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[幻聴ラヂヲ]ソコ掘ルナ!わんわん[SF短編]

 たいていのお城には城外への秘密の抜け穴があるそう。
 真偽のほどは不明。工事に関わった者はすべて口封じ……。

 今回、聞こえてきたのはそんなお話。どこかの星では今もそんなことがあるようです。何分、この星のことでさえよくわからない底辺なので、どこを聴いてるんだということになりそうですが……

 その星ではキンユーキカンとセーフが密接につながっていて、セキュリティもその両方にまたがっているとか。
 そのシステムがいかに巨大かつ複雑なのかは、バカでも想像がつきます。また絶対に「穴」があってはならないわけですが、点検で「穴」を見つけるのがものすごく大変。

 そこで超絶技術の持ち主が現れると、すぐにスカウト。不思議なもので規格外の天才は、意外なところから現れるんだとか。硬直した組織ならそんな馬の骨を雇ったりしませんが、そこは弱肉強食の頂点組織、徹底した実力本位。トロいことやってると負けちゃいますから。

 ここまでのところ、よろしいでしょうか?

 なにしろバカなんで、どこで間違えるかまったく自信がありません。というか、どこかで間違えることには自信があります! 皆さん、気を抜かずにお聞き下さい。

 ところがその天才さんに待ち受けていた運命は……

 最初は良かったんですよ。報酬は高額、仕事の内容は最高級にやりがいのあるもの。燃えに燃えて仕事に励みました。天才がやる気になるんですから鬼に金棒、それはそれは目覚ましい成果を上げたんだとか。

 でも、秘密を知り過ぎてしまった……。

 彼の役目はあくまでセキュリティの「穴」を見つけることだったんですけどね。知らず知らずのうちに自分の「○穴」を掘っていたという。

 いつもなら、そんなオチで締めくくるところですが、今回の「幻聴ラヂヲ」は、ちょっと度を超していました。その星の空前の大事件につながっていったからです。

 悲しいかなバカなわたしにはその詳細が理解できなかったのですが、アウトラインだけなぞっておきます。

 天才さんの超絶技術を応用すれば、セキュリティの「穴」を見つけるだけでなく作り出すことも出来た。どうやって? そこが難しかったんですが、ものすごく端折っていえばこういうことではないかと。

 彼が「穴」を見つけると、組織の専門家が原因を調べます。どうして「穴」が出来たかです。で、その後「穴」を塞ぐわけです。そこまでやるとわかっちゃうわけですよ。「穴」の作り方が。
 そうするとそれは侵入者の破壊工作ではなく、バグです。不可抗力で出来た「穴」。であれば、いつでも侵入可能で破壊の痕跡も残りません。つまり、その手を使えばやりたい放題出来ると。
 悪代官とエチゴ屋は狂喜しました。彼らがすごいのはチャンスを見逃さないこと。しかも、遠慮なく徹底的にやる!
 彼らはやりました。忠臣蔵も真っ青な空前の大興行、それを劇場の外でやった。ですから、それ以降の世界は劇場なんですって。

 そこまで闇の深い星もあるんですねえ。銀河の中心には巨大なブラックホールがあると云いますが、彼らの社会の中心も「黒い穴」。上昇志向の強い人はちょっと注意したほうがいいかも。気づいた時には逃れることが出来ませんから…… ま、よその星の話ですけどね!

 以上、「ソコ掘ルナ!わんわん」の一席でした~


こっちは:幻覚…… いや乱視かな。歪んで見えるや……


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