33rdSGアンダーライブ~己の輝き~(随時追記)

はじめに

 センターが違えば、こうもライブの雰囲気は変わるか。そんなライブだった。そもそも、横浜アリーナ3Daysという前例のない規模のアンダーライブで、どのように「いつものアツさ」を届けるのかというところには、非常に気になっていた。しかし、そうした予想はある意味裏切られた。
 団結よりも、個性を。そして、争いよりも己の輝きを信じる。マスターピースは己の中にあり、それを出すことの責任を自分で負う。そして輝く。
 いわゆる、選抜を目指すようなそういうハングリーな物語からくるアツさのようなものとは違うものを含んだライブは、アンダーライブというより、松尾美佑座長のライブ、だったかもしれない。
 センターに立った「とんでもプリンセス」に全員いい意味で調子を狂わされ、そして、皆晴れやかに去っていくライブは「個性爆発」以外の何物でもない、唯一無二のライブだった。

松尾美佑という人

 今作のアンダーセンターであり、座長でもある松尾美佑さん。毎週金曜日に放送されているラジオ『乃木坂46の乃木坂に相談だ!』で清宮レイさんと共におなじみの彼女の恐ろしさは、「どこでも。誰の前でも話す言葉が変わらない」というところにあると私は思っている。
 普通、多かれ少なかれ、相手によって紡がれる言葉は変わると思っている。アイドルで置き換えるなら、例えばメンバーの前、ラジオのマイクの前、アリーナの観客の前の言葉は、大抵違う。
 それは、緊張してそうなるのか、意図してフィルタリングしているのかはわからないが、ふつうはそういうものである。というか、10000人単位のファンの前で話す時、身構えて普通だと思う。
 しかし、彼女はさも友人に話すかのように、ごくごく個人的な葛藤をよどみなく、ニコニコしながら話す。これは話が上手いとか、構成が整っているということとイコールではない。
 むしろ、10,000人単位のファンの前で「えーと」と言えてしまう事がすごい。さらに、緊張してないわけでもなくてそれも「緊張しました(笑)」とケロッと言う。どこまで行っても、誰の前でも松尾美佑ペースは松尾美佑ペースなのである。そして、それに巻き込まれていく。

「魅せ方で見せる」ライブ

 さて、ライブの内容そのものは、アンダーライブというよりも昨年までの全国ツアー的なものに感じた。VTRで展開を作りつつ、その合間に曲を披露していくスタイルは、むしろ懐かしささえ感じた(個人的にはどうしてもパフォーマンスに対する意識が切れるので、できればVTRは少ないほうが好みではあるのだが、少ない人数である以上そうなりがちなのはわかる)。
 しかし、例えば冒頭から『自由の彼方』等Seishiro氏による新振り付けになっていたり、既存楽曲もそのままやるのではなく、相当数手が加えられていた。
 全体ライブとセットリストを差別化する上で、どうしてもアンダーライブで使える楽曲は少なく、その上でアンダーライブらしさのようなものを出すと固定化されがちである。結果的に、良くない意味で「歴史」のようなものに縛られ過ぎるような印象がある。
 そうした観点で『自由の彼方』を新しい振り付けでやったことは、今年の神宮公演のように、先人たちに敬意を示しつつも「あくまで自分たちがオリジナルである」というような意志を感じ、とてもよかった。

ジコチュープロデュース

 今回の「お楽しみコーナー」でもあった、ジコチュープロデュースは非常に興味深いものばかりだった。しかし、今回感じたのは、そうした自分の枠が与えられたときの取り組みのベクトルの違いである。
 割と「やってみた」という風な語り口で、完成度よりもそこまでに仕上げた物に対してのチャレンジ精神、努力を称えるような流れになりがちなこの手の企画だが、今回は「自分の強み」をどのように見せるか、というところにがっつり比重を置いているメンバーが多かったように感じる。
 特に、初日の冨里奈央さんの発言が印象的だった。「あざとセリフ」の演目は「高校生だから」という理由でやっていたようで、かなり自分を俯瞰で見ての発言に感じた。
 彼女に限らず、これまでから「強み」と思っていたものを改めてぶつけて、どうなるのか。そしてどう、演目としてぶつけるのか。それがどんな反響があるのか。
 この企画は、「何でもやっていいよ」というご褒美企画に見えるが、いざ本気でやりだすと「自分をセンターとして打ち出すには、なにが必要なのか」という問いを含む、きわめてストイックなものだと常々感じる。
 皆のパフォーマンスが仕上がっていたからこそ、「チャレンジを見守る朗らかさ」というより「この人の強みは何なのか」という事を見る側面が強くなり、そして無意識にファンが比較する(EX.○○ちゃんのプロデュースよかった)的な見方をすることも相まって、独特の緊張感があったように思う。
 そして、その中で好き勝手やる人、ここがプレゼンのチャンスだと力む人、本当に楽しそうな人から、非常にメラメラとしたものを抱える人まで、様々だった。
 「咲けるとこで咲いて、ぶちかましたらいいじゃん」と考える人、「とはいえ前を目指すことこそ己の信条」と考える人。正直言って、皆向いている方向はバラバラである。
 しかし、それさえも飛び越えて全員をニコニコさせてしまうところに、今回のライブの凄みがあるし、そういう特殊な環境にしたのは、割と座長によるところがあると思う。
 
 






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