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ロバート・プラント/アリソン・クラウス 『レイジング・サンド』

かれこれ20年ぶりに、大学時代の友人と会いました。なんでも勤続30年とのことで、特別休暇をもらって上京したとか。

久しぶり過ぎて、仕事のメールみたいに他人行儀な連絡をしてきた友人。クソ真面目なメッセージを打っている姿が目に浮かぶようでした(笑)

ホテルは神田にあるというので、『かんだやぶそば』に行くことに。
学生時代はあまり深く話したことはなかったのですが、2時間の大半、音楽の話に花が咲きました。

なめこそばいただきました


意外に共通点があったのと、大人になって、音楽の捉え方がかなり幅広くフレキシブルになったことで、心ゆくまでマニアックな話ができました(笑)

***

その友人に勧められて買ったのが『レイジング・サンド』。
ロバート・プラントがカントリーのディーバ、アリソン・クラウスとコラボしたアルバムです。

実は20代後半になってようやくツェッペリンの良さに気づいた私。クラシック音楽のような構成力や豊かで幅広い音楽性に圧倒されました。


以前、ツェッペリン再結成のロバート・プラントのヴォーカルを聴いて、正直往年の彼ほど勢いがなく、ちょっと残念だった記憶があったんです。

「いや、それがすごいねん。聴いてみて」って友人から言われて。

全然違うスタイルで歌う様子は想像がつきませんでしたが、今日、CDが届いて聴いてみました。

今更ですが、ロバート・プラントの歌のうまさに圧倒されました。いい歳の取り方してますね〜。

音作りにもかなり拘ってるなと。
ステレオでCDを流すと、どこでどのパートが演奏しているか、という配置がわかる。
いいステレオであればあるほど、そういう配置はハッキリするのですが、このCDほどはっきりしているのは稀だと思います。

曲自体、50ー70年代くらいのヒット曲のカヴァーが多く、懐かしく感じる人も多いと思います。
(私も何曲かはすごく懐かしかったです。
アラン・トゥーサンのFortune Tellerとか)

いわゆるオールディーズと言われているような曲想も結構多いので、緩めというか暖かい雰囲気。

アリソン・クラウスも素ではそういう曲想に合いそう。

なんだけど、全体に独特の緊張感がある。
ここはプロデューサーのTボーン・バーネットの力量とセンスがモノを言ってるのかもしれませんが、一つには、ロバート・プラントの歌声に秘密がありそうです。

ツェッペリン時代のシャウトも素晴らしいのですが、このアルバムでは、力がいい具合に抜けて、ささやきや呟きに近いような歌声。そんなソフトな歌い方なのに、空間に楔を入れていきながら、空気を動かしているように感じます。


一方でコラボしているアリソン・クラウスの、柔らかい繊細な声は、単体ならば先述のように、懐かしい古き良き時代の曲にしっくりくる声なんですけれど、それがロバート・プラントの声と一緒になった時に、マジックが起こるんです。

柔らかく幸福感に包まれた空気。その空気に入れられた楔。楔と楔と間に糸が張ってあるとすれば、その糸が緩まず、ずっとピンと張っているような印象。

緩さと緊張感のコントラストが、このアルバムの独自性を醸し出しているような気がします。

ふと古代の人は星座を見た時に、音楽が湧いてくるのを感じたんじゃないかなと思いました。

***

私たちはロバート・プラントのツェッペリン時代を知っている。あの興奮の火照りが身体の中に記憶として残っている。

このアルバムを聴いた瞬間、予想外のパンチを食らって一瞬戸惑う。でもその隙のお陰で、やっぱロバートプラントいいよねって軽い嘘を吐かなくても、後から大波のように音楽の力が襲ってきて、私たちを圧倒する。

音楽が、時代や年輪に合わせて進化している過程を、同時代の空気の中で体験できることってなんてありがたいんだろうと思います。

恐々連絡してきた友人との縁にも、改めて感謝しています。

20年経って改めて色々話せるのってなんか不思議で。学生時代には想像もつかなかった。
関係性も熟成していくものなのかもしれません。









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