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ともみの部屋

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伊佐知美の、世界一周の旅とエッセイ。2016年4月〜
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#ロンドン

吸い込まれそうな夜の黒に、目が慣れなくて【クロアチア・ドゥブロヴニク】

吸い込まれそうな、夜の黒だった。空と海の境が見えなくて、雲なのか、波なのか、風なのか、もう私には分からない。 遠くから、強い風が吹いている。対岸は見えない。ずっとずっと、海が黒く続くだけ。左側に、ぽつりぽつりと家の灯り。右側に、交通量の少ない道路。まっすぐ前に、やっぱりずっと、続く海。遠くに浮かぶ、おそらくとてつもなく大きいと思われる、豪華客船の灯り。 ここは、ロンドンでもなく、インドでもなく、今度は地中海、アドリア海に面する街・クロアチアのドゥブロヴニクだった。 この

クロアチアへ行きます。地中海を見ながら原稿を書くために。

空を見上げると雲は遠くて、太陽はどれだけ遠回りをして1日を巡るんだろう、と思うほどにまだ日が暮れる気配はしなかった。 午後5時半。仕事を終えたロンドンっ子たちが、地下鉄に駆け込んでどこかへ急ぎ始めた。恋人のいるところへ行くのだろうか。飲み屋だろうか。それともまっすぐ、家路につくのか。 通り過ぎるすべてのひとと言葉も交わさず、目も合わさず、たまににこりと微笑み返すだけで、私の人生はロンドンで無色になりそうになる。 空はまだ高くて、夜景が見たくてもなかなか見られないほどに、

過去に囚われるのはやめて、恋をするように生きたいと思った。

ロンドンの街は美しくて、空が青いだけで、歩いているだけで気持ちがよかった。 透き通る空、通る抜ける風、流れる雲。今滞在している場所はなぜか子どもが多く暮らす街のようで、乳児から幼稚園児、小学生から大学生くらいの大人に至るまで、ありとあらゆる「こども」たちが、家の周辺でいつでも遊び声を聞かせてくれた。 そんな場所を歩いていると、ふと気が付くことがあった。本当に、ふと。 「そういえば私、過去にこだわるのをやめたな」って。 いつからだろう? 気が付かなかった。 正確に言え

人生に必要な"リビングとキッチン"【イギリス・ロンドン】

朝起きたら家に誰もいなくて、あれ、ホテルなら独りで平気なのに、誰かの家に泊まるとなると、とたんに独りが寂しくなるんだな、と思う。 リヴァプール・ストリート駅から数駅進んだ、ちょっと郊外の、3階建てのテラスハウス。ここが、私のロンドンの2つ目のおうちだった。 セシリアは、昨日私が14時に着いて家のベルを鳴らしたとき、ドアを勢いよく開けて、「ようこそ!さぁ入って入って!」と笑ってくれた。 「夫のマヌエルはいま義母が体調を崩しているから故郷のポルトガルに帰っているけれど、今日

一人では食べきれないよ、そのケバブ【イギリス・ロンドン】

昨日は朝起きたら少し雨が降っていたのに、午後は曇って夜晴れた。 かわりに今日は、朝起きたら晴れていたのに、家を出る頃には雨がしとしと降っていた。 Acton Townの通りの様子 この旅で傘をさすのは、まだ2度目だ、と思う。 そう、これまであまり雨が降らなかった。もしくは、降っていたら止むのを待つか、ホテルにいたら仕事をする時間、に充てていた。 だから傘はささなかった。バリで一度、スコールのような雨を見てびびってピンクの折り畳み傘を持って出たけど、南国の雨は気が済む

愛すべきロンドンの街並み【イギリス】

目が覚めたら、まだ時計は早朝4時過ぎを指していて、けれど空はすでに明るかった。 いま東京はお昼の12時。昨日まで居たインドは朝の8時半。体内時計は物理的な距離を移動したからってすぐにはきっと変わらないから、インドが8時半なら、いま私の体は8時半だと思っているのだろうな。 それは、目が覚めても仕方ない(と思っていいだろうか)。 (ステイ先の窓からの風景。レンガ作りのかわいい家が並ぶ) 体がだるくて、重かった。すごく眠いのに、あんまり眠れる気がしない(私は人生で眠れな

伝えたい生き方があるから、今更だけど私、発信力がほしい。

今更だけど私、ソーシャルの発信力がほしい。そこに、伝えたい生き方があるから。 やりたいことは明確だった。書くこと、撮ること、旅をすること。好きなことは分かっていたけど、それをすることで何がしたいの? と聞かれると、言葉に詰まって、ずっとずっとわからなかった。 でも今なら少し分かる。私、伝えたい生き方がある。 世界はこんなにも自由だ。描いたことは、実現する可能性が多分にある。 書くことを翼にして、遠く、遠く、どこまで行けるか、世界にひとり。試してみたい。 もともと

人生初のロストバゲージ【ロンドン・ヒースロー空港】

ロンドンに着いたとき、あぁもう体全体で緊張しなくていいんだ、って少し安心した。 マレーシア、インドネシア、タイ、ラオス、ミャンマー、インド。 訪れたことのある国が混ざっていたり、時に日本人在住者の方に助けていただいたりしていたとはいえ、やっぱり自分の身は自分で守らねば、というか、 水ひとつ、道ひとつ、夜しかり。常に「ここは大丈夫かな」って緊張の糸を張り続ける日々は、どこかやっぱり疲れる。 イギリスに着いたとき、あぁもう神経を張り詰めていなくてもいいのだ、と思った。もち