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年越し前のお正月料理のおはなし。

今年もあと数時間となりました。
大人になり、お正月の文化や風習をあらためて知ることで、新年を迎える支度が楽しくなりような気がします。

ところで、皆さんの地域ではおせちは年末に食べますか?
お正月に食べますか?

え?と思われた方もおられるのでは。
実は、地域によっておせちを食べる日って違うようです。

お祝いの意味がたくさん込められたおせちはお正月の楽しみですね

もともとおせちは、大晦日に食べるのが一般的だったとか。一年を無事に過ごし、新年を迎えるお祝いとして食べられていたようですね。

しかし江戸時代後期以降は、新年の来客のおもてなしとして、元旦におせちを食べるように。しかし情報の伝達速度が遅かった時代、江戸や京都で生まれた新しい文化が遠方に浸透するまでには時間がかかったようです。今でも北海道や東北、北陸、甲信越などの地域では、その風習が継承され、大晦日におせちを食べる家庭も少なくありません。東北のお取引先さんとお話すると「大晦日におせちを食べるよ」と言われびっくりしたこともありました。

おせち。知れば知るほど面白いですよ。せっかくの年の瀬ですから、もう少しおせちの話を続けます。

おせちの起源

そもそも、おせちは古くから受け継がれている文化です。平安時代になると宮中では、元旦や五節句に「節会(せちえ)」という宴を催し、「御節供(おせちく)」と呼ばれる食べ物が振舞われていました。

この「御節供」がおせちの語源とされ、当時は新年を迎える大晦日や季節の節目の行事食だったと考えられています。年神様へ五穀豊穣、家内安全などを祈って、縁起の良い海の幸、山の幸を詰めていただく。当時は貴族や一部の層だけの風習だったのですね。

それが江戸時代になると、幕府が節日(1月1日、1月7日、3月3日、 5月5日、7月7日、9月9日)を公式行事として制定し、庶民にも節句が浸透。その後、最も大切な年始めのお正月のみ豪華に祝うようになったようです。

食の世界にも桃の節句、端午の節句など古くからの習わしが続いています

おせちを重箱に詰めるようになったのも江戸時代から。重箱に詰めることで、正月の来客へのもてなしやすさや、保存性も高まったのですね。

おせちは「福を重ねる」という意味を込めて重箱に詰めるのが定番。正式なおせちは五段重のようですが、今は多くても三段重が一般的でしょう。

わたし、おせちのこのどの段に何が入っているかを見るのがとても好きなのです(笑)。「この段にはこの食べ物を詰める」というルールを振り返りながら、食べ物ごとの意味も見ていくのも、おせちの楽しみ方のひとつではないでしょうか。

一の重

一の重は重箱の一番上の段。お屠蘇(とそ)を楽しむために酒のつまみになるような「祝い肴」と甘めの前菜となる「口取り」です。

黒豆(マメに働く)、数の子(子孫繁栄を願う)、田作り(五穀豊穣)、たたきごぼう(長く根を張ることから、長く安泰な人生)、紅白かまぼこ
めでたい日の出)、伊達巻(巻物のような形から、知識の発展)、栗きんとん(金色の財産のような見た目から、豊かな年を願う)

関東では「黒豆・田作り・数の子」、関西では「黒豆もしくは田作り・数の子・たたきごぼう」が一般的な祝い肴とされています。ここでも地域性出てますね。

おせちにはかかせない食材ばかり

二の重

二の重は、縁起のよい海の幸の「焼き物」や、口直しの「酢の物」

なます(紅白の水引を意味し、平和を願う)、海老(腰が曲がっていることから、長寿を象徴)、ぶり(立身出世)、鯛(語呂合わせで「めでたい」)

酢を使った食材は保存にぴったり。ご家庭の味が出ますね

三の重

三の重は重箱の一番下の段を指し、山の幸の「煮物」

里芋(子芋を数多く持つことから、子孫繁栄)、れんこん(将来の見通しが立つ)、くわい(大きな芽を持つことから、立身出世)

こういった煮しめにも実は地域性がかなり出てきます

年神さまにお供えするお供物料理ですから、縁起の良いものや願いが込められている食べ物が多く、めでたさが重なるように重箱に入れていく。

うーん、、、、日本の心の豊かさを感じずにはいられません!

年神さまにお供えしたものを家族で分かち合いながらいただき、一年の健康と幸せを願うのがおせち料理なのですよね。

つけもの屋にとってもおせちの準備は一年の中でも慌しい時期です。
普段は売ることのない、数の子や黒豆、田作り、れんこん、たたきごぼうといった一見つけものと関係のない食材も取り扱うからです。

特に数の子の下処理は大変。年末になると色んな食材が飛び交います

大晦日には年越しそば

そして、お正月準備といえば、私たちが扱う中で忘れてはならないのが、「年越しそば」です。

お正月の準備がすべて整ったらゆっくりと家族で一年最後の日12月31日を迎えます。大晦日に年越しそばを食べるのにもちゃんと意味があります。

もともと江戸時代の商家では忙しい晦日(毎月の最後の日)には、手早く簡単に食事を済ますためにそばを食べる習慣があったようで、これが大晦日の年越しそばの由来という説があります。

おそばに添える具材も気になるところです

また、そばは細く長いことから「長寿」や「健康」「家運長命」などへの願いも込められていますし、そばはうどんなどよりも切れやすい特徴があるので「一年の不運や災いを断ち切る」という意味もあるようです。

そして近年は、「年越しそば」ならぬ、「年明けうどん」も広く知られてきた気がします。うどんに縁起物の赤い食材を添え、1月15日までに食べる習慣です。

うどんは、そばとは逆に太くて長いことから、古来より長寿を祈る縁起物として捉えられています。

添える赤い食材は、梅干しやにんじんやイクラなど、具材は自由なので、こちらもつけもの屋としての提案の場ともなっています。梅干しやキムチも多いですよ。おもしろいですよね。

梅干しを添えることが多いですが、キムチや明太子も人気です

新しい年を迎えられる喜び、良い年であるようにと願いを込めたものがたくさん表現されるお正月。

食べ物から文化や風習を知ることで、新年の支度を楽しめたらいいですね。どうぞ、良い年越しをお過ごしください。


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