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Sara Wakui - Time Won`t Stop(2022)を聴いた

”ハイ”なジャズベースの何か

 ミクスチャーという言葉が便利なのでつい使いがちになるけど、私はあくまでジャズだと感じます。少々ハイになりすぎというか、ぶっ飛んでいるけども。 

 ジャズのコード感と、マスロック的な複雑なビート。ここで、ミニマルさや不穏さにとどまるのではなく、展開していく。そして、ハーモニーが解決していく快楽も担保している。

 この組み合わせはある種、過剰なほどのドラマを演出する。聴いているときの心の揺さぶられ方、そして快楽はナチュラルなものではなく、ある種エナジードリンクをがぶ飲みしたときのような高ぶり方に近い。この感覚は、個人的にはmillenium paradeなどにもあるが、こちらはもっとドラッグというか、もう一段サイケデリックな印象だが、あくまでこちらは合法。このアルバムにはまだジャズの理性が働いている気がしている。

  『tietie』、『Calming Influence』と畳みかけた後の『Can I Just Pray』のチル。そこからの『Escape』のピアノトリオ+ボーカルという編成。意外とボーカルがある楽曲が多いことも間口を広げていて、これまた憎い。 

 Answer to Rememberなどを彷彿とする場面もあるが、よくよく聴くと結構違う。やはりピアノのコードで音楽がドライブしていくあたりが、主宰者がピアニストであるということの証拠のよう。『Mike in the green』とかは完全にピアノ主導で音楽が展開している。ビックバンド的にプレイヤーが全員が等しく権限を持つのではなく、確実にピアノに音楽を進める権限がある。

 プレイヤーのコミュニケーションで合議制で進んでいく音楽もよいですが、こういうあるプレイヤーのビジョンを具現化するために、ある種「奉仕」するようなバンドは個性がさらに際立つので楽しい。

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 非常に好みのアルバムでした。ご馳走様でした。2nd Albumが3月に出るとのことでいい時期に聴けた気がします。大好き。(先行シングルも出ている)

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P.S. 調べたら、Adoのワールドツアーに帯同しているらしい。想像がつかない。どんなプレイをしているのか非常に気になる。


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