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祈りのように ひかるまち

ひかるまちへいきました

噛めるひかり啜れるひかり飲めるひかり
祈りのように盛岡冷麺(くどうれいん)

、という、歌を追いかけて

美しい絵を鑑賞するのと同一の感性で
食べることをも感じてみませんか(くふや)

、という、誘いを拾いあげて

ひかるまちを歩きました

あるひとは赤い衣に身を包み、あるひとは笛を吹き、あるひとはグラスをウィスキーで満たし、あるひとはドーナツ盤を返し、あるひとは牛と侵略を語り、あるひとは隣の席に導き、あるひとは傘を差しだし、皆皆がその心をわけてくれた

心をわけてくれた。

その一部をとりだし、差しだす。おひとつどうぞ。アンパンマンが頭をちぎって与えるように。実家から届いた蜜柑が多すぎるみたいに。

手のひらにあふれた青豆の種子を隣人に分ける。隣人はその種を土に埋めてみる。水を遣るのを怠らなければ、種はいずれ芽を吹いて天に向かって伸びてゆく。

また来年、ここで会いましょうとそれぞれに告げる。声にだして、あるいは心のなかで。

ひかるまちを後にして、種を土壌に埋めて、土を被せる。蛇口をひねって水をだして、土に水を遣る。怠らず、そこに瑞々しさを保つ。

青豆の木が天高く伸びて、また逢えますように。



今年も盛岡へいきました

うれしい再会と素敵な出会いがあって、豊かな会話があって、希望の約束があった。

岡本仁さんの"盛岡を想う。"にも登場し、お友だちに薦められたくふや。店の前の貼り紙を見て慌ててコンビニに現金をおろしにいき、汗ばんだ手で暖簾をくぐる。弁当を待つ間にBOOKNERD出版の"くふや くわづ"を読む。

BOOKNERDの中を何周もして本を選ぶ。喫茶店へ入ってパフェをつつきながら買ったZINEを読む。

くふやで紹介してもらったリタへ出向き、タイ料理を持ち帰る。ホテルの部屋で小説を読み耽る。

パノニカへ。一年前来ましたとマスターに挨拶をする。ソニー・ローリンズのサキソフォン・コロッサス。セント・トーマスが夜を明るく照らす。ジャズ奏者のお姉さんと無事再会を果たす。

眠りこけて朝散歩。櫻山神社、盛岡城跡公園、盛岡八幡宮、肴町商店街。

パァクもリーベもお休み、カワトクの地下でじゃじゃ麺を啜る。お腹がいっぱいなので歩く、光原社へ。そこでタイ料理のお姉さんと偶然の再会を果たす。赤い服と赤いロンTで話し込み、BOOKNERDへ一緒に行くことにさせてもらう。図々しくも車に同乗。早坂さんと舞木さんとゆっくりお話しできていい時間。大量消費と資本による侵略と来年の話。

盛岡バスセンターでパノニカのお姉さんの出るジャズライブを観る。鈴木牧子トリオという。業界では名の知れた方なんだと思う。下田さんというベースのおじさまが喋り相手を紹介してくれる。ドラムをやっているという方とぼちぼち喋りつつオリジナル曲やブルージャイアントの曲を鑑賞。かっこいい生演奏、心震わす生演奏。

クラムボンが満席だったのでミスタードーナツで昨日買った寺山修司を開いてみる。はじめての寺山修司、旅路の果て。

ホテルに戻り、小説の続きを読み、早めに眠る。

あいにくの雨。チェックアウト。コンビニへ傘を買いに行くために傘を借りても良いかと尋ねると、良かったら差し上げますとのこと。なんと親切なのだろう。有り難く受け取って六月の鹿へ。

扉を開けるとコーヒーの香り。窓から見える緑は雨を含んで瑞々しく美しい。あんこの練り込まれたスコーンがざくざくとして美味しい。すこしずつ頂きながら小説の続き。支払いを済ませて店を出る。店主さんの笑顔が素敵。

雨が弱くなっている。櫻山神社を背にバス停へ。ほどなくやってきたバスに乗り込んで駅へ向かい新幹線。福田パンを携えて。

東京駅に着いたらそのまま下北沢へ行くことになっている。いい旅だった。

縁もゆかりもない盛岡になぜ来るのかと何人かに問われる。わたしはなんだか困ってしまう。すきだから来ている。前に来てすきだなと思ったのでまた来ている。井の頭公園を散歩したいから吉祥寺に行くみたいに、海を眺めたいから鎌倉へ行くみたいに、この街をあるきたいのでやってくる。

今年も、思っていた以上にうれしいであいに恵まれた。マインドがオープンですねとか意外に積極的ですねとか言ってもらったけれど、このまちだからそんなふうに心を開けるのだと思う。そしてそういう大胆さが歓迎されるということを学ばせてくれたのは駒沢のあの場所だったりする。

ありがとう、盛岡のひと、盛岡のまち。
また来年。