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#旅と写真と文章と

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オンラインコミュニティ「#旅と写真と文章と」共同運営マガジンです。「世界は広くて、とってもキレイ」。
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#ともみの部屋

師走とは、また新しい年を美しく迎えるための、まるで優しい準備のようだ

師走とは、また新しい年を美しく迎えるための、まるで優しい準備のようだ

ある朝目が覚めて、ふと耳を澄ませると、何処か遠くから太鼓の音が聞こえてきたのだ。ずっと遠くの場所から、ずっと遠くの時間から、その太鼓の音は響いてきた。――その音にさそわれて僕はギリシャ・イタリアへ長い旅に出る。(村上春樹『遠い太鼓』より)

遠くで、時間の流れ出す音がした。さらり、砂がこぼれ落ちて、もう止まらなくなってしまうような。一度はきちんと涙で固めたのに、時間が経つというのは恐ろしいことね。

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カラダは、旅先に心を置いて帰ってしまう。#モロッコ10days の夢の跡【カタール・ドーハ→日本・成田】

カラダは、旅先に心を置いて帰ってしまう。#モロッコ10days の夢の跡【カタール・ドーハ→日本・成田】

朝起きたら、一瞬ここがどこか、分からなかった。否、まだ私は、モロッコにいるのかと思った。

こういうことは、家をなくしていた時期によくあった。

旅を、続けて、つづけて。3晩と同じ屋根の下で眠ることがなかった季節。長くても、同じ宿には7晩。それ以後はずっと動いて、街を変えて、国を変えて、言語も文化も変えて。そんな時期を、約2年過ごしたことがある。2016年4月から2018年2月まで。

ごく最近の

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足裏が地面に数センチ近づいたら、旅が始まる合図【日本・東京→モロッコ🇲🇦】

足裏が地面に数センチ近づいたら、旅が始まる合図【日本・東京→モロッコ🇲🇦】

地面に数センチ近づくと、「旅が始まるのだな」と感じ始める。東京にいると、どうしてもヒールの靴を履いてしまう。それはきっと、まだ背伸びをしたいから。見栄を張って、強がって、それでも私はこの街で生きていくのだと、大勢の中に、混ざってどこか安心をしたいから。

「ヒールの高さだけ、違う世界が見える」みたいなことを、昔誰かから聞いた。数センチ高い距離から見るネオン、階段との距離感、あなたとの顔が近づく、そ

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雨上がりの静けさ、響く夜、連休のおしまい【日本・東京】

雨上がりの静けさ、響く夜、連休のおしまい【日本・東京】

久しぶりに、しんと静まりかえった夜。どこか安心する、小さな耳鳴り。「うるさいくらいの静寂」は、「頭痛が痛い」とは少し違って、日本語として成り立っているように私は想う。静けさや寂しさは、時折音を鳴らしながら私の横を通っていく。

走って走って、どこへ行くのか。何度目かの夏はまた指をすり抜けて、花火をもう一度楽しみたかったのに、秋の風を連れてくる。「順番」は、時に意地悪で、けれどずっと守られるものであ

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1枚の写真と見知らぬ男の子との出会いが、私を救うこともある【アメリカ・ロサンゼルス】

1枚の写真と見知らぬ男の子との出会いが、私を救うこともある【アメリカ・ロサンゼルス】

街を歩いていると少し不安で、ふわふわした心はまだ落ち着かない。沈殿を待つといっても私はこれから動き続けるから、きっと日本に帰るまで沈殿は始まらない。としたらこの浮き立つ心と多少の不安を、私は抱えながら落ち着くのを待つしかない。

旅をはじめたばかりの時は、やっぱり「心はいつも、カラダに遅れて旅先にやってくる」と感じる。6月1日の夜に成田空港を出たら、ロサンゼルスには6月1日の昼間に着いた。

あと

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「旅先で受けた恩は、次の人へ渡しなさい」【アメリカ・ロサンゼルス】

「旅先で受けた恩は、次の人へ渡しなさい」【アメリカ・ロサンゼルス】

初めて世界一周の旅に出た2016年4月のあの日、私は世界がすべて敵になってしまうんじゃないかと怯えて、性善説を覆して生きていかねばならぬのだろうか?と震えていた気がする。

けれどマレーシアのクアラルンプールで、偶然出会った陽子さんに助けられ、家に泊めてもらって、最後に「Bon Voyage」とインドネシアへ送り出してもらったとき。

プラナカン料理を一緒に食べたり、隣で暮らすインドのママが作って

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眼が世界を追わない分、言葉が世界を追いたがる【アメリカ・ロサンゼルス】

眼が世界を追わない分、言葉が世界を追いたがる【アメリカ・ロサンゼルス】

暮らす場所を探しているのかもしれない。もしかしたら、世界を巡りながら。と私は想う。日本が深夜、ロスの日曜日の昼のこと。

朝からまだ今日はなにも食べていなくて、ずうっとお腹は空いていたし部屋に食べるものもあったのだけれど、やっぱり食べる気があんまりしなくて、寝転んだり、じいっと空を見たり、メッセージを返したりしていた。

