元VRChat民から見たResoniteの10の欠点


はじめに

こんにちは。

筆者のわたしは多くの時間をソーシャルVRの空間内で過ごす、いわゆる「メタバースの住民」です。
2022年の夏以来、VRChatで3500時間ほどの時間を過ごし、様々なコミュニティやイベントに出会ってきました。
そんな人間が2024年10月にリリースされた新しいソーシャルVR、Resoniteを500時間ほどプレイしてみました。
これを通して、Resoniteは確かにVR空間内の利便性が高いですが、欠点も存在するということが分かってきました。
そんな訳で、元VRChat民から見たResoniteの欠点を10個ほど上げてみようと思います。

Resoniteの10の欠点

1. セッションがP2Pである

多くのソーシャルVRではそれぞれのユーザーがクライアントを通してサーバーに接続する方式を採用しています。
その一方でResoniteはP2P方式を採用しており、それぞれのユーザーが直接通信する形式になっています。
Resoniteでセッション(VRChatでのインスタンスに相当)を開くと、開いた人がホストユーザーとなります。
このときそのセッションのメタ管理(?)はサーバーではなくホストユーザーが行うことになります。
このため、ホストユーザーがセッションから切断するとセッション内のユーザーも切断されてしまいます。
Resoniteを終了しようと思ったとき、自分で開いたセッションにいる他の人に移動を呼び掛ける必要があるのは手間ではあります。

ただし、P2Pの採用は利点でもあります。
通信がサーバーを経由しないため、マイク音声の遅延が少なく、会話中に相手の反応に間があると感じることはほとんどありません。
また、回線の状態が良いセッションに一度接続すれば、ラグや不具合がサーバーの状態によって左右されるということもありません。
さらに、要課金ではありますが、サーバーに相当するヘッドレスというものをユーザーが立てることもできるので、自分が抜けた後もセッションを開いておく必要がある場合はそれを使うこともできます。

2. 権限やプロテクションの管理が必要

ResoniteではVR空間内で様々なコンテンツを共有・編集できます。
例えば、Builder以上の権限を持っているユーザーはオブジェクトのサイズや描画を自由に変更することができます。
アバターを含め、ワールドにあるものをだいたい編集できる一方で、それ故に「荒らし」としてできることの幅も広くなります。
また、様々なデータをPC内からワールドにインポートしたり、逆にエクスポートすることもできます。
このため、インポートするデータの権利に充分気を使う必要があります。
これらは権限やプロテクションを適切に設定することによって防ぐことができますが、セッションを開いたりデータをインポートする前にそれらの方法を充分知っておく必要があります。
これは自由度が高いと言われるResoniteの宿命と言えるでしょう。
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」ということです。

3. 要求されるマシンスペックが比較的高い

ソーシャルVRの中でもResoniteは特にPCへの負荷が高く、要求されるPCスペックも高くなります。
具体的には、ワールドにも依りますがセッション人数が10人を越えた辺りでかなり負荷を感じます(Quest2、i7-6700K、RTX3060使用)。
少人数であれば問題ないですが、イベントなど大人数で集まりたい場合は負荷に気を使う必要があります。
とはいえアバター表示の距離制限を導入したり軽量アバターを使用したり、最悪その場でデスクトップに切り替えることで割と対応できます。
また、Resonite本体のアップデートで最適化にも取り組まれているので、今後のアップデートでの改善も期待できます。

4. 未解決のバグがまだ多い

Resoniteは執筆時点ではリリースされてまだ数ヶ月のプラットフォームであり、荒削りの部分も見られます。
そのため、まだ優先度の高い問題の解決に集中している段階であり、細かいバグ等が残っている状態です。
例えばダッシュメニューのセッション一覧がうまく機能していなかったり、オブジェクトの同期が止まる現象が発生したりします。
また、現状のResoniteでは他のプレイヤーがjoinしたときなどに読み込みが発生し、短時間フリーズすることがよくあります。これがResoniteが重いと認識されやすい原因にもなっています。
とはいえResoniteはリリース以来頻繁にアップデートされており、リリース当初に比べれば安定度はかなり上がっています。
これも今後のアップデートに期待するところでしょう。

5. アバターのIKがあまりきれいではない

Resoniteは全身トラッキングに対応しており、トラッキング機器を用いて脚などを動かすことができます。
ただ、自分がResoniteで全身トラッキングをしてもアバターが身体に馴染みにくい感覚があります。
一応Resonite内でアバターの全身キャリブレーションを行うこともできますが、良い感じにするのはかなり難しいです。
これはおそらくVRChat出身の人間の感覚であり、VRChat以外のプラットフォームだとだいたい同じ感覚になります。
これはTポーズでトリガー押すだけでフルトラでアバターが身体に馴染むVRChatのIKが優秀と言えるでしょう。
ただし、今後のアップデートでIKを刷新することが公式から示唆されており、やはりこれも今後のアップデートに期待です。

