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【読書感想文】13歳からのアート思考

アートは難しい。

メキシコシティには美術館や博物館が多く、無料や安価でアートに触れることができる。私はアートが好きというより、何か新しいものを見るのが好きなのと、そもそも外出することが好きなので、美術館には積極的に足を運ぶ。

しかし、せっかく美術館に行っても、何をどのように鑑賞すれば良いか分からず、ただただ「見て」終わってしまう。しかも長くて30秒くらい。そして感想は以下の3つのパターンのうちのどれかだ。

①「何だかすごいな〜」
②「これはよく分からないな〜」
③「ふーん」

何を見てもこの3つの感想のうちのどれかで終わってしまう。

私だって、できることならもっと何かを感じ取りたいし、「きっとこの作品は・・・」とか、作品の裏側に隠されている作者の思いみたいなものを汲み取りたい。でもそれってすごく難しいし、結局よく分からず流し見をしてしまう。

だから、「アートの鑑賞方法の正解」を知りたくて、この本を手に取った。(正確にはKindleで注文した。)

そして読んですぐに、「アートの鑑賞方法の正解を知りたい」という考え方自体が間違っていることに気づく。


この本の導入で、作者はこう語っている。

「作品をじっくり鑑賞する」というのは、案外けっこう難しいものです。
じっと見ているつもりでもだんだんと頭がボーッとしてきて、いつのまにか別のことを考えたりもします。

13歳からのアート思考

作者は美大生だった頃、美術館に行っても作品を見るのはせいぜい数秒、そして作品に添えられた解説のほうをじっくりと読み納得した気になっていたと言う。

よかった。私と同じ。
美大生でそうなんだから、やっぱり多くの大人がそんな鑑賞の仕方をしているんじゃないだろうか。

作品を自分で鑑賞するのではなく、すぐに解説を読み「正解」を探してしまう。

これってアートだけではなく、いろんなことに言えることのような気がする。

今やインターネットにいくらでも答えが載っている時代。だから、自分で考える前にインターネットで検索する癖がついてしまっている。

本を読んだ後や映画を観た後に解説サイトを見たり、世間を騒がすニュースがあれば、まずは解説やそれに対するSNSの反応を見たり。「まずは自分で考えてみる」というステップを飛ばしがちになってしまう。

だからこそ、この「13歳からのアート思考」はいろんな意味で”考えること”を考えるきっかけになった。

作者はこうも言っている。

ビジネスだろうと学問だろうと人生だろうと、こうして「自分のものの見方」を持てる人こそが、結果を出したり、幸せを手にしたりしているのではないでしょうか?(中略)「自分なりの答え」を作れない人が、激動する複雑な現実世界のなかで、果たしてなにかを生み出したりできるでしょうか?

13歳からのアート思考

本当にそうだと思う。
アートだろうがなんだろうが、「自分なりの答え」を見つけ出すこと、考えることは大切だ。それができているわけではないけれど、でも大切だということはわかる。

誰かが言っていたことを知識として話す人よりも、その人なりの答えや意見を持っている人の方が楽しくて魅力的だ。

でも、自分で考えることが大切だとは分かっていても、「では1枚の絵画を鑑賞してください」と言われた時に、どうしていいか分からないのも本音だ。

そんな私みたいな人に、ぜひこの本を読んでほしい。

この本では、ワーク形式でレッスンごとに課題に取り組む。そこで、私たちが持っている「アートへの偏見」を取り払い、新しい見方を教えてくれる。

実際に授業を受けているような構成になっているので、読んでいてとても楽しかったし、実際に自分で取り組んでみたからこそ「なるほどな」と納得することができた。

ネタバレになってしまうのでここでは内容について詳しく書かないけれど、想像力を働かせて鑑賞するとか、心で感じとるとか、そんな抽象的なことではなくて、この本では具体的に「まずはここから」というのを教えてくれる。

そして、美術の歴史とともにアートがどのように人々に衝撃を与え、そして「概念」というものを壊していったのかも、授業を通して学ぶことができる。

読んだだけですぐに「アート思考」が手に入るわけではないけれど、「これなら自分にもできそうだな」と思える本だった。

読んだ後、知識として頭の片隅に置いておくのではなく、すぐに美術館に行って試してみたくなった。少しずつでも、作品をみて「自分で考える」経験を積めば、もっともっとアート鑑賞が楽しくなる気がする。


ということで早速、来週末にアート鑑賞に出かけることにしました。学んだことを活かして、自分なりの「作品との対話」をやってみようと思います。


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