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既にそこにあるものとの共同作業:「風景を作る」とはどういうことなのだろう #0104

庭を作るときに悩むことの一つが、風景をどうやっておさめるか、ということなんですな。

庭を作る、ということは要するに風景を作ることかなーと思っています。
風景は風景だけで存在していなくて、建築や周辺の景色、フェンスや既存の庭木などの中にどうやって「溶け込ませつつ、際立たせるか」といった感じになるのかな。

一番参考になるのはやっぱり、自然の風景。どんなふうに植物が生えているのかなーというのは本当に日々よく見ています。
でも人工的なものである以上、「自然」にはなり得ない。なので、色々と参考になるものを引っ張り出してくるのですが、何から引っ張り出してくるのか!?みたいなことを書いてみようと思います。

路肩や高速道路の法面などはとても参考になります
(秋の写真だけどな、、)

既にそこにあるものとの共同作業

芸術家・大竹伸朗氏の名著「既にそこにあるもの」のまさにそのタイトルにあるように、彼は自分の作品を「既にそこにあるものとの共同作業」という言い方をしています。

大変に僭越な話ではあるのですが、庭の風景を作るということはまさにこの「既にそこにある環境」との共同作業なんだと思うんですよね。
全くの無から何かを作るのではなく、建築や周辺風景との相互関係を見ながら、ここに何を置こうか、と考えていくわけです。完全に「既にそこにあるもの」との共同作業です。

完全な新築で設計段階から参入する場合でも、建築や既存の土地の状況を見ながら、ということになるのでこちらも「既にそこにあるもの」からは逃れられない、と思うわけです。

そして、その共同作業がゆくゆくは風景の一部となり、次の「既にそこにあるもの」となっていく、、というのがランドスケープのあり方なんだと思うのです。

最近、何かと話題のGeoffrey Bawa(ジェフリー・バワ)の建築なんて、風景そのものになってますもんね。

風景を見た方が良いと思う

冒頭で自然の風景を参考にしている、という話を書きました。庭づくりを志すのであれば、ぜひ色々な風景を見てみると良いと思います!

公園の中に入って植物の生え方や、なんでこんな植え方をしたのか、など想像をめぐらせてみると、それが自分なりの風景の見方として蓄積されていくと思います。
あとは実際に自分の体感として、体を使ってスケールを図る(フェンスだったり、樹木だったり、距離だったり)と、自分なりの「心地よさ」みたいなものが体感としてわかりますよね。

自分が好きだなーと思う風景(自然じゃなくても良い)をなんで良いのかな?と考えたりすると、その良さがわかってくると思います。
わたくしの場合は風景の良さは「構図」だと思っていて、風景のバランスとかレイアウトみたいなものにグッとくることが多いかなーと。

デンマーク・ユトラン半島の景色は素晴らしい

例えば、デンマークのオーフスの風景なんかは好きだし、ベトナム・ハノイの街並みとか、イエメン・サナアの旧市街、パリのアパルトマンの中庭とかニューヨークのバッテリーパークとか、日本だと東京の明治神宮なんかはいい場だなーと思ったりします。

構図や風景など、好きなものを集めるのが良いと思う

もっというと、風景だけでなく空間的なデザインや構図、みたいなものを観察することも大事だよなーと。

デザイン全般、グラフィックや絵画を学ぶこともアリだと思います。わたくし自身は、子供の頃は絵描きになりたいと思っていたこともあって、特に「構図」に興味がありました。この辺りの経験は生きてきていると思います。
ものの置き方とか、配置、配色みたいなものですな。自分で作るのはそんなに上手くないけど、人のを見ると「ここをこうすればいいのに」とか「展示の仕方を工夫すればいいのになー」とか思うことが結構あります。

植物はままならないけど、絵を描くように!は考えますな

小学生の頃住んでいたアメリカでは、美術館やミュージカル、全く風景の違う中西部の自然、あるいはイタリアのフィレンツェでダビンチやボチチェリを見た経験は、本当に良かったと思うし、バックパッカーや留学等を通じて、アジア、中東、欧州、中米を中心に風景や遺跡、美術館博物館を訪ね歩いたことは大変に大きな財産になっているかな。
ぜひいろんな場所のいろんな風景をストックとして溜めていくことをオススメしますよ!

ただ、わたくしは体系的にこの辺りのことを学んだことがなく、今になって図面の描き方とかレイアウトをちゃんとやってみたいなーーとは思うところではあります。

本や他の人の作品も参考になる

やっぱり王道だけど、他の人の書籍や、実際に作った庭を体感することも大事かなーと思います。

庭で言うとやはりPiet Oudolf パイセン。ニューヨークのハイラインの植栽をやった方ですが、この人の絵画的な植栽は本当に見事!

パイセンの書籍は多数眺めております

こちらも有名なDerek Jarman。彼はコンセプトから自分で作ったところから、面白い人だなーと思います。メタルワークとか参考になります。

これも有名な書籍

日本だとYardworks の仕事はホントすげーな、と思います。構図とかカラーリングとか、めちゃくちゃ計算されている部分と遊びのバランスが素晴らしい。

あとは、ジル・クレマンの「動いている庭」という考えとか、空間という意味で、ジョージア・オキーフ、構図という意味でショーン・スカリーの写真も好きです。

この写真集は名作だと思う

神の目線になりすぎない

と、まあこんな感じで色々なものを参考にしているわけだけど、もう一つ大事な考え方として「神の目線になりすぎない」ことがあります。

ランドスケープを作る、となると、植物という「生き物」を右から左に動かして、あるはずのないものを持ってきて「自然に」見せようとするわけです。
これは油断すると「傲慢」と隣り合わせになってしまう所業だと思うわけです。
どんなに構図が素晴らしくても、本来いるはずのないものを連れてくるわけだから、単純に見た目がかっこいいとか、素敵だから、という理由だけで風景を構築することはしない方がいいよなーということは、心のどこかに置くようにしています。

最終的には、自然に変容していくものが自然なので、手を加えすぎない、自然に委ねる、という覚悟みたいなものもどこかに持っている必要があるのかなーと思っています。
そもそも庭の完成は、50年後かもしれないし、100年後かもしれない。その辺りも常に持っていようと思うこの頃なのであります。

ではでは!

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