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海と月と風とパスタと。【クロアチア・ドゥブロヴニク】

Wi-Fiがつながったら、パソコンを開いていくらかの通信をする。

LINE、Viber、WhatsApp、Facebook、チャットワーク、チャットキャスト、slack、Evernote。あたりが私が最近使っているツールだろうか。

目の前を見ると、アドリア海。最初は3階の部屋をとっていたんだけれど、あまりにも原稿を書くのに居心地がよくて、3泊のところを延泊して、もう3泊。合計6回の夜をここで過ごすことにした。

1階にはここを自宅にするクロアチア人のご家族が住んでいる。私の身の回りのあれこれを助けてくれるママと、旦那さん。かわいい女の子が2人。おばあちゃんと、あとは猫が数匹。仲が良さそうに、毎日を過ごしている。

クロアチア語でおはようって、「ドブロ ユトロ」と言うんだって。「ドブロ ユトロ」とは言ってみるけど、クロアチア語の発音は難しくて、教えてもらい直さないと、伝わらない。

ありがとうは、「フヴァラ」と言うみたい。さっき、3階の部屋から2階の部屋に移る時に(延泊したとき、同じ部屋は埋まっていると言われて)「フヴァラ」と言ってみたけれど、正確には「フワラ」に近い発音のようで、一回では聞き取れなかったわ、とママが笑う。

そう、英語も、ゆっくり、きちんと、正確な発音を心がけないとこの「ソベ」のママには伝わらない(そして私は正確な発音ができない。そういう時はお互いゆっくりと、目を見て笑いながら会話する)。意外にかなり意思疎通はできるものだ。日本人はこの宿にはあまり来ないと言っていた。

「ソベ」とは、クロアチアでは一般的な「民泊」の意。Airbnbの宿を探しても、あまり良い宿が見つからないな、ハイシーズンに入りかけだからかな、って思っていたんだけれど、街へ来て納得した。「ソベ」が、多いのだ。

ドゥブロヴニク旧市街の街を歩くと、至る所で「ソベ」の看板を見かける。「ソベ」を実施している家は、青い看板を玄関口に掲げるのがしきたりのよう。

事前情報では、旧市街を歩いていると、さながらアジアのように「うちの"ソベ"に来ない?」と声をかけるおばさまがいるのよ、と聞いていたけれど、私がぐるりと1日かけて旧市街を歩いた限りでは、一度も話しかけられなかった。

会話をしたのは、青空市場のオーガニックソープとオイルを作っている、地元の女性。あとは、編集部のひとりと電話で話をしようと、Wi-Fiを求めて入ったカフェの店員さん。あとは城壁を歩くための入り口でチケットもぎりをしている男性や、アイス屋さんの店員、街でぼーっとしているときに稀に声をかけてくる、地元のひとや観光客。

あとは、ひとりでいるとよく私は「写真を撮って」と頼まれるから、そこから会話が始まることが多い。

でも、それくらいだ。

基本は、ひとり。時たま猫。

今みたいに、「ソベ」の部屋にこもりきりで、原稿を書こうと思ったりすると、ここは旧市街から15分ほど車で離れた土地だから、本気を出せば1日誰とも話をせずに、過ごせてしまう。

***

今いる部屋にはテラスが2つあって、完全にアドリア海に面している方と、山が見える方。どちらにもテーブルとイスが置いてあって、風の強さや、方向、見たい景色や空の色によって、座る場所を選べるようになっている。

部屋の中には、キングサイズの清潔なベッドと、L字型のソファにテレビ、簡易キッチン、とはもはや言えない、オーブン付きのシステムキッチンに、電子レンジ、湯沸かしポット、ホットサンドメーカー、もちろん食器に簡単な塩やコショウなどの調味料が、とてもきれいに並んでいる。

3階の部屋よりも、2階の部屋のほうがキッチンが豪華だね、とママに伝えたら、「2階はよりアパートメントスタイルだから、長期滞在ならこっちがオススメよ」と、ガス入りのミネラルウォーターを開けながら教えてくれた。

(窓は基本的に風が気持ちいいから開けっ放しだ。)

昨日の夜は、22時には眠ってしまった。電気を消して、ベッドに入って。原稿に書き疲れて仮眠しようと思ったけれど、朝早く起きてやろうと眠りについた。

目が覚めたのは、3時だった。夜中の3時。

着いた日には真っ暗で怖かった窓の外が、きれいな月明かりに照らされていた。カーテンの隙間から漏れる、街灯よりも明るそうな、夜空。

眠かったけれど、見てみたくて、そっとカーテンを開けてみる。

初めて見た。あんなに明るい夜の空は。きれいなきれいな、満月に近いマルが空に浮かんでた。

***

しばらくすると、夜が明けた。

原稿に向かいながら、また一日が始まっていくのを、見てた。

窓の外では、ブーゲンビリアの花が海の風に揺られている。なんだこの生活、私ひとりで何やってんだろうって、ひとりアドリア海の透き通った海に囲まれながら、旧市街の美しさを思う。

そういえば完全に余談だけれど、この周辺には何もないから、必然的に自分でご飯を作らざるを得ない。

(最寄りのスーパーは2キロ、レストランは坂を少し上がったところにピッツェリアが1軒、そのほかはバスかタクシーを使わないとアクセス出来ない! という立地! 車で5分行けば、H&Mが入っているような近代的なショッピングモールがあるんだけど……《H&Mがあることにも驚いた》。その分静かで、海が間近。Wi-Fiさくさくでコンセントもたくさんあるから、ノマド的なひとにはオススメできそう。)

この「ソベ」が1泊4500円しないだなんて、なかなか現実的だと思わない?

クロアチアに来さえすれば、1ヶ月の家賃12万円くらいでこの暮らしができるリアルが、世界にはあるよ。

右から、ロンドンの免税店で買った「キールズ」のフェイスクリーム、フェイストニック、同じく免税店で買った「ロクシタン」のメイク落とし、VOCE編集部の先輩からもらった「レ・メルヴェイユーズ ラデュレ」のボディオイル、「ロレアル」のヘアオイル、ミャンマーで買った謎の100円くらいのバラのローズウォーター。

あとは「メルヴィータ」のアルガンオイルを愛用中。旅を続けて、消耗品は買い足しているからブランドが雑多になってきた。

ロンドンでネイルがしたくなって買った、「KIKO」のマニキュア。なんでイギリスでイタリアメーカーを買ったのかは未だに分からない……。

こんな感じで、日本の暮らしを結構スライドさせて私は今日もドゥブロヴニクで生きています。


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