6. Unityによる本格的な製作や表現が使えない

ResoniteはFrooxEngineという独自のエンジンが使用されており、Unityとは異なる内部処理が行われています(一応レンダリングにUnityを使ってるらしいですが)。
そのため、Unityの拡張ツールやシェーダーを使用したり、Unityゲーム製作者が慣れた操作でコンテンツを製作したりすることができません。
つまり、Resoniteは「Unityしなくてよい」一方で「Unityができない」プラットフォームでもあります。
ResoniteはVR空間内でツールを入手したり、他の人にオブジェクトを編集してもらったりすることができるので、そもそも自分で開発画面を開かなくてもあまり不自由しません。
また開発をする場合も、VR空間内で直接的な動作でオブジェクトを編集したり、ビジュアルプログラミングを行ったり、隣で実物を一緒に見ながら他の人に教えてもらうことができます。
そのため、Unityの知識が無い状態から学ぶ場合はむしろ学びやすい環境でもあります。
ただやっぱりUnityは使えないので、どうしてもUnityで開発したいという人には向かないかもしれません。

7. 完結したのんびりワールドがまだ少ない

Resoniteにはゲームワールドや野外ワールドが多く存在するものの、室内でゆったりするワールドは少ない傾向にあります。
これには様々な原因が考えられます。
Resoniteでは欲しくなったものはアイテムとしてその場で取り出すことができます。
例えば動画プレイヤーやペン、ベッドや3Dモデルなども必要に応じてインベントリやUniPocketからいつでも即座にスポーンさせられます。
そのため、最初から完結したワールドが必要であるというモチベーションがユーザーにとって低い傾向にあります。
また、Resonite内でアバター以外の開発を始めたいと思ったとき、まずはアイテムから始めてみるというパターンが多いです。
それゆえ、はじめて開発に関わる人にとっては敷居が低い場所である代わりに、ワールド作成に手を付けるのは比較的遅くなるのではないかと思われます。
とはいえ、ワールド作成においてVR空間内で直接オブジェクトの位置やサイズを調整できるのはかなり直感的なので、そういったワールドを作成する人も今後多く出てくるのではないかと思っています。

8. 作業時間とのんびり時間のメリハリが難しい

ResoniteはVR空間内で開発を行うことができます。
そのため、Resoniteにオンラインの人に会いに行くと開発作業に集中している場合もあります。
また、VR空間内で何か不満点やアイデアが発生したときにその場で作業を始めることができてしまいます。
何も意識していないと、「ただ喋りに来たつもりが気付いたら作業してた……」ということはよくあります。
つまりResoniteでは「シームレスに作業時間とのんびり時間を切り替えることができる」一方で、「作業時間とのんびり時間を切り分けたい」場合は自分で意識してメリハリを付ける必要があります。
作業からしばらく離れてのんびりした空間に居たい場合は、Builder権限を切って開発画面を開けないようにしたり、そもそも開発作業をしていないのんびりしたコミュニティに行ったりすると良いでしょう。

ところで、自分はResoniteに来た当初は「Resoniteには鏡の前でただ喋るだけの文化は無い」と思っていました。
しかし実際にはResoniteもコミュニティが細分化してきていて、色々なコミュニティを見ているうちに、開発画面を開かず鏡の前で喋るだけみたいな人も結構居ることを知りました。
新しいプラットフォームには開発関係者が集まりやすい傾向があるのか、今はまだ非開発者の比率は多くないかもしれません。
しかし、Resoniteは開発画面を自分で開かなくてもいろいろできる場所なので、実は非開発者こそ住みやすい場所だと筆者は考えています。

9. ネット上の情報がまだ少ない

Resoniteはまだ新しいプラットフォームのため、インターネット上で検索しても欲しい情報が見つかりにくい状況にあります。
そのため、長い歴史と多くのユーザーを抱えている、あるいは公式が豊富なドキュメントを揃えているプラットフォームに比べると、「親切な教科書に従って学んでから作業する」や「困ったときに解決方法を検索する」などの手法が現状は取りにくいです。
これがResoniteでは他人に頼ったほうが良いとよく言われる所以です。
Resoniteではその場でアバターやオブジェクトを編集してもらったり、開発を教えてもらったりできるので、「他人に頼れる」人にとっては良い場所ですが、そうでない人にはまだ厳しい場所でもあります。
とはいえ自分も含め、Resoniteのユーザー間でも記事を書こうという機運は高く、少しずつではありますが今もResoniteに関する有益な情報が蓄積されているところです。

