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組織デザイン論

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多角化経営における、事業促進のための組織デザイン論
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「マニュアル作成して脱属人化」では不十分?組織デザインにおける「標準化」の考え方

業務の属人性を排するため、型化やマニュアル整備、社内Wikiの作成といった「標準化」を進めることが大事——そう考えている方は少なくないと思います。 僕もそれ自体には同意しますし、「標準化」は組織デザインを進める上で欠かせない要素でもあります。なぜならば、組織デザインとは「『分業』と『調整』を設計し、その両者を組み合わせながら組織をつくっていくこと」であり、標準化は「調整」、すなわち「役割分担した人どうしでの連絡や連動の手段、またやり取りのルールを定めること」の基本だからです

幹部クラスの採用しても問題が解決しないのは、「能力定義」が失敗しているから?〜事業構造と役割構造を整合させるには

「他社での幹部クラスの経験が豊富で、人材市場での評価も高い人を採用したのに、パフォーマンスが上がらない」 「セールスを何人も採用したはずなのに、なぜか営業部門がリソース不足のまま」 ……経営者や人事担当者の方にとっては「あるある」な失敗ですよね。このような事態が生じてしまう根本的な原因は、もしかすると「『能力定義』の失敗」にあるかもしれません。 組織デザインのキモである「分業の設計」においては、事業と組織、そして「人」という3つの要素を噛み合せること、言い換えれば、事業多

組織デザインにおける「分業」設計の考え方:THE MODELからクロスファンクショナルを分業図でスケッチをしてみた

・組織構造と組織内における分業の実態がマッチせず、スムーズに組織行動が進まない ・他社の組織構造を参考にしてみたものの、自社のビジネスモデルやメンバーのケイパビリティに即した組織にならず、業務効率が落ちてしまった ……事業拡大に伴ってさまざまな部やチームをつくり、組織化を進める中で、こうした課題に直面する企業は少なくありません。 その理由は、組織デザインにあたっての「分業」設計が噛み合っていないから、というケースが多いと考えています。 以前書いたnoteでは、分業の設計

なぜ鬼は鬼殺隊に負けたのか?悪の組織の敗因を「組織デザイン」から分析してみる──『鬼滅の刃』『ダイの大冒険』『ドラゴンボール』

今回は少年漫画に登場する「悪の組織」を分析することを通して、組織デザインについて学んでいきたいと思います。以前、CULTIBASE Radioで配信し、noteにもまとめた「少年漫画から学ぶリーダーシップシリーズ」が大変好評だったので、その組織デザイン編も書いてみた次第です。 さて、多くの漫画において、「悪の組織」は最終的に主人公やそのチームの前に敗れ去ることになります。 もちろん、主人公たちが努力の末に大きく成長したことが、悪の組織を倒す原動力になっていることは間違いあ

組織デザインの「3つの基本構造」──機能別組織、事業部制組織、マトリクス組織について

組織デザインとは、分業と調整を設計し、両者を組み合わせながら組織を作っていく方法論のこと。その歩みは「分業」体制の構築、すなわち「組織構造を描くこと」から始まります。 それゆえ組織デザインのHowを学ぶためには、組織の基本構造を理解するところから始めねばなりません。 もちろん、これは「分業と調整」の一部である「分業」における最初の一歩。一度組織構造を描いたからといって、想像通りに組織が動くことはあり得ず、不断のリデザインが必須であることは念頭に置く必要があります。 とは

「両利きの経営」が分断を生む?事業多角化で生じる“罠”を乗り越えるために

現代企業が直面する「事業多角化」と「人材多様性」という難題。以前別のnoteでも書いたように、組織規模が300人を超えたあたりから事業の多角化が進み、人材多様性も増すことによって、組織に生じる問題はより複雑になります。 そうした組織において事業多角化を進める際は、「両利きの経営」を基本戦略として採用することになりますが、そこにはある“罠”が存在します。 本記事では、その“罠”の全容と、それを回避するための2つの方策──「分散と修繕戦略」と「ワークショップ型組織」について、

メルカリの組織デザインから学んだ、4つの示唆的ナレッジ(インタビュー後記)

先日、僕がインタビュアーを務め、メルカリCHRO木下達夫さんに「メルカリの組織デザインと人材育成」をテーマにお話を伺うトークイベントを開催しました。 以前noteでも書いた、現代企業が向き合わざるを得ない「事業多角化」と「人材多様性」という難題を乗り越える組織デザインを考えるにあたって、さまざまな学びを得られる時間となりました。 詳しい内容についてはぜひアーカイブ動画を視聴いただきたいのですが、この記事では僕自身の振り返りも兼ねて、木下さんへのインタビューで得られた組織デ

“50人の壁”から“大企業病”まで。企業が直面する組織課題を「5段階」に分けて徹底考察する

30人の壁、50人の壁、100人の壁、そして「大企業病」……企業成長に伴い、組織課題は次から次へと現れます。 こうした組織フェーズごとに生じる課題には、ある程度の法則性もあります。 その法則性を解き明かしたのが、ラリー・E・グレイナーが1979年に提唱した、企業の発展段階を示す「5段階企業成長モデル」です。やや古い理論ではありますが、現在でもその有効性は失われておらず、組織デザインの基礎をなす理論の一つとされています。 先日出した記事で、現代企業が直面する厄介な難題、「

事業は増やせど組織は放置、人は多様でも事業は伸びず……現代企業が直面しがちな、厄介な難題について

21世紀の企業が成長・存続していく上で、最重要ファクターの一つである「組織デザイン」。一言でいえば「『分業』と『調整』を設計すること」とも表せるこの営みの可能性と奥深さについて、少し前に解説させていただきました。 ただ、率直に言うと、こんな疑問を抱く方もいらっしゃるかもしれません──「組織デザインなんて面倒なこと、本当にやる必要あるの?」。 外部環境は刻一刻と変化し、たった数ヶ月前の「常識」が「非常識」となることも珍しくありません。 「いくら緻密かつ巧妙に『組織デザイン

「組織デザイン」とはなにか?──21世紀の企業に不可欠な、「分業」と「調整」の設計術

組織崩壊、組織の成長痛、●●人の壁……スタートアップをはじめとする、急速な事業成長に挑む企業から、こうした言葉を耳にすることは珍しくなくなりました。 「事業成長=企業として順風満帆」というわけではないと認識している経営者やビジネスパーソンは、増えてきているのではないでしょうか。そして、こうした組織課題の解決策として、スタートアップなら例えば「1on1」や「カルチャー醸成」、そして「採用広報」などが広まっています。 しかし、組織課題の抜本的な解決策は、未だ十分には普及してい