【古典邦画】「稲妻」

成瀬巳喜男監督の、1952(昭和27)年の作品「稲妻」。YouTubeにて。

主演は、デコちゃん(高峰秀子)。コレも、出て来る男にクズが多いねぇ。男ばかりぢゃないけどさ。

はとバスのガイドをしてる清子(デコちゃん)。
兄と姉の4人兄妹だけど、それぞれ父親が違う。って、いったい母(浦辺粂子)に何があったんだ。
兄はホラ吹きでだらしがなく働き口も決まらずに賭け事に手を出している。
長姉は、金儲けのことばかりを考えて、清子の結婚相手に知り合いの男を紹介する(清子は嫌がっている)。また、金儲けが下手な夫を捨てて、人の旦那とよからぬことをしている。
次姉の夫が急死するが、その後に、妾が子供を抱えてやって来て、夫の保険金を分けてくれるように懇願する。
次姉は、「夫が生前にやったことだから、妻の私にも責任がある」と少し助けることに。清子は納得がいかない。
そして、次姉は、生活のために温泉旅館に手伝いに行くが、長姉がオーナーの女房気取りで入り浸っており、次姉は、夫の保険金で喫茶店を開業する。しかし、そこへも長姉の男が入り込んで来る。

つまり、兄妹は、清子以外、自分を殺して我慢してるか、自分の欲のままに兄妹でも利用するかの、ダメな連中ばかり。

そんなところが嫌になって、清子は家を出て独り下宿することに。そこで親のいない兄妹と知り合って、2人の慎ましい清らかな暮らしと優しい性格に癒されるのだった。

ある日、下宿へ母が訪ねて来た。結局、喫茶店を開業した次姉が行方不明になったというのだ。

また、家族のゴタゴタを持ち込んで来た母に、清子は、
「お母ちゃんがずるずるべったりだから、子供も周りも皆、ずるずるべったりにだらしなくなるのよ。
お母ちゃんはなぜ4人兄妹を1人のお父さんの子として産んでくれなかったの?
私、産まれて親や兄弟の気兼ねなしに生きてきた事はいっぺんもないわよ。
産んでくれなければよかったのよ。
犬や猫みたいに行き当たりばったりの子供なんて。
産まれて一度だって幸福だと思ったことなんてないわよ!」
と言い放つ。

母と共に絶望でさめざめと泣く清子。

下宿の窓から見える空は暗雲が立ち込め、遠くに稲妻が走るという演出。

泣いた後は、労わりあい、母を不憫に思った清子は、兄のためにほとんどの着物を質屋に入れた母のために、いくらかのお金を渡すのだった。

イヤー、デコちゃんの演技と成瀬監督の演出が冴えてるねぇ。

デコちゃんが、何回も「女はいつも損だわ」と嘆くけれども、成瀬監督も、溝口監督と同様、終戦後の解放された社会で、なお抑圧されることの多い女性の理不尽な立場を示してるのかしら。

最後は、少しでも希望が見えてよかった。イイ映画だった。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。