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コインランドリー記念日

ワールドカップで悲願の優勝を果たしたアルゼンチン。アルゼンチン政府がそれを祝って、2日後の12月20日を急遽、国民の祝日にすると発表した。

国民の祝日は「急遽」できるものなのかと驚いた。
こんなに素敵な「急遽」を初めて知った。

これから先、とんでもなく嬉しいことがあった翌々日は、
「急遽、休みにします」と言おうかなと思った。
「こいつやる気ないな」と思われるイメージがすぐに湧いたのでやめた。

先日、年末の大掃除がてら、カーテンやベッドシーツをまとめて洗おうと、近所にできたコインランドリーに行ってきた。

コインランドリーなんて随分久しぶりのことだ。

行ってみたら度肝を抜かれた。
羽毛布団が洗える洗濯乾燥機があった。

しかも洗剤も自動投入される。なんて便利なのだ。昔、下北沢のコインランドリーで、50円くらいの洗剤買って投入したのが懐かしい。

おまけにスニーカー専用の洗濯乾燥機まで。

なんだ、このワクワク感は。
これまでコインランドリーにワクワク感なんてあっただろうか。

おまけに支払いも端末みたいなところで遠隔操作できる。

洗剤の種類まで選べる。

これだけ感動すると、もはや金額が高いとか低いとかの感覚がなくなってくる。ディズニーランドに行ったら金銭感覚がなくなるのと同じだ。まさかコインランドリーで魔法をかけられるとは。

おまけにアプリも登録しておけばこんな具合に、
稼働状況がわかってとても便利だ。

洗濯しようと思ってコインランドリーに行った時に、全部使用中だったときの徒労感は半端じゃない。終わっても、誰かがすぐに取りにくるとも限らない。長居できる場所もない。古びたベンチか丸椅子に、誰かが読みふるした漫画・鬼平犯科帳が置いてあるのが関の山だ。ここはその哀しみリスクを少しは軽減してくれる。

洗濯乾燥をしている間、近くにあるLUUPも勢いで登録して初めて試乗した。1mmも興味のなかった電動キックボードも、コインランドリーの魔法にかかった僕には「次に味わうべき新たなアトラクション」に見えた。

1時間ほど試乗して戻ってくると、洗濯乾燥機はすべての工程を終えて、クールダウンに入ろうとしているところだった。ハーフタイムもなく、1時間以上フル出場(稼働)していたのだ。十分にクールダウンしてほしい。

以前、星野源がテレビに出ていた時、
マツコさんから「家に帰って何をしているんですか?」と尋ねられ、星野さんは「ドラム洗濯機がグルグル回るのをぼーっと見てます」と答え、マツコさんも「わかる。あれずっと見ちゃうのよ」と妙に納得していた。

今日初めてその気持ちがわかった。
いくらでも見ていられた。

今日をコインランドリー記念日にしようと思った。

急遽、僕だけの祝日にするのだ。日常の中のワンダーランドに出会う気持ちを大切にするために。もはや「こいつやる気ないな」と思われたって構わない。

・・・でも、次のコインランドリー記念日は2023年の12月か・・・。今たとえGoogleカレンダーに登録したとしても、1年後には完全に忘れて、普通に仕事の予定を上からかぶせているイメージがすぐに湧いたのでやめた。

舞浜駅でJR京葉線に乗り込んだときと同じように、魔法が解けるのはいつだって一瞬だ。

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