Tomohito_Asuma

自作の小説などを公開させてもらっています。 今後の創作活動のために、コメント・ご感想な…

Tomohito_Asuma

自作の小説などを公開させてもらっています。 今後の創作活動のために、コメント・ご感想などいただけると嬉しいです。

最近の記事

パラレル to LOVEる・エピローグ〜この世の果てで愛を唄う少女〜後編

 その日の放課後、生徒会メンバーとなっていた河野雅美と島内四片の校内公式キャラクター化に関する交渉を終えたオレと桃は、朝の約束どおり、人工島の最南端にあるマリンパークに向かった。  海に面した公園の欄干の向こう側には、コンテナの積み下ろしを行う巨大な巨大なクレーンがいくつも立ち並び、まるで、オアシスに並んで水を飲むキリンの群れのようだ。  かつては世界屈指の規模だった港町に隣接された人工島に暮らす自分たちにとって見慣れた風景ではあるが、春の柔らかな夕陽と、その光に照らされ

    • パラレル to LOVEる・エピローグ〜この世の果てで愛を唄う少女〜前編

       ルートD・玄野雄司の場合   その後のことを少しだけ語ろう――――――。  ゲルブの面会を終えたあとも、順調に快復が見込まれたということで、三月の月末には、担当の医者から退院の許可が降りた。  それは、クリーブラットに宣言したように、オレ自身がリハビリに注力したということもあるが、半年以上もの間、寝たきりになっていたオレが廃用症候群と呼ばれる筋肉の萎縮や血圧の低下を防ぐために、母親と桃が、日替わりで、身体を動かすベッド上でのリハビリ作業を行ってくれていたから、というこ

      • パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑭

        「今日こそ、目が覚めるでしょうか……?」 「担当の先生によると、『昨日から、検査の数値が良くなった』って、ことだけど……もう半年以上も、このままだからね……」  薄ボンヤリとした意識の中で、オレの良く知るふたりの声が聞こえたような気がした。 「桃……母さん……そこに居るのか?」  頬や口元の筋肉も衰えてしまっていたのだろう……おそらく、リハビリが必要だと思われる動かしにくなっている唇から、そう言葉を発すると、 「「えっ!?」」 という、ふたりの声が重なった。  

        • パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑬

          「わたしにしかできないこと? そうね……あなたには思うところも色々とあるんだけど……今回は、シュヴァルツたちの暴走と、彼がケガすることなく捜査官に身を委ねることが出来たお礼に、聞いてあげてもイイよ」  クリーブラットは、視線をそらして答えながらも、こちらの要望に応じようという意志を示してくれた。  彼女の対応に、ホッとしながら、オレは気になることをたずねる。 「ありがとう、助かる。頼みたいことというのは、シュヴァルツのことなんだ。捜査官に身柄を確保されたってことだけど、シ

        パラレル to LOVEる・エピローグ〜この世の果てで愛を唄う少女〜後編

        • パラレル to LOVEる・エピローグ〜この世の果てで愛を唄う少女〜前編

        • パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑭

        • パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑬

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑫

           幼なじみにそっくりの少女からお墨付きをもらえたことで、前向きな気持ちが沸き上がってくる。 (ヨシッ! 早く普段の生活に戻るためにも……)  と、リハビリテーションにチカラを注ぐ決意を固めるが、その前に確認しておきたいことがある。 「気になったんだが……クリーブラットは、どうやって、オレの意識とコンタクトを取っているんだ? 実際のオレは、まだ意識がないまま寝たきりなんだよな?」 「正確に言うと、いまのあなたの肉体は、もう目覚める直前だよ。わたし達のセカイの脳波測定機で

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑫

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑪

           「――――――雄司、雄司、起きて。間に合わなくなっちゃうよ……」  ぼんやりとした意識のなかで、聞きなじみのある声がする。  続いて、掛け身体をゆするような感触を覚えた直後、 「ほら、もうこんなに時間が経ってるよ」 と言って、幼なじみが、スマホ画面のデジタル時計を指し示す。  ディスプレイには、5447時間45分30秒という文字列が表示されていた。  あまりにも大きな数字で、それが、どれだけの日数を表しているのかもわからない……。  だが、まだまだ睡眠不足を訴える身

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑪

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑩

           引き続き、サムネイル画面の大群が高速で流れていくなか、またも無意識に手を伸ばして触れた画面が再生される。  今度は、さっきよりも時間が経過して、画面の中の少年は、少し大人びた顔つきになっているように見えた。  =========PLAY=========  ・爆発的に蔓延した感染症の影響で、人類の半数以上が亡くなったセカイ  ・二大強国の対立の結果、核戦争で地球上の大半の生物が死滅したセカイ  ・温暖化が進んで、砂漠地帯と水没した地域に二分されてしまったセカイ    目

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑩

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑨

           走馬灯――――――という言葉を聞いたことがある。  人が死ぬ間際などに、これまでの人生の記憶がよみがえることを言い表した、比喩表現に使われる言葉だ。 死を覚悟するほどの危機に瀕した状況や、感情が揺さぶられるような極限状態になると、脳裏に深く印象に残った過去の記憶が次々と映写されているように、よみがえることがある。そんな風にいわれているが……。  臨死体験の経験談や、フィクションの世界では良く目にする表現だが、後頭部から首周りの位置をシュヴァルツの拳で殴打されたオレの脳内

