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2023/03/23 採集後記録


昨日の採集を終えて帰ってきたのは午前3時頃だったはず。

フラつきながらも、これだけは終えないといけないと思い、採集個体を飼育ケースに入れた。

今回捕獲したセアカオサムシは非常に小さなオサムシで、ペットボトルキャップにすら満たない体長の虫だ。
アオオサムシと比べてもその小ささが際立つ。
自分が人生で初めてこの虫に出会った時の第一声は「ちっちゃ!!!」だった。

アオオサムシとセアカオサムシ
アオオサムシとセアカオサムシ


一旦、同じケースに入れてから種類毎に隔離しようと思ったら、両種共にペアが揃った途端に交尾を始めた。

交尾を行うアオオサムシと
セアカオサムシ

両種共に単独行動をしていた個体だ。
他個体と遭遇する機会自体がそこまで頻繁にあるものではないため、繁殖期の異性同士が接触するとこの機を逃さぬとばかりに交尾が始まる。
特にオスは触角を機敏に動かしてメスの匂いの元を探す。飼育下でもその行動は見られるが、常にメスと同居しているような状況ではほとんど見られない。一度の交尾が貴重となる状況下で多く観察される行動だ。
以前にどこかの記事で書いた記憶があるが、オサムシの繁殖期は必要以上の交尾による体力の消耗や他個体との接触による産卵の中断を避けるため、特にメスを単独飼育すべきだと考えている。

昆虫を含む生物の交尾の多くは、後背位によって行われる事が多いように思えるが、この画像のように段差や壁に手(前脚)をついて行うそれを見ると、人間臭さや艶かしさ、生々しさが混ざった感情を覚える。
清潔なバスルームの如く整えて成形された人工物であるペットボトルキャップ。その上で行われる交尾だからこそ、そうした感情を想起させるのかもしれない。


最低限のメンテナンスを終えた後に、すぐさま入浴をして湯船で寝てしまった。
大変危険なのでそうした状況では先に睡眠を取るべきだが、非常に気持ちの良いひとときだった。だからこそ危険なのだが。

ぬるま湯となった湯船で微睡まどろみながら、趣味における目標、もとい人生における目標の一つであったセアカオサムシの完全自力開拓採集の達成を噛み締めていたように思う。
遠出して有名産地に赴くのではなく、自分が見つけたポイントを散歩する事で出会う事ができる事実を噛み締めていたように思う。
そんな夢現ゆめうつつの中では、冬の間にGoogle Mapsでずっと目を付けていた、「確実に居るだろう」と目論んだポイントで出会った5個体。それら全ての発見シーンが鮮明に再上映されていた。
狙った通りに獲物が動いた、それはハンター冥利なのだ。

しかし、初めて地元県産セアカオサムシを発見した際、感極まるほどに脳内麻薬が分泌されたかと言われるとそうでは無かった。
嬉しくはあったし、楽しくもあったが、総合的に見るとそこに至るまでの道中が1番楽しかったし得たものも多かったように思える。
今回もジン=フリークス案件なのか。
いや、本当にジン=フリークスの言葉通りだ。

HUNTER×HUNTER
ジン=フリークス
"外"へ行くために必要なものは多い

出発するまでだけで最低4つはある

許可 手段 資格 契約

オレはまだこの中の一つも手に入れてない

だが別に急いでいない

道中を楽しんでる最中だ

だからもしお前の行き先が将来オレと重なるようなら

道草を楽しめ 大いにな

ほしいものより大切なものが
きっとそっちにころがってる
HUNTER×HUNTER No.339
ジン=フリークス


HUNTER×HUNTERは作者自身がコレクターである事もあり、趣味に熱中する者に刺さりやすい言葉が多い。
作者の体験談から出る説得力なのだろう。


文献を漁ったり、何年も飼育したセアカオサムシだが、自分はこの虫の事を3割も知れていないし、そもそも繁殖方法の確立も成されていない。
ここ数年でようやく餌が分かってきたかもしれないという段階だ。


まだまだ道中を楽しめる、その事実だけではらわたの底が心地良く熱くなった。




一連の採集記録記事



下記リンクはフォロワーであるrokiさんが運営するサイトのセアカオサムシのページ。
非常に美麗な生態画像が数多く掲載されている。
(タップしてもリンク先に飛ばない場合は、端末にもよるが長押しでリンクが表示される)




後日談

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