見出し画像

生物多様性の極地


某日、希少種アオヘリアオゴミムシの生息地にてミイデラゴミムシとキイロサシガメを確認する。

ミイデラゴミムシ
キイロサシガメ
ミイデラゴミムシとキイロサシガメ

あまりにも酷似したカラーリングの両種は、どちらも湿地帯に住みケラを専食して成長する生態を持つ。
庭でも周辺から訪れた飛来個体や徘徊個体等が稀に見られるため、Twitterでは何度か紹介しているが、この両種の関係性の事を考えると良質な映画を観た後のような感動に打ち震えてしまう。
ゴミムシとカメムシを系統樹で見れば、ウサギとゴリラよりも遥かに大きく離れている。それなのに、ここまで似てしまう事が恐ろしい。
その上、同じ相手を必要とする関係性の尊さに耐えられない。
自分は今、生物の多様性とその極地の一つを目撃している。
そんな気分になる。


恐らくは、有毒な蜂や蝶などに見られるミューラー型擬態の一つなのだと思われるが、それにしても両種がここまで似てしまうものなのかと感心する。

※2023年に擬ベーツ型擬態であるとの研究報告がされたため、上記を訂正させていただく。

ミイデラゴミムシは100℃を超えるガスを噴射し、外敵から身を守る。
キイロサシガメは刺されれば激しい痛みを伴う口吻こうふんにより外敵から身を守る。
両種がそれぞれ防御機構を持ち、カエルなどの外敵を退け、敬遠されるようになる。同時に、同所で見られる似た姿の相手も敬遠されるようになる。
それが気が遠くなるほどの長い年月に渡って繰り返され続けた結果が、今現在の両種の体色なのだという説が一般的だ。

そこに「同じ虫を専食する」という情報まで追加されてしまう事が、両種の魅力に大きく拍車をかける。


ちなみに、採集個体の観察に穴を開けたコップを使用しているが、ピットフォールトラップの設置は行なっていない。
単純に採集時に持ち歩く散布桶(以下リンク参照)にポイポイと虫を入れる際に役立つ入れ物として、未使用のコップを入れているだけだ。
個人的に、許可を得た調査目的以外では、アオヘリアオゴミムシのような生物の生息地へのピットフォールトラップは絶対に行いたくないとさえ感じる。

惰性のまま何年も同じコップを使用してしまっているが、小さな昆虫等は穴から逃げ出してしまう事が多いため、あまり推奨はできない。
セルビン状に加工したペットボトルの丈を詰めて配置すれば、飛翔による逃亡対策も兼ねられるので便利だろう。
また、コップに比べて路上での安定性も高く倒れにくい。倒れた際も生体がすぐには逃げにくい構造となっているため、本来はこちらの方を推奨したい。
大量発生するコガネムシ等、スピード及び数の勝負となる場合はこちらをメインとして使っている。




関連記事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?