けど今日はダウンタウンからサンタモニカへ宿を移す日だし、天気は相変わらず雲ひ

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世界二周目の、小さな旅に行ってきます #旅と写真と文章と

世界二周目の、小さな旅に行ってきます #旅と写真と文章と

空を見上げたら、夏みたいな青空が広がっていた。今は、少し夕陽が傾き始めて、けれどまだ少し日差しの強さを感じるような。春から季節が変わる、そんな6月1日。東京の、三軒茶屋から成田空港。

もう一度、いつかもう一度、長い旅に出るのだ。近い未来に。と思いながら寝たり起きたり、毎日していた。

「書き物をする人は、冬は籠もったほうがいい」。なんでかすごく感銘を受けて、秋から冬、冬から春、そして春から梅雨に

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【完結しました】伊佐知美の「旅×仕事」のフォトエッセイ『#旅と生きる美しさを 』

【完結しました】伊佐知美の「旅×仕事」のフォトエッセイ『#旅と生きる美しさを 』

このnoteは、2018年5月に「先に目次だけを公開して」有料noteの販売を開始しました。その後、目次に沿って内容を執筆し、有料noteの有料範囲にて都度更新。2019年4月、完結しました。現在「はじまり」部分のみ無料で公開しています。全部で80,000字、写真200枚超のフォトエッセイです。

** 以下本編 **

■はじまり「旅をしながら世界中で仕事をする」

神奈川県川崎市の、いわゆる普

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「好き」から始まる、新しい毎日とその行方|#えいとびたー をシノスタイルさんとDIY🏡

「好き」から始まる、新しい毎日とその行方|#えいとびたー をシノスタイルさんとDIY🏡

ちょっとまだ何て表現していいか分からないのだけれど、年始から本格始動したオンラインコミュニティ「#旅と写真と文章と」と、2月に始めた旅人シェアハウス「#えいとびたー」が、すごいことになってるな、って何だか他人事みたいに幸せに思っています。
#旅と写真と文章と のクルー(参加者)人数は、5ヶ月間で述べ220名。
#えいとびたー は自称・新型フリーランスの男女5名で始めました。

そして、今日は

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その背中を追いかけられる日は、いつまで続いてくれるだろうか、と。

その背中を追いかけられる日は、いつまで続いてくれるだろうか、と。

「哀しいほどキレイな日ですね」と私は言った。「こうゆうのが『持ってる』って言うんですよね」と彼は答える。

新緑の道をぬけて少し歩いて、座って待って、私たちは献花をした。その間はきっと60分くらいあったけど、そのほかに私たちは多分全然話さなかった。

■高畑勲さん「お別れ会」 宮崎駿監督は声を詰まらせながら、亡き盟友を偲んだ(追悼文全文)

思ったことはいろいろある。けれど強く強く、あれから何度

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屋根の下雨音響けば、私たちはどう生きるかにぶつかって。

屋根の下雨音響けば、私たちはどう生きるかにぶつかって。

水が、どうやって成り立っているかということよりも、私は「その水をどう飲むか」ということに。興味を持ってしまっていると自覚する。

昨夜から、いえもしかしたらそれよりも少し前からずっと、だったかもしれない。屋根に響く雨音の気配、一筋のしずく、私を濡らす、きっとそれは国や街が変わっても。rain on the roofという名前の店の中、「君たちはどう生きるか」に向き合いながら、本筋とはすこし違うこと

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早く行きたいならひとりで行け。遠くへ行きたいならみんなで行け

早く行きたいならひとりで行け。遠くへ行きたいならみんなで行け

「早く行きたいならひとりで行け。遠くへ行きたいならみんなで行け」

20代半ばの頃から、私の身体の中心を貫いてきただろう言葉といえば、多分きっと、これだと思う。

小学生の頃から国内外の転校を繰り返してきた私にとって、関係性はいつも「ひとり」で、「出会ってもいつか別れるであろう」ものだった。けれどそれは、mixiの誕生を経て、「時を超えてつながり、再会する」体験を経て、「シームレスな世界の到来」を

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期待することを、私はまだやめたくない。春、桜、舞う季節のはじまりに

期待することを、私はまだやめたくない。春、桜、舞う季節のはじまりに

赤坂見附の歩道橋を渡っている時、ふとそこにピンク色の存在が「咲いているよ」と主張するのを見た。青い空に、少しだけ白い雲。そしてそこに、ピンクの彩りを加える花が、今年も咲く季節がやってきた。開花予報の日を間近に迎え、今みんな、気付き始めている。

目黒川沿いを歩いている時、冬はまだ茶色だけの存在だった彼らが、「もうすぐで咲くからね」と、やはり大きく膨らむのを見ていた。その日はやっぱり寒い冬の日だった

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