10. 対応アバターがまだ少ない

現在boothなどのサイトで多くのアバターが配布・販売されていますが、これらの多くはVRChat用にセットアップされたunitypackageの状態になっています。
VRMのセットアップがなされているものは今も少なからずありますが、Resonite用にセットアップされたファイルが同梱されているアバターはまだほとんど無いのが現状です。
そのため、Resonite非対応のアバターをResoniteに持ち込もうとすると、まずFBXなどの3Dモデルからセットアップを行う必要があります。
しかし、アバターモデル自体がResoniteを想定していないため、ResoniteにFBXなどをインポートする前にボーン名などに対応が必要な場合があります。
それ以外にもマテリアルの調整など、アバター作者さんがVRChat用に行っているような設定を自分で行うことが必要です。
これらの問題をResoniteの知識が不十分な状態で行うと問題が発生したときの対処が困難なため、どうしても「自分のアバターのセットアップ」という他のプラットフォームから来たときのスタート地点は他人の力を借りざるを得ないところがあります。

あとがき

主にVRChatと比較する形になってしまいましたが、元VRChat民がResoniteの欠点を10個挙げてみました。
Resoniteの利点の裏返しのようなものもあれば、今後に期待といったものもあったと思います。
現状これほどの欠点があってもなおResoniteを利用するのは、それだけVR空間内の利便性という利点が大きいからです。
何においても、特定の欠点が気になるか気にならないかは人によって異なり、利点のほうが大きいと思えば欠点にも慣れて大して気にならなくなるものです。
実際、「初心者さんが髪色を変えたいと言っても何も助けることができず、ただUnity頑張ってと言うことしかできなかった」という事件を通して決定的にVRChatに戻れないと筆者は感じましたが、多くのVRChat民にはそれは気にならないことでしょう。
先日の記事でも述べた通り、技術的な制約により現状"ひとつの万能なメタバース"の実現は困難です。
そのため、それぞれのプラットフォームの利点と欠点を正しく理解した上で、複数のプラットフォームを行き来したり、自分に適したプラットフォームで生活したりするのが良いのではないかと筆者は考えています。
なお、自分はResoniteを500時間しかプレイしていない初心者なので、万が一本記事に誤り等があればご指摘頂ければ幸いです。わたしは誤りを指摘されてワードミュートとかはしないので

蛇足・VRChatの話

ところで、9の情報不足や10の対応アバター不足の問題は初期のVRChatでも同様に存在したのではないかと思います。
VRChatの「開発者がアバターやワールドを作って共有し、ユーザーがそれを使って遊ぶ」というコンセプトは"Create, Share, Play"というキャッチフレーズに顕れていて、設計もそれに従ったものになっています。
いわば「VR版YouTube」であり、動画編集ツールに相当するものがUnityになります。
すなわちVRChatは「一般ユーザーにUnityをさせる」つもりだった訳ではなく、そもそも各ユーザーが自分のアバターをアップロードするということを設計段階で想定していなかったと考えられます。
そんな中で、VRChat黎明期にはソーシャルVRの魅力に取り憑かれ、様々な開発関係者が集まったことでしょう。
そのうち、VRChatを単に「VR版YouTube」としてではなく、生活空間の代替、いわゆるメタバースとして用いる需要が高まりました。
その当時は自分のアバターを使おうとすればゲーム開発者向けのUnityドキュメントを読み、ツールも無い状態で1からセットアップする必要があったでしょうから、想像を絶する敷居の高さだったと思われます。
これではダメだと考えた先人たちは記事を書き、VRChat用のセットアップを施したアバターを配布・販売し、VRChat用のUnityツールを作りました。
今VRChatが「検索さえできればなんとかなる」メタバースとして成り立っているのは、こうした数え切れない偉大な先人たちの努力の結晶と言えるでしょう。
その一方で、プラットフォームの制約により「自分でなんとかできない」場合は他の人が直接援助するのが難しく、検索などで「自分でなんとかできる」かどうかでユーザーがふるいに掛けられているのが現状だと思います。
先に述べた通り、Resoniteは自分でなんとかできなくても「他人に頼る」ことができるプラットフォームですが、まだ「他人に頼れない」人にとっては現状厳しい場所になります。
今もたくさんのResoniteユーザーが記事を書き、Resonite内ツールを開発していますが、歴史と圧倒的人口を抱えたプラットフォームと比べてしまえば今はどうしてもマンパワーの不足が目に付いてしまいます。
しかし、Unityが必要なVRChatですら解決したそれらの問題がResoniteで解決しないことは無いと思っています。
世の中には「自分でなんとかできない」人も「他人に頼れない」人もいます。
Resoniteはどんな人でも生活できる、「できないことはやらなくていい」場所になりうると信じています。
自分はその実現の一助になりたいと思って記事を書き、アバターのResonite用セットアップに関わっています。
自分はオタクなので、自分が良いと思うものに共感してくれる人が居てくれれば、それが幸せだと思うのです。

え?Resoniteには知り合いが居ない?
それは新しい場所で知り合いを作ろうとしてないからではないでしょうか。
まずはわたしとお友達になりませんか?

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