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自分のほんとうの気持ちに気づいた時、人は泣く

文章とは言葉とは、

大勢に届けようとすればするほど意味を失い、たった一人に届けようとすればするほど伝わり、広がるという、不思議な力を持っています。

ただ自分の娘に伝えたいことだったり、
ただ過去の自分に伝えたいことだったりすることが、
世界中に広がったりする。

野口英夫のお母さん、シカが息子に宛てに書いた手紙は、ひらがなで綴った間違いだらけの文章でした。

「まんが日本の偉人」でそれを読んだ小学生4年生の私は、家族を思ってただ「会いたい」と書いているだけの下手くそな(失礼)文字を読んで、ポロポロ泣いてしまいました。知らん親子の手紙を読んで、子どもが泣くってどういう現象?


文章を書くときは、たった一人に向けて、とよく言われます。

私の勝手な解釈を加えると、私の場合、

目に浮かぶ、あの人やこの人、伝えたいたった一人に向けて書くとき、周辺にあった邪心が消えるんです。

うまく伝えたいとか、格好いい文章を書こうとか、そういう虚栄が消える。

脳裏にあるのは、その人の読んでいる時の気持ちや読み終わった時の心情、そしてそこへの寄り添い。

どうしてそこまでできるのか。

たった一人って、つまり、目の前にいるその人は他人であるようでいて、過去や記憶を投影した自分自身、でしかないのでしょう。

たった一人の、自分の気持ち。
見えているのに、見ないふりをしてしまう存在。
そこにいるのは、一番、わかっているようでいて、一番スルーしている人です。

自分には、知識があるかもしれない。情報や価値ある何かを持っているかもしれない。でも、それが自分自身のことであるとは、限らない。

私の中にあるのは、ただただ、嘘いつわりのない、ほんとうの気持ちです。

ほんとうの気持ちには、善悪や正解不正解や、倫理や道徳なんか、通用しないし。ただ、そこにあって、存在している私である、それだけでいられる。

でも怖いよね、ほんとうの私を見つけるのは。自分の本心を知るのは。

だって、世の中の常識とか世間体とか、フル無視するやつだったりするからね。自分のダサさやひどさに、ひっくり返って逃げだしくなることもあるかも。

でも、みんなもうそれに気づいていたり、実は気づきたいと思っていたりする。それができた時、周りにいる人の許せなかった人の「ほんとう」にも気づいて、ふと、許せるようになる。

だから、自分のほんとうの気持ちを知った時、人は泣くんだと思います。正確にいうと、やっとそれを思い出せた喜びと安心で、人は泣く。

小学生の私が、シカさんとガシッと同期してしまったのは、本当は「家族に、もっと会いたい」と思っていた自分のほんとうの気持ちに気づいたからに他ならぬ。

これが、美しく整った文字と正確な文章だったら。たった一人の息子に向けた、私欲だだ漏れの文章じゃなかったら。今も覚えているはずがない。

そして、そんなきっかけを作ることができのは、今日もなぜか書いている、私やあなたやあの人やこの人、だったりするんだろうな、なんてことを思うのです。




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