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑨

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑧

           シュヴァルツの両脚を掴んだオレが声を発すると同時に、ゲルブが構えた銃器からは、  BOMB!! という、さっきよりもさらに鈍い発砲音を伴い、弾丸が発射された。  銀河連邦の捜査官との打ち合わせどおりなら、ゲルブの銃から発射された弾丸は実弾ではなく、麻酔弾になっているはずだ。  オレとは異なり、命中弾をくらったシュヴァルツは、銃撃を受けた衝撃と両脚をつかまれている影響で、その場に倒れ込む。  彼の手からは、USBメモリーのような端末機器がこぼれ落ち、屋上フロアの床に

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑧

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑦

           〜銀河連邦捜査官・ゲルブの見解〜  シュヴァルツとキルシュブリーテから解放され、ボクたちの方へと歩み寄ってきた浅倉桃は、彼らの疑似催眠の効果が薄れたこともあって、一旦は、意識を取り戻したものの、ボクたち並行世界の住人の存在と、目の前で倒れている玄野雄司の姿を目にしたため、これ以上パニックを起こされる前に、大人しく眠ってもらうことにした。  屋上フロアに倒れ込んでいる上級生の元に駆けつけようとする彼女には、ブルームが簡易麻酔を施して、穏便な方法で、保護することに成功してい

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑦

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑥

           〜浅倉桃のまなざし〜  映画やドラマで耳にするような鈍く響く音とともに、ワタシは意識を取り戻した。  教室でクラスメートから、くろセンパイが手渡してきたというメモ書きを確認してから、校舎の屋上へと向かったところまでは思い出せるものの、そこから先の記憶が曖昧だ。  たしか、屋上では、桜木先生と、なぜか、いつもとは少し雰囲気が異なるセンパイが待っていたような気がするんだけど……。  ボーッとした頭で、そんなことを考えていると、 「浅倉さん! 浅倉桃さん!! 大丈夫!?

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑥

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑤

           自分の身を……いや、経験や記憶をシュヴァルツたちに差し出してでも、彼女を……桃を守らなければ――――――。  ここにきて、職務として、『ラディカル』のセカイ統合計画を阻止することを目的としているゲルブたちと、後輩女子の安全確保を最優先事項とする自分の利害が対立したことを悟った。 「済まないな、ゲルブ……やっぱり、桃があのまま囚われているのを見過ごすことはできない」  そう返答すると、銀河連邦の捜査官は、唇を噛みながら、オレの覚悟を試すように問いかけてくる。 「本当に

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑤

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜④

          「いきなり、飛び道具をブッ放してくるとか、おっかないヤツだなぁ……」  自分自身と瓜二つ(髪の色をのぞく)の姿をしている人物に、見たこともないような武器で攻撃されたという事実に対して、現実感を持つことができずに感想をつぶやくと、親友の姿をした捜査官は、あきれた表情で苦言を呈してくる。 「もうちょっと、緊張感を持ってくれよ。ブルームたちが来るまで、あのふたりを相手に、ボクは、キミと浅倉桃を守りきらなきゃならないんだよ?」  その一言で、オレは事態の深刻さを再認識する。

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜④

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜③

           屋上フロアの出入り口となっているドアを勢いよく開くと、そこには、オレの予想したとおりの光景がひろがっていた。  フロアに確認できる人影は、三つ。  放送・新聞部の後輩である浅倉桃。  吹奏楽部の顧問であり音楽専科の教師である桜木高大――――――いや、それは、オレたちのセカイの人物のなまえであり、桃を監視するように見つめている彼は、ひと月ほど前に、この校舎屋上から逃亡したキルシュブリーテだろう。  そして、もうひとり――――――。  毎朝、鏡で見慣れた姿がそこにある。

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜③

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜②

           張り詰めるような緊張をともなった沈黙がしばらく続いたあと、銀河連邦の捜査官が口を開いた。   「いつかは話さなくちゃ――――――そう、思っていたんだけどね……」  神妙な面持ちでゲルブは言葉を吐き出すが、普段、オレに対して深刻な表情を見せることのない親友の冬馬の姿で語られると、なんだか、可笑しく感じてしまう。 「おいおい、そんなシリアスな雰囲気にならないでくれよ。ちょっと考えれば、理解ることだったんだからさ」  わざと、おどけたような口調で言うと、ゲルブも少しだけ表情

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜②

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜①

           午後の授業のあとの放課後のショート・ホーム・ルームが終わると同時に、オレは、冬馬と放送・新聞部の部室に向かった。  桃と同じくらい……とは言わないまでも、オレも島内四片のデモテストを楽しみにしていた。  だが――――――。  親友とともに、部室を訪れると、そこに、VTuber・島内四片を演じる下級生の姿はなかった。 (最近は、真っ先に部室に顔を出して、デモテストに熱中していたのに……今日は、どうしたんだろう?)  そう思って、すでに部室で新年度の部員勧誘資料を作成

          パラレル to LOVEる・第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜①