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イーサリアムセカンドレイヤー Arbitrum と Optimism の比較

今年はイーサリアムのセカンドレイヤー元年です。イーサリアムのガス代が高騰したことで2021年はマルチチェーン時代となりましたが、セカンドレイヤーが台頭してきたことで今後どのような変遷となるか注目です。

セカンドレイヤーはデータ圧縮技術の賜物であり、起業家なら誰もが愛する映画「シリコンバレー」に登場する「Pied Piper」の技術を再現しているかのようでワクワクします。

セカンドレイヤー(L2)では、基本的にRollup(ロールアップ)と呼ばれる仕組みが使用されます。このRollupをさらに大別したのが「Optimistic Rollup(オプティミスティック ロールアップ)」と「zk Rollup(zk:Zero Knowledge)」です。

両者の違いは別の機会に説明するとして、今回はすでにユースケースが揃いつつあるOptimistic Rollupに絞って見ていきます。

Optimistic Rollupの中でも存在感を出しているのが「Arbitrum(アービトラム)」と「Optimism(オプティミズム)」です。

Rollupとは

SolanaやBSCのように、ガス代を抑えるためにネットワーク容量を大きくしたL1チェーンは、ブロックの検証に必要なハードウェア性能が高く、結果的にネットワークが集権化する傾向にあります。

イーサリアムは、L1で処理性能を出すのではなくL2で補う思想です。ブロックチェーンで最も重要なのは分散性だからです。

L1を道路に例えるなら、L2は高速道路だと言えるでしょう。

L2では、何百ものトランザクションを1つにまとめ、自身のネットワークに転送した後に、コンパクトな状態でL1へと送ります。先ほどと同様に道路で例えると、何百台もの車を1台の大型車に載せて運ぶイメージです。

これが、Rollupの考え方です。つまり、L2では基本的にトランザクションをRollup(複数のトランザクションを1つにまとめる)ことを前提に実装されています。

https://ethereum.org/en/developers/docs/scaling/

ArbitrumもOptimismもこのRollupの仕組みが実装されています。

ArbitrumとOptimismの共通点

Rollupのコアな目的は、次の2つのアクションを実行することです。

  • L1(オンチェーン)のトランザクションの大部分をL2(オフチェーン)へ移す

  • L1のスマートコントラクトと連動することで引き出し&デポジットを処理し、L2取引を検証する

L2上のトランザクションが本物であることを証明する必要があるため、検証部分は非常に重要な意味を持ちます(L2はオフチェーンになるため)。ArbitrumとOptimismは、次の3点で共通しています。

  • Fraud proofs:トランザクションの度に検証するのでなく、不正なブロックが検出された場合にのみ検証を行う。これにより、ネットワークリソースの効率化を図る。ゆえに「Optimistic(楽観的な) Rollup」。(2/28追記:OptimismのFraud proofsはFault proofに名称変更済み)

  • Instant finality:トランザクションは何度も検証されることなく、ブロックが作成された瞬間にファイナライズされる。

  • Cross-chain bridges(Cross-layer bridges):トークンがL1とL2を移動できるようにする。

ArbitrumとOptimismの違い

前提として、Optimistic Rollupを発明したのはOptimismチームです。その後、Arbitrumチームが手を加えた形になります。両者の最も大きな違いは、Fraud proofsにあります。

  • Optimism:シングルラウンドのFraud proofs

  • Arbitrum:マルチラウンドのFraud proofs

OptimismのシングルラウンドFraud proofsは、L1がL2トランザクションを全て検証することに依存しています。こうすることで、Fraud proofsの検証は瞬時に行われます。しかし、L1での検証にはより多くのガス代がかかります。L2のガス代はL1ガスブロックによって制限されるため、より多くのコストとなるのです。

これに対してArbitrumでは、Fraud proofsを「Fine-Combing」方式で行っています。マルチラウンドFraud proofsを使用することで、Arbitrumは不正なトランザクションの一点に焦点を当てます。その結果、Optimismと比べてさらにネットワーク性能が高まるのです。同様に、L2トランザクション全てがL1で検証されるわけではないため、ガスブロックの制限による影響は受けません。

※2/28追記:OptimismもマルチラウンドのFraud proofs(Fault proof)への移行案が出ていると教えてもらいました

Optimismのイーサリアム依存性

ArbitrumとOptimismの違いは、バーチャルマシンからも説明できます。

  • Arbitrum:AVM(Arbitrum Virtual Machine)

  • Optimism:EVM(Ethereum Virtual Machine)

OptimismはEVM(Ethereum Virtual Machine)を使用しています。一方のArbitrumは独自のAVM(Arbitrum Virtual Machine)を開発しました。AVMでは、EVMを使用しているDAppsをAVMに変換する必要があるものの、そのプロセスはAVMが自動で行います。DApps開発者は、AVMに対応するための追加実装を求められません。

また、OptimismのEVM(便宜上OVMと表記)はバイトコード用のSolidityコンパイラに限定されています。(3/1追記:OVMはすでにSolidity以外の言語に対応していると教えていただきました!)これに対してArbitrumは、Solidity以外にVyper、Flint、YUL+、LLLLなど、すべてのEVMプログラミング言語をサポートしています。

ブリッジとトークン

ArbitrumもOptimismもブリッジを使って他のL2とやり取りし、トークンの移動を実現します。Arbitrumがすべてのトークンに対応するためのパーミッションレスなブリッジを採用している一方で、Optimismはそれぞれ専用のブリッジを整備する方針です(3/1追記:公式ブリッジ以外はもちろん自由にトークンをブリッジさせることができます)。

ArbitrumもOptimismも、現時点では独自のトークンを保有していません。ネットワーク内の通貨としては、OptimismはWrapped ETH(WETH)を使用している一方で(追記:OptimismもすでにETHに対応していると教えていただきました!)、Arbitrumは純粋にETHを使用しています。

TVL

https://l2beat.com/

Optimismが最初のRollupプロジェクトと言えますが、現時点ではArbitrumが一歩リードです。L2ネットワークのうち、Arbitrumは約55%のTVLを獲得しています。Optimismは約8%です。

イーサリアムの主要なDAppsが両者に対応しており、MetaMaskで接続することができます。すでに、イーサリアムを直接使用せずにL2を使用することでガス代を大幅に削減することが可能です。

https://cointool.app/gasPrice/arb

Rollupの欠点は、ArbitrumやOptimismなどのL2から資金を引き出すのに1週間ほど待たなければならない点です。この期間中にFraud proofsが行なわれます。

また、現状のL2間同士のトークン移動は、一度L1を挟まなければなりません。そのため、トークンの移動にガス代がかかってしまいます。ただしこれは、cBridge、StarkEX、Connext、Hermez' Massive Migrations、Loopringといったブリッジプロジェクトによって解決されつつあります。

L1とL2のトークンの移動は、ガス代を気にしなければMetaMaskなどのウォレットで行うこともできます。

参照ソース


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