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アメリカ西海岸、寝台列車の旅

ポートランドの早朝、フォレストパークを走りおえると、街の向こうにそびえ立マウントフッドに目を奪われた。

わずかばかりの滞在だったが、ポートランドへの名残惜しさより、今日、人生初めて寝台列車に乗る期待が上回る。

僕はユニオンステーションに向かった。

アムトラック。学生の頃からずっと「いつか乗ってみたい」と思ってきた鉄道だ。

手書きの乗車券が旅情を誘う。そして待合室でフリードリンクを飲みながら待つこと30分。

ついにアナウンスが流れてホームに降り立つと、巨大な鉄板を貼り合わせような列車が停まっていた。アムトラックだ!

無骨さがいい。未知なる世界へ誘う銀河鉄道のようだ。僕の銀河鉄道は夜ではなく午後2時22分に出発する。

最後部車両に乗り込み、階段を登る。
寝台個室専用車両だ。

予約したroom D へと入る。

めっちゃいい感じじゃないか。
この個室で1泊過ごせると思うとたまらない。

入り口には手洗い場もあり、この裏には専用のトイレとシャワールームもある。

アメニティも十分だ。

シートの上はベッドにもなる。

元々予約していた席は、下記のような小さなRoomette (ルーメット)という席だった。

これも決して悪くない。ただアメリカ入国審査の手続きが遅れて一度キャンセルしていたのでもうここの予約がとれず、あえなく寝台個室になってしまったのだ。

寝台個室の金額は900ドルを超えたが、部屋に入った瞬間、全然良いと思った。お金というのは一生ものの価値ある体験を味わうためにあるのだ。

そして2024年にアメリカの旅を楽しむ秘訣は「円換算しない」ことである。(後日クレジット明細をみて後悔しない注意は必要だ)

寝台個室だけでなく、こんなカフェスペースも自由に使えて、スタバのコーヒーも飲み放題。アメリカ西海岸の広大な自然の景色を見ながら飲む一杯は最高だ。

そして夕方になると食事の準備ができたとアナウンスが入る。「お客様同士でフレンドリーな時間をお過ごしください」的なアナウンスも流れる。

そう、知らなかったのだが、来た人順でどんどん同じテーブルに座ることになるのだ。車掌さんの采配でマッチングが行われていく。「いや、婚活列車かよ」とツッコミを入れたくなるが、多くが老夫婦とか高齢の方が多かったからそういう空気でもない。

実際、僕も年配のマダムと一緒に食事をした。学校で生徒たちの管理をやっている人でとても社交的な人だったので話しやすかった。これこそ1番の英会話レッスンだと思った。食事はメニューからメインとサイドを選ぶのだが、僕はこんな感じだった。

アムトラック名物のステーキは美味だった。
そしてエビの天ぷらも頼んでみた。

これは・・・なんだ・・・?!味は・・・・日本の天ぷらが恋しい。それでもマダムと一緒に食事を楽しむ。

寝台個室を選ぶと食事も飲み物もすべてフリーだった。

日も暮れて寝床を準備する。
ナイトライトモードにもできる。

2段ベッドの上で寝ようとしたら、車掌さんがソファ部分を広げて、下もベッドにしてくれた。

内側から鍵をかけてカーテンを閉めればもうそこは完全に1人の空間だ。

月夜を見ながらアメリカ西海岸を南下していく。
時折、ぽつんと家の明かりが見えて、人の気配を感じる。
流れる景色をみながらぼんやりと物思いにふける。
ああ、こういう旅をずっとしたかった。

朝起きると東のほうに朝日が差し込む。

もう言葉では表せないほどの景色がずっと続く。

朝は日本で格闘技を習っていたという老夫婦とのモーニングを楽しむ。旦那さんがユーモアたっぷりで、奥さんがそこにツッコミをいれながら僕をフォローしてくれる。とても素敵な夫婦のおかげで笑いの絶えない朝となった。

僕の寝台個室は最後部車両だったので、後ろからの流れる景色も良かった。

そしていよいよ朝の8時を過ぎて、エメリービル駅を降り、バスに乗り換えてサンフランシスコに向かう。

e-チケット

時間通り8時29分に電車が駅に到着し、僕は荷物をもって降りた。するとここで、まさかのハプニング。

駅のバス停に誰もいない。慌てて駅員さんにたずねると「ここはサクラメント駅よ、エメリービルはまだ先の駅よ」と言われる。

アムトラック路線図

なんということだ。やってしまった。
すると、まだホームにアムトラックが停まっている。

人生史上、最高スピードで駅構内をかけ走ったのは言うまでもない。無事に間に合った。

車掌さんに運行状況を教えてもらうと、なんと「2時間遅れ」であった。たまたま8時29分にエメリービル駅ではなく2つ前のサクラメント駅に着いたのだ。こんなややこしいことがあるだろうか。(いや、しっかり車内アナウンスを聴くべきだった)

だが2時間遅延したことよりも、「あと2時間アムトラックに乗れる」という幸福度が優った。カリフォルニアの景色を眺めながらりんごを食べた。

次はアップルの本社、アップルパークへ向かう。

(つづく)

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