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[AI絵本]えがお さきわうところ 8/x

            ↑ からの つづき

 理想郷を目指して出発した仮想旅行。途中で「えがお」が手がかりになると気づいたのだが、いざ「笑顔」を目印にすると今度は演技の「笑顔」を引っかけてしまった。もちろん求めているものではなかった。最初に感激した「笑顔」は、あらためて見直すと、いずれも障がい者や患者のようだった。
 そこで、いったん「福祉施設+笑顔」に軌道修正。なんとか演技の「笑顔」から脱することができたのだが、そこでハタと考え込んでしまった。それだと理想の地は福祉施設ということになってしまうからだ。
 しかし福祉施設はオレの古巣だった。福祉施設が理想の地だとはとても思えなかった。さて、どうしたものか……。
 リアルの旅行ならとりあえず足の向くままに進んでみることも出来るが、AIを使っての仮想旅行だとそんなわけにはいかない。AIに何かしら言葉を打ち込まないと進みようがない。こういう時の言葉選びは難しい。

 そんなある日「お笑い」の話を耳にした。落語や漫才ではなくその構造分析のような話だ。
 古典的な「お笑い」は芸人がバカ丸出しのことをやり、観客はそんな芸人をバカにすることでいい気持ちになっていたが、新しい「お笑い」だと芸人はバカにされない。それどころか教祖的だったりする…… 彼らの「お笑い」はどこが違うのか? 観客は何を愉しむようになったのか? というような内容だ。
 お笑いに疎いのでよくわからなかったが、「種類」がヒントになった。「笑顔」にも種類があるとを思い出させてもらえた。
 高齢者施設で長くレクを担当し、愛想笑いなのか本当の笑いなのかということには細心の注意を払ってきたつもりだったが、そのことをすっかり忘れていた。では、オレの求めているのはどんな「笑顔」か?

 子供じみた云い方で恥ずかしいが、たとえば頑張った結果の「えがお」だ。「頑張る」というのは最近、流行らないので「充実」と言い換えた方が良さそうだが、やりがいのあることをやって節目節目で自然に出てくる「えがお」が、オレの求めているものだと思う。

 となると、求めていた理想の場所とは「やりがいのあることをやってる、充実した人たちのいる場所」ということになる。
 どうやらそういう場所で自分もそうなりたい、というのがオレの願望らしい。

 いい歳をして今さら? と突っ込まれそうだが、実は若い頃にも同じことを考えていた。オレには学校を辞めて職人の世界に飛び込んだ「前科」があった。「前科」というのは、職人を「辞めた」ことだ。やむを得ない事情はあったのだが、その後、復帰しなかったのは筋の通らないことだった。
 すっかり忘れていたが、若い頃にイメージした理想と今の理想が変わっていないというのが何ともしょっぱい。オレの「青い鳥」は未知の存在ではなく、かつての恋人のようなものかもしれない。

 何はともあれ、新しいキーワードは手に入った。

 針路は「えがお+職人」!

つづく


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