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ともみの部屋

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伊佐知美の、世界一周の旅とエッセイ。2016年4月〜
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2016年8月の記事一覧

もっちゃんとさっちゃんと「友だち」

世の中に一人だけ、私のことを「もっちゃん」と呼ぶ友だちがいる、と昔どこかのnoteで書いた。ともみだから、もっちゃん。安易なのか、ひねっているのか、最早分からない。 正確にいうと、私が、いや私たちがまだ新潟県長岡市で高校生をしている時に、彼女が私の幼なじみのママが経営するエステサロンにフェイスパックだか何かをしに行った時に、ママが私の高校の同級生だということに気がついて、「もっちゃんと呼んでいること」を彼女にバラした、という経緯がある。 そのママの家には"ともや"、という

「自分以外を世界の中心に置かない」という光と呪

一喜一憂。気持ちが浮き上がったり、沈んだり。もうそういったことに飽きてしまって、自分の世界の中心は自分であろう、と決めた瞬間があった。たしかあれは、18歳の夏。 単純に言えば男女、の話だ。 「飽きて」、と言えば優位に立てるけれど、「疲れて」とか「悲しくなって」とか、「絶望して」という言葉に置き換えてみれば、あの時私がとても深く傷付いて、また1つ大きな膜を張った殻に閉じこもってしまったのは、今振り返っても容易く分かる。 そう、もう、私、傷付きたくなかった。期待をして、裏切

逃げるのは簡単だけど、そろそろ

そのとき私はとても心が疲れていて、どうしよう、と思った末に、周りの人に「海外でも行ってくれば」と言ってもらって、「うんそうね」と思って航空券を予約した。 あまり多くの人に告げずに。最小限の人たちだけに、私は日本を少しだけ離れます、と伝えて。何をどう考えたのかはよく分からないのだけれど、一人旅だと言っているのに、ハワイのオアフ、ホノルルへ行くことを決めた、いつだったかの冬。 青い、海が見たくて。 白い、雲が見たくて。 風の気持ちよさや、木陰が時間の経過と一緒に移動する感じ。

今までに読まれた記事を10個並べてみた。「好きに生きて」

自分のことばで何かを紡ぎなさい、と常に私に向かって言ってくれた人がいて、けれど私はずっとずっと、できなかった。やっと今年に入ってそれが少しずつできるようになってきて、気付けばnoteが100記事を超えてくれていた。いや違うなぁ。100をまずは目指しましょうか、と途中からちょっと思ってた。 すごいな。世の中の毎日書き続けている人って、すごいんだな。なぜなら何かを書くことって、「毎日をきちんと生きていること」に等しいから。少なくとも私にとってはそうだった。毎日を、きちんと五感と

会いたい人がいるなら新幹線に飛び乗って

どうしても。どうしても花火が見たくなって、夕方の17時、急いで東京駅から新幹線に乗って、新潟の長岡駅を目指す。今頃きっと、花火が上がり始めた。19時過ぎの打ち上げ開始には間に合わなかったけれど、新幹線の窓から見る長岡花火も悪くなかった。30歳になって、初めて見る車窓からのひかり。 東京で暮らして11年。毎年日本のどこかしらで花火大会には出くわすけれど、何を見ても長岡花火の記憶には勝てない。それ以上に心震える景色にも音にも出会えない。チェコのプラハで偶然見上げた花火も音も、空

「本気出したら歩いて帰れる」距離感が重要。

旅において、そういえばひとつ大切だと思っているモノサシがある。 「本気出したら歩いて帰れるかどうか?」これが、私の旅のひとつの基準だ。遠いか、遠くないか、近いか、近くないか。 非常に個人的な話だが、私の家は神奈川県にある。ということは、大阪はまず近い。京都もOK。広島もOK。四国はちょっと危ういけれど、明石海峡大橋やしまなみ海道を通れば本州に通じるから、これもセーフ。同じ理由で、九州も大丈夫だ。 東北が話題に出ないのは、実家が新潟県だから(そもそも私にとって「近い」場所

通り抜ける風と夏色のオレンジ【オーストリア・ウィーン】

通りに面した風の通り抜けるテラス席で、髪を結い上げた肌の白い女性と、オレンジ色のポロシャツに、陽にあたって青く光るサングラスをかけた男性、その向かいに座る紺色のTシャツを着た男性が、3人で楽しそうに話している。女性の顔と、肩と腕が少しほかの肌の色よりも赤い。きっと、今日の気持ちの良い晴れの日を、日光の下で楽しんでいたのだろう。 男性の手にはビール、女性の手には私の知らない名前の、やっぱりオレンジ色のカクテルが握られていた。 通りを行くひとはまばらだけれども、人通りは絶えな

締切の合間に、泳げ、夏。

足を。足先から、ぽちゃん、ぽちゃんと音をさせて、静かに右、左、と水の中に沈めていく。次いで膝、腿、腰。一度カラダすべて水に浸して、最後に目をつぶって頭の先まで前身濡らす。 そう、この感覚が欲しかった、とカラダがふうっと緩んでいく。なぜ、いつからこんなにも泳ぐことが愛しくなったんだろうと考える。 フィンランドにいた頃から、なぜか泳ぎたいと感じてたまらなかった。泳ぎに行こう、と思って、映画「かもめ食堂」のロケ地である市民プールに向かおうとしたけれど、悲しいかな、夏季休業という