「独立するうえで一番大切なものは何だと思う?」
僕が大手人材会社で働いていた頃、当時お世話になっていた役員に独立話を相談したとき、そう言われた。
当時の僕は独立するえで一番大事なのは、
「情熱」や「才能」だと思っていた。
けど、役員の答えは違った。
「情熱や才能より大事なものがある。それはお客さんだよ」
その言葉を聞いた時、思わずハッとした。
そしてこう付け加えた。
「どんなに才能や情熱があってもお客さんがいなかったら仕事は続かない。俺は目をつむっておいてやるから、今のうちにファンを増やせ。お客さんさえいればいつだって独立できる」
当時は副業も認められていなかった時代。
もしもバレてしまったら他の社員に示しがつかない。
リスクを背負ってまで応援してくれた役員。
僕にとってかけがえのない恩師であり、
今でもよく相談に乗っていただいているメンターでもある。
今日、その役員が引退されるということで、大規模な送別会が行われた。
そして、その数時間前、僕はちょうど新しい事務所を
移転するための準備作業をしていた。
赤坂駅を降りてすぐの場所。再開発が行われている「赤坂エンタテイメントシティ」付近にある。
新しい門出を迎えようとするなかで、
思いがけない連絡が送別会の幹事の方からやってきた。
「送別会の最後のスピーチ、お前にやってほしいと指名がきたよ」
もう辞めて10年以上経つのに、現職の社員もたくさん参加されるのに、数少ないスピーチの中で、しかも僕をトリで指名してくれたことが驚きとともに、嬉しかった。
そして、僕は冒頭のエピソードをはじめ、
恩師から教わったことをお話しさせてもらった。
あの時の教えがあったからこそ、
僕の独立・起業は無謀な挑戦ではなく、
地道で堅実なものになった。
そしてスピーチの最後に、恩師の前で報告した。
「10年近く下北沢の餃子の王将の上でやってきましたが、
今年の4月からは赤坂にオフィスを移転します!」
会場から笑いと拍手が起きた。
恩師の前で、みんなの前で報告できてよかった。
恩師はとても驚いた様子で喜んでくれた。
今や従業員6万人を超える会社の役員を務め、
43年間、人材業界に貢献してきたその姿に心から感服する思いである。本当におつかれさまでした。
最後にその役員が僕に教えてくれた
言葉を添えさせていただきます。
「志は高くある必要はありません。
ただし強くなければいけません。
自分がやりたいことではなく、
自分にできることでしか
世の中の役に立つことはできないから、
できることを増やしてください」
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