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善玉菌・悪玉菌を増やす方法"腸内細菌の秘密"

前回に続いて、腸内細菌のお話をしていきましょう。

腸内細菌には大きく分けて3つのタイプがあり、腸内に多い順から日和見菌(ひよりみきん)、善玉菌、悪玉菌となります。

一番多い日和見菌が、腸内細菌の約70%を占めていて約20%が善玉菌、残り約10%が悪玉菌という状態が腸内環境としては良い状態です。

悪玉菌は悪という名前が付いていますが、これが腸内にまったくないというのもあまり良くないようで、ちょっと(10%ほど)であれば役に立つそうです。バランスが重要ということですね。

腸内の細菌の種類と数の研究

実際に、腸内にどのくらい細菌がいるかというのは研究者によって推定値に違いがあります。

少ない人で1000種類、多い人だと30000種類と主張に大きな差があるのです。なぜこれほどに違いがあるのかというと、腸内細菌は培養することが難しいという問題があるからです。

昔は、腸内細菌=大腸菌ぐらいしか分かっておらず、そんなにたくさんの種類がいるなんて誰も思っていませんでした。

もちろん、腸内細菌の総数がどのぐらいかというのも、昔は「何千億ぐらいではないか?」と言われていましたが、最近では「100兆ぐらいいるんじゃないか?」と言われています。(中には1000兆ぐらいいると言う研究者もいる)

現状、腸内細菌の種類と数は、多いというのは確かかもしれませんが、本当のところはまだよく分かっていないという状況です。

体は腸内細菌の乗り物

人間の細胞は、以前は60兆と言われていましたが、最近は37兆2000億個というのが定説となっています。

体細胞が37兆2000億個で腸内細菌が100兆個ですから、腸内細菌は体細胞の約2.7倍もあるということになります。

UKの生物学者クリントン・リチャード・ドーキンス氏は、「生物は遺伝子の乗り物だ」と言いましたが、実際は、ヒトゲノムのDNAの文字列(塩基)は32億文字列(塩基対)で、そのうちタンパク質の設計図の部分(遺伝子と呼んでいる部分)は約23000個です。

実際は、ヒトゲノムよりも腸内細菌のDNAの方がたくさんありますから、「動物は腸内細菌の乗り物だ」と考えるのが妥当なのかもしれません。

善玉菌の種類と効果

ビフィズス菌

どなたでもご存知の善玉菌と言えばビフィズス菌です。この細菌は悪玉菌を抑制して腸内で生成される腸内腐敗物質(アンモニア、インドール)を減少させ、結果的に下痢や便秘を改善する整腸作用があります。

ビフィズス菌はさらに、免疫を高める効果があり、感染の防御、発ガンの抑制、アレルギー(花粉症)の改善など様々な効果があります。

アッカーマンシア・ムシニフィラ菌

善玉菌の中でも特に良いもので、アッカーマンシア・ムシニフィラという細菌があります。

この細菌は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)に対して治療効果があるのではないか?と研究されおり、さらに過敏性腸症候群の予防にもなると言われています。

過敏性腸症候群は、かなりきつい症状が出る疾患です。寝ている時は良いですが、起きている時はしょっちゅうトイレに駆け込まないとならないという症状が出るのです。

おそらくそれは、交換神経と副交換神経の作用が関係しているのだと考えられますが、腸内にアッカーマンシア・ムシニフィラが増加すれば、その症状を抑える治療効果が期待できそうです。

ウェルシュ菌

前回の記事でクロストリジウム・ディフィシルのお話をしましたが、同じクロストリジウムの仲間でウェルシュ菌というものがあります。

ウェルシュ菌は、野菜や肉、魚などを使った煮込み料理(カレー、シチュー、スープ、麺つゆなど)を放置しておくと増えていき、感染すると腹痛や下痢、便秘、強い悪臭のするオナラが出たりします。

ウェルシュ菌は、料理で感染しなくても、もともと腸内に結構な数が居着いていますので、増やさないように気をつけましょう。

善玉菌・悪玉菌を増やす方法

腸内環境を変化させるのはなかなか難しいと言われています。なぜなら腸内には、外から入ってきた細菌をブロックする働きがあるからです。

腸の中には細菌叢(さいきんそう)というのがあって、それを腸内フローラ(Flora)と呼んでいます。

Web検索をすると、"フローラ=お花畑"と書いてあったり、腸内を顕微鏡で見ると細菌がたくさんいて、それがお花畑みたいだからフローラと記載している本まであります。

しかし、それはおそらく誤りで、フローラというのはもともと植物相(植物のすべて)のことを言い、腸内フローラと言えば、"腸内のすべて(腸内細菌叢)"という意味になります。

ちなみに動物相を"ファウナ"と言い、生物の多様性を表現するのに"ファウナ&フローラ"という言葉を使うことがあります。

「生きたまま腸に届く」というキャッチコピーで、乳酸菌やビフィズス菌の商品がたくさんありますが、もし善玉菌が生きたまま腸の中に届いても腸内のブロック作用があるので、新しい細菌が居着くことは難しいのです。

新しい細菌を迎え入れるのが難しいのなら、すでに腸の中に居る善玉菌にエサを与えて増やしていくという方法があります。

善玉菌の好物は"オリゴ糖"なので、オリゴ糖がたくさん入っている食品を食べると良いと思います。

オリゴ糖を多く含む食品
・豆類
・ネギ類
・アスパラ
・ゴボウ
・ブロッコリー
・カリフラワー
・アボカド
・バナナ
※ネギ類(香味野菜)は、生で食べ過ぎると胃を痛めることがありますのでご注意ください。

面白いことに、善玉菌が増えてくると、脳に「オリゴ糖がたくさん入っているような食品が食べたい」と命令をするようです。

反対に悪玉菌の好物は肉類や砂糖です。肉や砂糖が好きな人で、便秘や下痢をしやすい人は少し注意が必要かもしれません。もちろん、悪玉菌も増えてくると、脳に「肉や砂糖をよこせー」と命令をするのです。

このように、腸の中はとても複雑になっていますが、興味深い研究がどんどん進んでいます。

───次回に続く

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