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過去の火と上がる煙

初めて吸った煙草はmarlboroGOLDだった。

高校2年の夏、うだつの上がらない気だるげな学生だった俺は、似たようなアホ共とつるんでいた。
類は友を呼ぶ、とはよく言ったもので
周りにいるのは愛おしきアホ共だった。
勿論、根は良い奴ばかりで他人様に迷惑をかけることを善とする奴らではなかったのがせめてもの救いだったのかもしれない。

そんな中でも厨二病の次には高二病が来るもんだ。
当時、ヒップホップの世界にドハマリしていた我々は「悪い」ことがかっこよく思えていた。
足りない頭を捻りついぞ出した答えが煙草だったのだ。
その頃から、というか今もではあるがかなりの老け顔だった俺は全員の煙草調達係という重大役割を任せられていた。
どれぐらい老けてたかと言うと…
その当時はペッパー君が出始めの頃。
スーパーやショッピングモールにいけば当たり前のようにペッパー君が居たのだが
彼の特技に「年齢当てゲーム」なるものがあったのだけれど、17歳だった僕が挑戦。
ペ「僕の手を取って目を見つめてください」
…流暢に喋りやがるなコイツ。すかさず手を取る。
ペ「ふむふむ、なるほど!分かりましたよ」
ホントかよお前www間違ってたらどーすんだよwww
ペ「ズバリ!あなたの年齢は”37歳”です!!」
この時僕は思った。科学なんてクソくらえだ。
20歳も上は最早ネタだろ。今のAIはお笑いすら履修しているというのか。
案の定、というか予定通りにツレは大爆笑。死ぬ程笑い転げていた。オチのわかったお笑いであれだけ笑えたのだ。その辺のおじいちゃんが上裸になって「パワー!」ときんに君の真似でもしていたら多分笑いすぎて死んでいたかもしれない。

これでどれだけ老けていたか分かるだろう。
未だにその当時のツレと集まると話になるが、何回話しても全員笑う。笑ってくれるのは嬉しいが少しだけ切なくもなり、まるで昔の黒歴史を呼び起こしたかのような気持ちにもなる。

長々と前置きを書いたが、そんな事でいつも煙草がある。
所謂三種の神器なるものがあり、ケータイとサイフと煙草があれば生きていける。なんて言ってる。我ながらアホだ。
ただ人生において煙草は切り離せなくなり、いつしかその時吸っていた銘柄を見るだけでその当時が昇る煙のように鮮明に思い出せるのだ。
当時付き合っていたあの子も、宿題を忘れたあの日も、バレないように家を抜け出したあの夜も、上司にキツく当たられ涙したあの車の中も。

禁煙分煙が叫ばれる中肩身の狭い思いをしている高額納税者ではある。百害あって一利なしなんてレッテルを貼られても居る。
でも恐らく死ぬ迄手放せ無いだろう。記憶という火をつけて思い出の煙を体に取り込んで不安や不満と共に吐き出しているんだ。

こんなステキなモン、辞めれるわけが無い。

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