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「経年美化」を考えるー庭のマテリアルと味の話 #0106

作庭の際、当然植物を使用するわけですが(使わない場面があるのも面白いが)、植物以外の資材も色々とマイブームがあります。
これらのマテリアルも使い方で結構見え方が違ってくるので、上手く取り込めると庭の印象をガラッと変えることができてナイスです!

特に植物は柔らかいので、硬いもの、かつ主張しすぎないものを入れると植物の方を際立たせることができるっていう寸法です。

で、この硬質なマテリアルは「経年美化」というテーマで選んでいくことが多く、この辺の話を書いてみようと思う次第です。

石と鉄と植物

安定のメタルの土留め

個人的に、長いこと使用しているのがメタル(時としてコルテン)の錆びたバージョンです。これは元々、デンマークやスウェーデンの街中で使用されていて、良いなーーと思っていたものを実際にやってみたものです。

コペンハーゲン。メタルの土留めは色々バリエーションがある。

鉄の土留めの何が良いかと言うと、まず強度。
鉄なので当然強度があります。特にコルテンは錆びるほどに強度が増す特殊鋼なので、予算に余裕があれば使います。

次に柔軟性。これは意外に思われるかもしれないですが、鉄板(特に薄め)だと「曲げ」がしやすいので、曲線を作りやすいのです。自然界には直線がないので、現場である程度自由に曲げられる、と言うのは大変にありがたいシロモノです。

曲線で柔らかな表情を出せます。(2023年施工)

あとはなんといっても、色ですかね。錆びの色は緑と反対色になるので、緑を際立たさてくれます。また錆びた風合いというものが、「経年美化」をもたらして、熟成感を出すにはもってこいだと思います。

メタルアンドグリーン。メタルの鉢&ブルーベリー。

最近使ってみたいのはメタルフォーム。これは、住宅の基礎工事に使用されるメタルの型枠なのですが、とてもカッコよくて使ってみたい素材のひとつです。
曲げは出来なさそうですが、施設やレストランの外構にはハマりそうな気がしています!(↓こういうやつ)

溶接が必要になることもあるのですが、鉄は本当に面白いマテリアルだと思いますよ!

割栗石(通称:グリ石)

もう一つ、景観を整える意味で使うのが「石」ですね。
石も硬質かつ自然に存在しているものなので、やはり風景を馴染ませるにはとても重要なマテリアルです。

個人的に最近よく使っているのが、割栗石。通称:グリ石ですね。これは、建築の基礎下に入れる大きめの乱切りの石なのですが、サイズがバラバラで逆に「自然感」を作りやすいです。
普通の景石より価格も安価な建築資材なので、うまく使うとコスト面でも削減できてナイスです。

石を入れるだけで風景は一気に「それっぽく」なります。石をいかに使っていくかが、庭を作る上でのミソと言えますな。(冒頭の写真もグリ石の一種です)
また、石も年数を重ねると、苔がついたり味が出ます。それに簡単に変形しない!この辺が良さです。

よく日本庭園なんかで見かける大きい景石も時々使うのですが、何しろ重い!(当たり前だ)ので、最近はあまり使わなくなってきました。これはこれで面白いので、どこかでやってみたいなーと思っています。

最近は松や大きな景石など、コテコテの日本庭園的な素材を解釈して使っていく、というのが面白そうだなーと思っています。

ピンコロ石も有効に使えます

あと、石でよく使っていたのがピンコロです。

ヨーロッパの石畳を見て良いなーと思って使い始めましたが、これも下に敷いたり芝の根切りのために並べたりと使いやすいです。
日本だとコンクリートで固めてしまう庭が多いですが、環境的にもコンクリートは強アルカリのため廃棄しづらいものですし、何しろ見栄えがつまらなくなるので石畳にするのがベターソリューションだと思っております。

ピンコロも馴染むと良い感じ

グリ石に比べて、人工的に作っている感が出てしまいやすいので最近は使用頻度が減っていますが、もうちょっとうまく使えるようになろうと鋭意研究中です!

ヨーロッパの石畳を見ると、長い年月とともに味が出る良さを実感できますし、とにかくメンテナンスが容易である良さもあるのです。

ちなみに全然関係ない話ですが、以前ワイナリーの施工にあたって、中国からコンテナで大量輸入したので在庫めっちゃあります。どこかのガレージ前ででもピンコロ施工試してみようと思ってます。

大谷石も解体現場などから運び出します

あとは路盤材の木質加熱アスファルトとかも使って見たいかな。
やってみたいことは色々あります。

「経年美化」という考え方

マテリアルに関して一番大事にしているのが、「経年美化」という考え方です。
年数が経てば経つほど仕上がっていく、という感じで捉えていますが、植物はもちろん、こういう資材こそ年数を重ねて味が出るものを使っていく方が楽しいと思っています。

この言葉自体はYARD WORKS の天野さんが使っていた言葉なのですが、一般的に日本では「経年劣化」という考え方が主流になりすぎているように思うんですよね。家も庭も、時間が経つほど機能を失っていく、という考え方です。

でも本当にそうなんですかね?
本来、日本庭園も長いものは1000年単位で残ってきているわけで、元々は古いものを良いとする考え方が普通だったはずです。「良い庭」は、年数が経てば経つほど魅力を増すものだ、という考え方が定着していたと思うんですよね。
いわゆるビンテージと言われるものも、同じ考え方がベースにあるはずです。

コペンハーゲンの街中に普通にトチノキがある。

北欧にいた頃、興味深いなーと思ったことの一つが、家の価値が年数を重ねるほど不動産価値として上がっていく、ということでした。
これはまさにビンテージ的な考えが根底にあるからだと思うのです。さらに、古い家も断熱基準を満たし、インフラを整えてスペックを上げることで、プラスして価値を上げていました。そして、内装は賃貸であっても好きに変えられるので、その空間を自分の好きなように作り変えられる。
これは、人の手を渡り歩いてきたことの時間的価値を家に見ているからで、だから歴史ある街並みや庭園にも価値を置けるんだろうなーと思ってみていました。

とにかく。
庭や家も、今の満足だけでなく、30年後50年後、もしくは1000年後も見据えて植物やマテリアルを選ぶ、というのが良いと思っていますよ、というお話でした!

ではでは!

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