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オサムシ類の産卵に関する私見と観察例


※当記事の私見、考察は論文等を参照にした物ではなく、暇潰しに行った完全な妄想である事をご留意いただきたい。




セアカオサムシが連日、卵を産んだ。
セアカオサムシに出会って以降、4年間の飼育で始めての事だ。
嬉しいがあまり期待はできない。
この状態から死ぬ卵があまりにも多いためだ。
恐らくは過去の飼育で産んだ例もあると思われるが、何らかの原因により死んでしまった物もあるのだと思う。

飼育ケース壁面の地中に生み付けられた
セアカオサムシの卵。
大きさは3ミリほど。



オサムシの卵はやたらと弱い。
掘り起こせば高確率で腐り、ケースそのものを動かした衝撃でも腐り、乾けば腐り、水が多くても腐り、または何もせずとも溶けていく。そんなパターンがかなり多い。
オサムシ繁殖を始めて5年が経ったが、未だにオサムシの卵の扱い方が不得手であり、未熟だ。
野外ではそうでもないのかもしれないが、自分はそもそも「これは飼育下では多くが死ぬ物」だと思って扱っているために、ちょうどいい加減の触れ方ができていないような気もする。
一切触らないか、地表に産み捨てられてしまった卵は慎重に移動させつつもすぐに死ぬ物として内心雑に扱っている心当たりがある。



詳細な比較実験は行っていないが、森林棲の傾向が比較的強いアオオサムシや山地生息型のマイマイカブリさえも砂を好んで産卵する。腐葉土は全く好まない。完全に森林を好むクロナガオサムシも砂に産む。
ただし、腐葉土に対して完全に産まない訳ではなく、消極的ながらも産卵は行うが、やはり数が少なく孵化率も低い。
ほとんどのオサムシ類はその卵のデリケートさ故に、微生物が多い有機質の床材を避け、無機質な砂を好んでいるようにも見受けられる。



オサムシ幼虫は専食対象(カタツムリ、ミミズ等)の捕食に有利となるために、幼虫としては比較的大型のサイズで生まれてくるものも多い。必然的に1つの卵に送られる栄養分や腹部のスペース等のリソースも多く割かれる事になる。

カタツムリを食べなければ成長できないマイマイカブリは昆虫の中でもトップクラスに大型の卵を産む。初齢の時点で大型に産まれた幼虫はカタツムリを発見次第、捕食に移行するが、カタツムリ側が遥かに大型だった場合は防衛の為に吐き出された粘液に絡め取られて死んでしまう事もある。
また、離島に生息するミミズ食オサムシの一種ヒメオサムシは、その島に生息するミミズが本土と比べて大型であるために、それを捕食できない小型の幼虫が淘汰されてオサムシ幼虫も大型化したというデータがある。(北海道大学プレスリリース「オサムシの体サイズ進化はミミズ次第~捕食者の多様化をもたらす餌の多様性~」より)

これらの性質上、小卵多産型繁殖ではなく大卵少産型繁殖が生存に有利となったために、数少ない卵が他生物や細菌に脅かされにくい無機質の土壌を産卵場所として選択するようになったのかもしれない。

マイマイカブリの卵。
四角形の紙は1cmに切り出したもの。





飼育下において、ゴミムシも含め、産卵に適さない環境で成熟卵が作られ続けた場合は地表に産み捨てる場面が時折見られる。この行動は飼育密度や床材の種類や水分量、固さを見直す指標となる。
1つの産卵に時間がかかる上に、他個体との接触で産卵行動を中断してしまう傾向があるため、基本的に繁殖期は産卵をさせたい交尾済み♀個体の単頭飼育を行う方が多くの卵を得られやすい。

地表に産み捨てられた
アカガネオサムシの卵
アカガネオサムシの卵
アカガネオサムシ成虫と卵

上記画像の飼育環境は、産卵のために掘り返した箇所が分かりやすいようにと川砂の上に白い硅砂を薄く敷いたが、歩き回るオサムシに散らされて目論見は失敗に終わった。その目的ならば厚さ5㎜ほどは敷いてもいいかもしれない。
また、この飼育環境では床材を固く詰めすぎたために産み捨てが起こってしまった。



また、飼育下における産卵について、他記事では以下のように解説した。

当noteでは何度か記述しているが、オサムシ飼育において確実な繁殖を目的とした飼育を行う際は、基本的に雌雄を隔離した方が都合が良いと考えている。
それは多頭飼育による産卵行動の妨害や、脆弱な卵と成虫の接触及び捕食を防ぐ目的もあるが、隔離した期間が長い分だけ、再び雌雄を接触させた際に高確率で即座に交尾行動が発生するために受精の把握を行いやすいというメリットがある。
また、常に交尾が行える状況ではオスの消耗が激しくなるため、雌雄隔離飼育によって交尾を抑制しつつ栄養補給を行う事はオスの成虫寿命を伸ばす事にも繋がる。
交尾をさせる際は雌雄共に同じケースに入れるだけでも良いが、成功率を上げるためには記事内で言及したようにメスに餌の捕食を行わせつつ、オスが離れた場所からメスを自発的に発見できるようにする事を推奨する。
その際に与える餌は何でも良いが、メスが捕食に専念する可能性が高い各種専食対象の餌を与える事が好ましい。
オサムシ類の交尾行動誘発条件の観察例と考察




オサムシの産卵の多くは腹部先端を地表に押しつけて掘り進める事で行われる。
地中まで掘り進めると、腹部先端を自在に伸ばし押し付けて卵室を形成し、その中に1つの卵を産み落とす。
また、掘り進める際には♀が前脚を使って突っ張るための障害物があると掘削と卵室形成がスムーズに行われやすい。上記ツイートではプラケース壁面を前脚で押す事で腹部先端による掘削を行なっている。
自分を含む複数の飼育者が得た経験則では、飼育容器の中央にシェルターを置く事でケース壁面への産卵が多く観察され、卵の確認を行いやすい。
上記では人工芝マットを切り出した物を使用しているが、跗節が挟まる事故も確認されているので注意されたし。




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