わって帰ってきた」
「そうなの。早いね」と言ったと思ったらまた睡眠の海に沈んでいったようなので、出かけると言っていた昼近くまではほっとこう。

着替えてジョジョの「ストーン・オーシャン」を読み終え、「スティール・ボール・ラン」に入ったあたりで、キッチンから食器がカチャカチャいう音が聞こえた。
行ってみたら息子が自分でごはんとカレーをあっためて食べようとしていた。
声をかけずに1人でごはん食べられるなんて、とまた感涙にむせぶ。
Mちゃん、どうもありがとう。
あなたのおかげで息子の家事能力は飛躍的に増大しているよ。
親ができなかったしつけをイチからきちんと仕込んでくれる配偶者のありがたさよ。

彼が「食べ終わってお皿を洗ってから」出かけるのを見送り、薬局から薬ができてると連絡が入っていたので取りに行って、今日の私の仕事はおしまい。
ジョジョの続き読もうっと。
息子は自分の寝た布団まで干して行ってくれたよ。
せいうちくんを見て育ってるんだから、地力はあるはず。

24年5月16日

もう今週は出かける予定がないので、とってものんびりした気分。
多少、スキャンするマンガがたまっているが、それはそれで楽しみながらゆっくりやろう。
せいうちくんの仕事が終わってからピザを買ってきてもらって食べながら、昨夜息子が来たために観られなかった「ハイクラス」全22回の最終回をついに観た。
やっぱりあのダンナさんは悪者だったのか。
どちらも殺されかけた妻と愛人は最後仲良くなって、済州島の美しい海を見ながら乾杯をする。
長々と観てきたわりにはあっさりした終わりだった。

島に建てられた超エリート教育学校の話だったはずなのに、子供たちの授業風景はほとんど出てこない。
探偵が先生をやっている体育の授業が時々映るだけ。
母親たちのためのパーラーとか整いすぎていて、セレブの世界ってヘンなの、と思った。
あんなに事件だらけで母親同士の関係が厳しい学校に、子供を通わせたくはないなぁ。
日本以上に教育熱が激しいと言われる韓国の事情を反映しているんだろうか。

ちょうど終わった頃に息子が帰ってきた。
今のところカギを持たせているので、音もなくすっと入ってくる。
昨日はテレビに熱中していてリビングに突然現れるまで気づかなかったぐらいだ。
「何観てるの?熱心だね」と言われて「韓流ドラマだよ」と白状するのはなんとなく気恥ずかしかった。
しかし、今日は最終回を観終わった清々しさで、「いやー、韓流ドラマにハマる人が多いのもわかるわー。激しくドラマ性が高い」とか絶賛してしまった。

せいうちくんが作り足したカレーを食べている彼にせいうちくんが何やら話しかけている。
どうやら仕事の話をしてるようだ。
こないだ名古屋でCちゃんと3人で食事をした時も思ったが、せいうちくんは前よりずっと仕事の話に雄弁になった。
これはあれだ、おじさんが仕事を離れたあとも「私は何々のプロジェクトに参加した」「あそことの取引は俺が始めた」とか言い出すやつなのではないだろうか。

そこんとこずばりと聞いてみたら、せいうちくんは少し恥じ入った様子で、
「そうなんだよ。自分でもそういうおじさんにはなるまいと思っていたのに、心のどこかに『おじさんスイッチ』があって、すぐにカチッとそのスイッチが入っちゃう。自分でも多弁なのは意識しているんだが、止まらない」のだそうだ。
「ずっと仕事してきたんだもの、仕方ないよ」と息子に慰められる体たらく。

