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【トラウマインフォームドセラピー】を理解する 前編

トラウマインフォームドセラピー(Trauma-Informed Therapy)は、クライアントに対して「どうしたのですか?」と尋ねるのではなく、「どのような事が起きたのですか?」と尋ねます。

この「どうしたのか?」と、「どのような事が起きたのか?」という問いの違いは、トラウマを持つ人を非難する行為と、トラウマ被害の生存者として扱うことほど大きな差があります。


トラウマインフォームドセラピーは、特定のモダリティ(認識のしかた、感じかた、受け取りかた、捉えかた)で判断するのではなく、知らぬ間に受けているトラウマ記憶からの大きな影響や、トラウマと認識されていない状況を再認識するための基本的な考え方にもなります。

この記事では、トラウマによる影響からの回復に役立つエビデンスや、治療・対処法などをお伝えしていきます。

トラウマとは?

その人が強力に恐ろしいと感じた出来事に対する否定的で感情的な反応を意味します。

トラウマのきっかけとして一般的にイメージされるのは、性的虐待、大きなケガ、病気、暴力、その他の虐待などがあります。

トラウマによる心身への影響としては、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が挙げられます。さらに、トラウマ的な出来事を繰り返し受けたり、思い起こし続けると、複雑性PTSD(CPTSD)となることもあります。

研究では、アメリカ人口の約50〜60%の人がトラウマを経験していることを示唆しています。

トラウマとPTSD

トラウマは、心身の健康を害するリスクの増加と関連しています。

トラウマを受けた人の全てが心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症するわけではありませんが、アメリカ人の約8%(2400万人)が人生の中でPTSDを持つと推定されています。

日本では、人口の1.1~1.6%(200万人)となっていますが、私の印象では、男女差や年齢差、世代の違い、環境などの要因により、その比率や人口は1.1~1.6%をゆうに超えているという実感があります。

現状、良好な治療効果をあげられるセラピストの人数や、治療を行なう場所などの数に限りがあるなどの問題によって、トラウマや心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療を受けることができなかったり、治療待ちの状況が続いています。これは、アメリカも日本も同じです。

本来、トラウマを経験した人は直ちに専門的な治療を受けることが、PTSDからの早期回復にとって重要なポイントとなるのは言うまでもありません。

トラウマインフォームドセラピーの基礎

トラウマインフォームドセラピーでは、対象者に"安全性や思いやりなどの配慮が必要なレベルのトラウマを持っている"と想定してアプローチをおこないます。

セラピストが想定する安全性や思いやりなどのレベルは、対象者の文化、歴史、ジェンダーの問題と影響、それらが対象者にどのように影響するのかをしっかりと認識することから始まります。

また、トラウマインフォームドセラピーは、セッションなどで対象者のトラウマ記憶を再確認する前に、安全と信頼感を確立するよう尽力します。つまり、対象者との強い協力関係を築くことがトラウマインフォームドセラピーの基礎となるのです。

重要なのは、トラウマを持っている対象者の声、治療により何を望み必要とするか、対象者の自由意志を尊重するということです。

トラウマインフォームドセラピーの治療方針

トラウマは、主に人間関係によって引き起こされます。特に、人は信頼をしてる相手から傷つけられると、自分自身と社会に対する感覚が否定的なものへと変化していくのです。

トラウマインフォームドセラピーでは、クライアントの状況や状態をよく認識し、反発などを恐れることなく感情表現ができる安全な空間を提供することで、クライアントが再びトラウマを引き起こさぬよう働きかけます。

トラウマ治療は、クライアントの感情や声にしっかりと耳を傾け、より最適な検証をする方法を理解している専門家によるケアによって効果を発揮します。

トラウマインフォームドセラピーは、単に優しい、丁寧というだけではなく、クライアントと安全で強力な関係性を築き、回復をサポートするためのエビデンスベースの治療法をおこなうものなのです。

次回は、【トラウマインフォームドセラピー】を理解する 後編をご紹介していきます。

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