入学二日目の放課後に、続けて予想外のショッキングな出来事に見舞われたことで、頭の中を整理できないまま、針太朗は、心ここにあらず、といった状態で生徒会室をあとに…
その日の放課後、針太朗は、約束を果たすべく、北川希衣子のあとを追って、校庭に向かう。 ひばりヶ丘学院高等部の広い校庭は、校内探索オリエンテーションで見学した…
校内見学の『探索オリエンテーション』は、針太朗の興味を大いに刺激するものだった。 入学式でも使用された1000名近い生徒を収容できる豪華な固定座席つきの大講…
彼が、女子との会話が苦手な理由は、引っ越してくる前の中学生時代、友人の付き合いで参加した他校の女子とのコンパのような集まりで、こんなことがあったからだ。 「こ…
三月の中頃から異例の寒波が到来したせいなのだろうか、例年、四月の最初の週が終わる頃には散ってしまう桜の花が、珍しく入学式のシーズンに満開を迎えている。 この…
常緑樹の根元は、春の陽光が差し込んで明るく照らされている。 校内でもっとも長い樹齢を誇るその巨木について、いつの頃か、こんな伝説が語り継がれていた。 『伝説…
その日の放課後、生徒会メンバーとなっていた河野雅美と島内四片の校内公式キャラクター化に関する交渉を終えたオレと桃は、朝の約束どおり、人工島の最南端にあるマリン…
ルートD・玄野雄司の場合 その後のことを少しだけ語ろう――――――。 ゲルブの面会を終えたあとも、順調に快復が見込まれたということで、三月の月末には、担…
「今日こそ、目が覚めるでしょうか……?」 「担当の先生によると、『昨日から、検査の数値が良くなった』って、ことだけど……もう半年以上も、このままだからね……」 …
「わたしにしかできないこと? そうね……あなたには思うところも色々とあるんだけど……今回は、シュヴァルツたちの暴走と、彼がケガすることなく捜査官に身を委ねること…
幼なじみにそっくりの少女からお墨付きをもらえたことで、前向きな気持ちが沸き上がってくる。 (ヨシッ! 早く普段の生活に戻るためにも……) と、リハビリテーシ…
「――――――雄司、雄司、起きて。間に合わなくなっちゃうよ……」 ぼんやりとした意識のなかで、聞きなじみのある声がする。 続いて、掛け身体をゆするような感…
引き続き、サムネイル画面の大群が高速で流れていくなか、またも無意識に手を伸ばして触れた画面が再生される。 今度は、さっきよりも時間が経過して、画面の中の少年…
走馬灯――――――という言葉を聞いたことがある。 人が死ぬ間際などに、これまでの人生の記憶がよみがえることを言い表した、比喩表現に使われる言葉だ。 死を覚悟…
シュヴァルツの両脚を掴んだオレが声を発すると同時に、ゲルブが構えた銃器からは、 BOMB!! という、さっきよりもさらに鈍い発砲音を伴い、弾丸が発射された。 …
〜銀河連邦捜査官・ゲルブの見解〜 シュヴァルツとキルシュブリーテから解放され、ボクたちの方へと歩み寄ってきた浅倉桃は、彼らの疑似催眠の効果が薄れたこともあっ…
Tomohito_Asuma
2024年6月1日 14:06
入学二日目の放課後に、続けて予想外のショッキングな出来事に見舞われたことで、頭の中を整理できないまま、針太朗は、心ここにあらず、といった状態で生徒会室をあとにする。 しかし、そんな意識散漫、上の空の状況で、フラフラと校舎内を歩く彼は、さらに衝撃的な事態に直面することになる。(北川さんと言い、東山会長と言い、いったい、どういうつもりなんだ?) 針本針太朗は、特別に疑り深い性格というわけ
2024年6月1日 13:54
その日の放課後、針太朗は、約束を果たすべく、北川希衣子のあとを追って、校庭に向かう。 ひばりヶ丘学院高等部の広い校庭は、校内探索オリエンテーションで見学したとおり、運動部向けに人工芝が敷き詰められていて、グラウンドの隅には、学院のシンボルでもあるクスノキの大樹が、その存在を誇示するように、そそり立っていた。 「針本、約束を守ってくれてありがと」「いや、そんなに大したことでは……」
2024年6月1日 13:41
校内見学の『探索オリエンテーション』は、針太朗の興味を大いに刺激するものだった。 入学式でも使用された1000名近い生徒を収容できる豪華な固定座席つきの大講堂にはじまり、電子黒板など最新のICT機器が揃った理科室、音響機材が揃った会議室、探求授業のための大型プロジェクターが備えられた特別教室、さらに人工芝付きの巨大な校庭など、公立の中学校を卒業したばかりの彼にとって、どれも、新鮮で目を引く施
2024年6月1日 13:31
彼が、女子との会話が苦手な理由は、引っ越してくる前の中学生時代、友人の付き合いで参加した他校の女子とのコンパのような集まりで、こんなことがあったからだ。「このあいだ京都に行ったんだけど、たい焼き屋さんがあってさ。あ、東山駅の近くなんだけど……知ってる? そう、あの路地に入ったところね。んで、たい焼き屋さんの店の奥にすごい職人風のおじいさんがいてね、あ、店番してるおじいさんともうひとり。そんで
2024年6月1日 12:50
三月の中頃から異例の寒波が到来したせいなのだろうか、例年、四月の最初の週が終わる頃には散ってしまう桜の花が、珍しく入学式のシーズンに満開を迎えている。 この春から、十年ぶりに両親の地元の街に戻ってきた針本針太朗は、かつての観光スポットから命名されたという花屋敷駅に降り立って、新たな学び舎となる、ひばりヶ丘学院高等部の校舎を目指していた。 改札口を出て、東西に伸びる生活道路を西の方角に進み
