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イギリスのトラブルメーカー大家さん宅 真夜中の訪問者 #8-4続き

 さて、いよいよ最終回「真夜中の訪問者」です。トラブルメーカー大家さんの家に父親が斧をもってやってきたことがあるという情報を知り、警戒を強めていたある夜の話です。

 私達は主寝室、弟はゲストルームで寝ていました。急に「ビー」と呼び鈴がなったのです。寝ぼけながら慌てて飛び起きましたが、時刻は夜中の12時、怖すぎです。日本のようにインターフォンで顔をチェックできる機能はなく、チェーンロックもついていないため、ドアを開けないと訪問者を確認できません。そして、鍵がかかる部屋は主寝室と、トイレのみ。慌てて弟も主寝室に呼び、鍵をしっかりかけました。「危ない目にあわないためにも、玄関は開けない方が良い」という結論に至りました。

 その時、ふと疑問が浮かんだのです。「玄関のドア、ちゃんと鍵かかってるっけ?」と。日本の鍵のかけ方と違うこともあり、今本当にきちんとロックされているか、自信がありませんでした。アパートは、古いタイプの鍵のついた家で、家の中にいる時は、玄関の内側に鍵をさして回しておかないとロックができないという、変わったつくりでした。内側に鍵をさして満足してしまい、結局鍵がかかっていないということが何度かあり、今この危機的状況において、本当に鍵がかかっているか確信がもてなかったのです。

 結局、夫と私の二人で、確認のため玄関に向かうことにして、弟と二歳の息子は寝室で鍵をかけて待っていてもらいました。携帯電話もオンにして、弟に万が一の際は警察に電話をするよう伝えました。二人で静かに玄関に向かって行き、玄関のノブを回してガチャっと確認した瞬間、「ビー」とまた呼び鈴が鳴りました。招かざる客は、私達が息をひそめて寝室にいた時間や、相談していた時間も、ずっと玄関で待っていたようです。「うわぁ」ほぼ声にならないような悲鳴をあげながら、大慌てで夫と二人で寝室に戻りました。

 4人で主寝室にこもり、私は朝まで恐怖でほとんど眠れませんでした。私達の主寝室にはかなり高い位置に横長の窓が2つあったので、「この窓を割って、誰かが入ってきたらどうしよう?」「リビングの窓を割って、入ってきたらどうしよう?」とずっと心配していました。

 幸いなことに、真夜中の訪問者は諦めて帰ってくれたようでした。そして、それ以降不審な人が来ることもなく、平穏な日々が戻りました。

 後から話を聞くと、トラブルメーカー大家さんは、住民ともかなりもめていたようで、仲が悪かったそうでした。あの真夜中の訪問者がだれだったのかは、今となっても分かりませんが、実害がなくて本当に良かったです。

 皆さんも不測の事態に備えて、緊急の時にかける電話番号を調べておくと良いと思います。使わないにこしたことはありませんが、パニックになってからだと、検索する余裕もなくなると思います。海外では特に警戒心を高めて行動すること、万一に備えておくことが、命を守ることに繋がると思います。

 長くなりましたが、これにて「イギリスのトラブルメーカー大家さんシリーズ」のお話は終わりです。次回は別の国の体験についてお話しますね。


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