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ともみの部屋

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伊佐知美の、世界一周の旅とエッセイ。2016年4月〜
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#アジア

人生初のロストバゲージ【ロンドン・ヒースロー空港】

ロンドンに着いたとき、あぁもう体全体で緊張しなくていいんだ、って少し安心した。 マレーシア、インドネシア、タイ、ラオス、ミャンマー、インド。 訪れたことのある国が混ざっていたり、時に日本人在住者の方に助けていただいたりしていたとはいえ、やっぱり自分の身は自分で守らねば、というか、 水ひとつ、道ひとつ、夜しかり。常に「ここは大丈夫かな」って緊張の糸を張り続ける日々は、どこかやっぱり疲れる。 イギリスに着いたとき、あぁもう神経を張り詰めていなくてもいいのだ、と思った。もち

東南アジア最後の日の夜、私が綴ること【インド・アグラ→デリー】

朝焼けってこんなにきれいだったんだ、とアグラの5:50頃の朝の空を見て思う。雲のない、少し霞んだ空の中。まんまるい、本当に丸い太陽が、ゆらゆらと揺れながら少しずつ昇ってきていた。 空は薄い青。薄いオレンジ、薄いピンク。遠くの空にはいくつかのちぎれ雲があって、刻一刻と変わる太陽の気分を、律儀に反映して美しいグラデーションを見せていた。 太陽に目を戻すと、じりじりとまた位置を変えている最中だった。もう少しこの空を見て、雲と同じように色を変えていくタージマハルを見ていたい衝動に

毎日変わる景色にワクワクしかしないから。

日々変わる景色に違和感を感じることはないの、知美は。と聞かれた。 変なことを聞くんだな、って思った。 だって毎日窓の外の景色が変わっていくことは、私にとってはワクワクしかない。 あぁ、飲み会に7000円使ったな。昨日はこれに、2万円。2万7千円あったなら、あの国に行けたのに(LCCのチケットで)。とずっと思って生きてきた。 私にとって、日本で過ごす毎日は楽しい。すきなひとがいて、美味しいごはんがあって、キレイなトイレがあって(チェコさんの言うように)、洗練された通信環

おんなひとり、ふらり、旅。のススメ

私はこれまで、そんなにたくさんの旅をしてきたわけではないけれど、それでも数えきれそうな旅の中で、ルアンパバーンとバガンはとても好きな街になったな、と思う。 ひとが少ないのが、よかったのだろうか。川と私、遺跡と私。そんなシチュエーションが、ただ今は気持ちがよかっただけなのかな。 一人旅はさみしくないの、と聞かれるけれど、そうね、もちろん孤独はあるよ。けれどみんな、「なぜあなたは一人なの」と話しかけてくれるから、意外に口を開くことは、多くてね。 仕事柄、めちゃくちゃ社交性が

ミャンマーでうっかり生卵を食べたんだけれども

今日の風は、海からの風みたいだな。って、3階建ての建物の屋上で朝ごはんを食べながらふと思った。 ミャンマーは海に面している国だけれど、バガンは内陸部で海はない。けれどすぐ近くにほかの都市へ向かう船着場があったりするから、エーヤワディー川の影響かな。さっき部屋を出た時は少し湿度が高いなと感じたけれど、風が吹いたらこんなに気持ちが良いんだって、思う。 朝は6時に目が覚めて、カーテンを開けて、青い空が見えてご機嫌だった。1日ぶりの青空。今日はバイクを借りて、バガンの街を一周した

もういっそこのまま行けるところまで

もういっそ一生旅をしていてもいいんじゃないか、と思う瞬間がある。 見たいものを見に行く。会いたいひとに会いに行く。好きなひとに、好きだと伝える。 あぁここにきてよかったと心から思う。鳥肌が立つ瞬間がある。私はなんてわがままで、ひとり勝手なことをしているんだろうと本当に毎日思っている。 毎朝オープン・エアのルーフトップで朝食をとって、移動した先の国のことばで「おはよう」と「ありがとう」だけ言って、カメラを片手に、ひとりでバイクを運転して森の中の遺跡を走る。 産まれて初め

思い描いているだけじゃ「いつか」なんて一生来ない

大抵の街がそうであるように、ヤンゴンの街もまた、雨が降るとその表情を変えた。 明るく晴れ渡った空は暗く濁っていたし、雨がまた降るんだか降らないんだか、雲は煮え切らない彼氏彼女みたいにどっちつかずだったし、人々はどこか怒っているかのように見えた。 でもそれは、雨が降った街を少し怖いなと思って見つめている、私のせいだったんだと思う。何が怖いって、道がぬかるんでいて、屋根からポタポタと雫がどこからともなく垂れてきて、そうだな、何が怖かったんだろう。でも、怖かった。 雨が止んだ

夕暮れのパゴダの美しさを、私はどうやって伝えたらいい?【ミャンマー・ヤンゴン】

男のひとも女のひとも、ロンジーを着ている。あまりにもかわいくて、カラフルで、上下の組み合わせのルールがなさそうに見えるものだから、ミャンマーに着いた初日に街で一番大きなマーケットで、私の好きな柄のそれを、700円で買ってきた。 (途中ふっかけられそうになって、普通に4000円とかで買わされそうになった。でも、本当に布によっては1万円とか、それ以上するものがあるらしい) これまでの東南アジアの旅行でたくさん見てきたお寺の中で、ヤンゴンのそれが一番好きだなと思う。とにかく規模