2024年6月1日 12:23
常緑樹の根元は、春の陽光が差し込んで明るく照らされている。 校内でもっとも長い樹齢を誇るその巨木について、いつの頃か、こんな伝説が語り継がれていた。『伝説の大樹』の下で、愛を告白した二人は永遠に結ばれる――――――。 日本中の教育機関で、なかば興味本位、なかば退屈しのぎ代わりに語られる『学校の七不思議』と同じく、中高一貫校である私立ひばりヶ丘学院では、そんな伝説が、なかば冗談交じり、
2024年5月10日 18:24
その日の放課後、生徒会メンバーとなっていた河野雅美と島内四片の校内公式キャラクター化に関する交渉を終えたオレと桃は、朝の約束どおり、人工島の最南端にあるマリンパークに向かった。 海に面した公園の欄干の向こう側には、コンテナの積み下ろしを行う巨大な巨大なクレーンがいくつも立ち並び、まるで、オアシスに並んで水を飲むキリンの群れのようだ。 かつては世界屈指の規模だった港町に隣接された人工島に暮
2024年5月9日 17:57
ルートD・玄野雄司の場合 その後のことを少しだけ語ろう――――――。 ゲルブの面会を終えたあとも、順調に快復が見込まれたということで、三月の月末には、担当の医者から退院の許可が降りた。 それは、クリーブラットに宣言したように、オレ自身がリハビリに注力したということもあるが、半年以上もの間、寝たきりになっていたオレが廃用症候群と呼ばれる筋肉の萎縮や血圧の低下を防ぐために、母親と桃が、
2024年5月8日 17:58
「今日こそ、目が覚めるでしょうか……?」「担当の先生によると、『昨日から、検査の数値が良くなった』って、ことだけど……もう半年以上も、このままだからね……」 薄ボンヤリとした意識の中で、オレの良く知るふたりの声が聞こえたような気がした。「桃……母さん……そこに居るのか?」 頬や口元の筋肉も衰えてしまっていたのだろう……おそらく、リハビリが必要だと思われる動かしにくなっている唇から、
2024年5月7日 18:19
「わたしにしかできないこと? そうね……あなたには思うところも色々とあるんだけど……今回は、シュヴァルツたちの暴走と、彼がケガすることなく捜査官に身を委ねることが出来たお礼に、聞いてあげてもイイよ」 クリーブラットは、視線をそらして答えながらも、こちらの要望に応じようという意志を示してくれた。 彼女の対応に、ホッとしながら、オレは気になることをたずねる。「ありがとう、助かる。頼みたいこと
2024年5月6日 17:34
幼なじみにそっくりの少女からお墨付きをもらえたことで、前向きな気持ちが沸き上がってくる。(ヨシッ! 早く普段の生活に戻るためにも……) と、リハビリテーションにチカラを注ぐ決意を固めるが、その前に確認しておきたいことがある。「気になったんだが……クリーブラットは、どうやって、オレの意識とコンタクトを取っているんだ? 実際のオレは、まだ意識がないまま寝たきりなんだよな?」「正確に言
2024年5月5日 17:04
「――――――雄司、雄司、起きて。間に合わなくなっちゃうよ……」 ぼんやりとした意識のなかで、聞きなじみのある声がする。 続いて、掛け身体をゆするような感触を覚えた直後、「ほら、もうこんなに時間が経ってるよ」と言って、幼なじみが、スマホ画面のデジタル時計を指し示す。 ディスプレイには、5447時間45分30秒という文字列が表示されていた。 あまりにも大きな数字で、それが、どれ
2024年5月4日 18:31
引き続き、サムネイル画面の大群が高速で流れていくなか、またも無意識に手を伸ばして触れた画面が再生される。 今度は、さっきよりも時間が経過して、画面の中の少年は、少し大人びた顔つきになっているように見えた。 =========PLAY========= ・爆発的に蔓延した感染症の影響で、人類の半数以上が亡くなったセカイ ・二大強国の対立の結果、核戦争で地球上の大半の生物が死滅したセカイ
2024年5月4日 18:09
走馬灯――――――という言葉を聞いたことがある。 人が死ぬ間際などに、これまでの人生の記憶がよみがえることを言い表した、比喩表現に使われる言葉だ。 死を覚悟するほどの危機に瀕した状況や、感情が揺さぶられるような極限状態になると、脳裏に深く印象に残った過去の記憶が次々と映写されているように、よみがえることがある。そんな風にいわれているが……。 臨死体験の経験談や、フィクションの世界では良く
2024年5月3日 19:52
シュヴァルツの両脚を掴んだオレが声を発すると同時に、ゲルブが構えた銃器からは、 BOMB!!という、さっきよりもさらに鈍い発砲音を伴い、弾丸が発射された。 銀河連邦の捜査官との打ち合わせどおりなら、ゲルブの銃から発射された弾丸は実弾ではなく、麻酔弾になっているはずだ。 オレとは異なり、命中弾をくらったシュヴァルツは、銃撃を受けた衝撃と両脚をつかまれている影響で、その場に倒れ込む。
2024年5月3日 18:49
〜銀河連邦捜査官・ゲルブの見解〜 シュヴァルツとキルシュブリーテから解放され、ボクたちの方へと歩み寄ってきた浅倉桃は、彼らの疑似催眠の効果が薄れたこともあって、一旦は、意識を取り戻したものの、ボクたち並行世界の住人の存在と、目の前で倒れている玄野雄司の姿を目にしたため、これ以上パニックを起こされる前に、大人しく眠ってもらうことにした。 屋上フロアに倒れ込んでいる上級生の元に駆けつけようと