何にせよ、会社や社会を「大きく、豊かに」しようとしてきた親の代の思想をそのまま受け継いだ我々の世代は、今の「未来に諦念を持っている」若者層とは話が合うわけがない。
息子は不思議そうに、「何でも大きくすればいいってもんじゃないよね。僕は『小さくまとまる』でいいと思ってるんだ。ナントカ数ってあるじゃん、人間が互いに顔と名前を覚えられる限界が150人ぐらいだって話。あれに従って、顔の見える人たちと話し合ってやっていきたいな」と言う。
マンガや映画など、サブカルの分野ではけっこう話が合うと思っていたんだが、やはり世界観は大きく違うんだな、と思った。
そして、資源を食いつぶし、繁栄を享受して子孫に搾りかすしか与えられない自分たちをたいそう情けなく思うのだ。

24年5月17日

今朝は珍しくせいうちくんと同じく6時から起きている。
息子は10時半になってやっと起き、昨夜「お母さん、ごめん。すごく眠くなっちゃって、お風呂、ムリ」と言いながら寝てしまって逃した風呂に、朝から入っている。
「包みを開けちゃってもいい?」と読み始めた三田紀房の「アルキメデスの大戦」全27巻も1巻にしか手をつけてないようだ。
どうせいずれ自炊しようと思って買ったんだから、生本で読もうとデータで読もうと彼の自由。

5月26日の演劇の仕事が終わったら日雇いで働くつもりらしいが、どうも日数が足りなくて妻のMちゃんに約束した額が稼げないようなのだ。
せいうちくんは「もっと単価の高い仕事をするしかないねぇ」と言うが、息子が何かしら持っている資格と言えば道路整理で棒を振って車を誘導する研修を受けただけ。
他にすぐに稼げるあてはない。
「いや~、働きたくないんだよね~」と正面切って言われ、つい昨日、せいうちくんに「大丈夫、彼は怠け者じゃないから」と言い切った私は赤面した。
「だから少し借りたいんだよね」と彼が言い出す前に「言っとくけど、お金は貸さないよ」とカウンターを食らわせておこうかと思ったが、最後までその話は出なかったので、言わなくてよかった。

もうビザも下り、フライトチケットも取ってあとは向こうで生活を始める費用の問題らしいから、2人でなんとでもするだろう。
Mちゃんがいない間うちにねぐらを提供し、食費を浮かせてやり、部屋の引き払いを手伝う。
それ以上はできないしする気もない。
ただでさえこっちの頭は半分北海道車中泊でいっぱいだし、1年会えない寂しさとかが襲ってくるのも現場のドタバタで麻痺しているってのに、今の今、彼のバイト料のことまで考えてるゆとりはない。

ああ、子供が大人になるっていいもんだなぁ。
生きてるかどうか以外にあんまり気遣ってやる必要がないんだもん。
「プリントは出したか、宿題はやったか、弁当箱を出せ」と細かく見て文句を言っていた頃に比べれば、全然楽勝だ。

我々夫婦は2人ともあまり「あたたかく包んでくれる家庭」というものに縁がなかったので、息子に「家族って、実家って、どんな存在?」と聞いてみた。
「ゆったりする。お風呂みたい」って答えだった。
「何度ぐらい?」とせいうちくんが聞いたら「40度」。
それはちょっと長湯するには熱いんじゃないかと思うが、彼がいつも好んで入る風呂の温度は40度だ。
我々は41度にしているので、息子が来る時は40度に設定してやる。
前に41度を「ちょっと熱い」と言われてるから。
実家が自分の適温であるのはとても美しい、いいことなのだろう。
それでも長湯したらのぼせて飛び出したくなるってところまで、実家や家族は風呂なのかもしれない。

息子は出かけちゃったし、せいうちくんはお仕事だ。
「ジョジョリオン」読んで昼寝しよう。
すでに「老後」に入っている私の生活。
既刊134冊に及ぶこの大作を最初から最後まで読むのももう何度目か。
しかもこれ読んだら芥見下々の「呪術廻戦」既刊26巻の7回目ぐらいを読もうと思ってる。
生産的でないことおびただしいが、これもまたひとつの生き方だ。

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