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ぼくの奥さん #4 「第一印象はすこぶる悪いほうがいい」

※暇だから「こんな感じかな」と、パートナー目線で書いてみた。

あぁこの子とは仲良くなれないな、と初めて会った時に思った。あとから聞くと、彼女もそう思っていたらしい。

厳密に言うと、ぼくよりひどい。「あー、こういう人、いるよねー」と思って、「こうゆー人、私仲良くなれないわぁ〜」って頭悪そうな感じで思ったらしい。

ぼくたちは、同じ教室にいたらあまり話さなかったタイプなのだと思う。ぼくは君のことをうるさい、と思い、君はぼくのことをつまんない、と言っただろう。

「つまんない」、とは、のちにぼくが実際に言われてしまうことでもあるのだけれど。

最初に交わした言葉は覚えていない。きっとあれは、大学一年生のはじめのノリの、金沢八景のカラオケボックスの中。たくさんの人がいる中で、歌う君を覚えていない。なおさら君は、ぼくがいたことすら覚えているか、怪しいだろう。

恋する君も見てきた。
それで泣く姿も、ひとりでカナダにホームステイに行く君も、勝手に夏休みを早めて実家に帰って、同じ授業をとっていたぼくに課題を代わりに出させた君も、(いきなりメールアドレスを教えろ、と言ってきた。課題のファイルを送るから、と)

※あれはごめんなさい

踊る君も、怒る君も、一通りの青春を共に過ごした。

あれから10年、人生はまさかの連続と聞いてたけれど、かしましき知美が佐野卓也の嫁だなんて、あの頃の誰が想像しただろう。

実際付き合うときは一悶着起こして、大学の同期後輩先輩に結構迷惑をかけたことをこの場で謎にお詫びする。

知美は大学の大半を恋に費やす女だから、「その道を行くのをやめるの」と言ったときに、「あぁおもしろい娘になるな」となぜか思った。

なぜかぼくたちは恋をして

※不覚

24歳という若かりし時に結婚を決めてしまって

いま29歳。あの頃、今の生活が予想できないことだったように、今から10年後の生活を思い描くと、もう何もわからないような気持ちになる。
君はどこにいるんだろう? ぼくはどこにいるんだろう? ぼくたちは、どこで何をして暮らすことを選んでいるんだろう。

「東京とニューヨークで別々に暮らしていてもいい」、みたいなことを君は言うけど、ぼくはできれば一緒に暮らしていたいと思う。シチリア島に家が欲しいというけれど、そのお金は一体誰が出すんだい?

農作業がしたいとか、刺繍がしたいとか、アクセサリーが作りたいとか、お店を開いてみたいとか。いろいろ言うけど、どれが本当に君がしたいことなの?

どうせやりたいことなんてそのときにならないとわからないんだろうけど、

でもぼくたちも次はもう30歳だ。君は「まだ30歳だ!」と声を大にしていうだろうけど、でもできれば、真面目な保険の話やらなんやらを含めて、もう少し先のことを一緒に話そう。

「一緒に行こうよ」と旅に誘ってくれるけど、もし本当にぼくが行くと言ったら、知美はきっと困るんだろうね。「え、まじですかアナタ」みたいな顔をして、じっとぼくを見るのだろう(笑)。

チームに母艦は必要だ。2016年は、今度はぼくが佐野家の母艦役になってあげたりしようじゃないか。


第一印象が悪いって、ぼくは結構悪いことじゃないと思うんだ。悪ければ悪いほど、本当にあとは上がるだけだし、なにより本能が「?」と言ったことを、くつがえしていく刺激はたまらない。

と思わないと、あんまり納得いかないよね。高校生の頃の知美に、一度でいいから会いたかったよ。

※いや……多分本当に仲良くできなかったのでは? と思います(笑)


■ぼくの奥さん#1 「基本的に家にいない」|佐野知美|note(ノート)[

■ぼくの奥さん ](https://note.mu/tomomisa/n/nb86f5dd62ce3)#2 「あの夜ぼくは、なぜか寒空の下家の外に閉めだされた」|佐野知美|note(ノート)

■ぼくの奥さん #3 「世界を二周するつもりで行ってきなよ」 |佐野知美|note(ノート)

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