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【読書感想文】そして誰もゆとらなくなった

朝井リョウ著『そして誰もゆとらなくなったを読みました。

彼の文章はやっぱりおもしろい。収録されているエピソードはどれも最高に笑えるものばかりで、読み応えのある1冊でした。

今年もいろいろと本を読みましたが、私の中の2022年ベストブック賞は朝井リョウ氏のエッセイ3部作時をかけるゆとり」「風と共にゆとりぬ」「そして誰もゆとらなくなったで決定です。

なぜか2作目の「風と共にゆとりぬ」から読み始めてしまいましたが、中毒性が高く気づけば一気に3作読んでしまいました。

著者とは年齢が近く、私も高校の先生にゆとりの失敗作と言われた世代なので、そうしたところにも親近感が湧いてきます。

ゆとりとは言ってられない年齢になった。

「そして誰もゆとらなくなった」より

この本は、この言葉で始まります。そうそう。わかります。

当時、ピカピカの新入社員だった私は、あらゆる場面で「ゆとりなんですよォ〜」を印籠として掲げることで様々な危機をの乗り越えていた。いや、乗り越えられていない危機から見逃されようとしていた。(中略)あれかれ十年以上が経過し、今や先述した印籠を掲げてみたところで「だからって・・・何?」と冷たく返されるだけとなった。

「そして誰もゆとらなくなった」より

本の最初の「はじめに」からの引用なのですが、もうすでにここから面白い。彼の文章は「言語化できないけれど面白いもの」を上手に言葉で書き表していて、そんなところが好きです。

あと彼のエッセイの好きなところは、面白い文章に徹底しているところ。人生の教訓や高い感受性で綺麗なものを見るのではなくて、彼の日常で起こるおかしな出来事を彼の言葉で綴っており、それが最高に面白い。

表現、語彙、構成、全部が素晴らしくて、無駄なく面白い。美しいけど不必要な背景描写に文字数をさくことなく、一語一句全て読みたくなる文章がつまっており、読み終わっても「もっと読みたい」という欲をかきたてられます。

3部作、ということで「そして誰もゆとらなくなった」で一応完結のようですが、もっと彼のエッセイを読みたくて仕方ありません。大人になってから「もっと読みたい」と思える本に出会うことがなかったので、こんな気持ちは久しぶりです。

早く次のエッセイが発売されますように・・・
「ただただ面白い本を読みたい」「ただただ読書を楽しみたい」という方、ぜひ朝井リョウ氏のエッセイを読んでみてほしいです。

1作目はこちら↓



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