カントリーマアム山田の話

「他人のS N Sを見て、つい比べて悔しくなったりしんどくなったりしてしまう。」

こんな相談を受けた時、僕は決まって彼の話をする。そう、カントリーマアム山田だ。

先日ボイシーでお悩み相談をしていて久々に彼のことを思い出したのでここにも書き残しておこうと思う。

山田くん(仮名)はとにかくカントリーマアムが大好きな男だった。
1枚50kcalあるカントリーマームをファミリーパックの袋で持ち歩き、学校にいる間に20枚1000kcalを食べ尽くしてしまうその佇まいから、彼がカントリーマアム山田と呼ばれるようになるまでそう時間はかからなった。
元来優秀であった彼はその摂取した糖分を存分に脳に回し、ストレートに進学し初期研修を終えた後、美容外科の道へと進んだ。

美容外科医は集客のためSNSをするのも仕事の一部であり、彼も例に漏れずキラキラS N Sを始めた。高級そうなレストランの食事をあげては「食べるもので体は作られる」「美は普段の食生活から」のような言葉を載せ、それを信じた多くのファン達からいいねがつくようになった。食べたもので体が作られるなら体の半分くらいはカントリーマアムであろうカントリーマーム山田が、である。

そんな折、久々に彼と飲みに行くことになった。場所は新宿。夜景が綺麗でオシャレではあるがそんなにおいしくはない焼肉屋であった。飲みながらSNSの話もしたが、彼はS N Sをビジネスとして割り切れているわけではなくむしろ真の自分と、作り上げた虚像の間で線引きができず少し生きづらそうに見えた。昔から彼を知る僕からしてもやはりキラキラSNSに侵食されたように見える彼との間には少し壁を感じずにはいられなかった。

旧友との再会でそれなりに酔ったものの、私はその日東京に泊まる予定であったのでそのまま彼の家で飲み直そうという話になり、つまみなどを買いにドンキホーテに寄った。成城石井にでも寄らされるかと思っていた私は、少し安心しながら酒を選んでいたが、つまみを選びに行き帰ってきた彼を見て驚いた。声をかけてきた彼の手にはしっかりと、そして当たり前のようにカントリーマアムのファミリーパックが握られていたのである。結局彼はいつまで経ってもどうしようもなく、カントリーマアム山田だったのである。彼に距離を感じるようになったのは彼が変わったのではなく、彼のS N Sに気圧された私の彼を見る目が変わっていたのだろう。

このように、インスタをはじめとするS N Sでは他人の人生のほんの一部しか見えず、また見せられているものが真実とも限らないのに、人はそれをつい、真実と信じ込み振り回されてしまいます。ついついそんな風に考えてしまいそうになった時は、ぜひ、カントリーマアムが大好きな彼のことを思い出してあげてください。

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