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腐女子が見る呪術廻戦 アニメ「渋谷事変 開門」感想

注意:単行本までのネタバレを含みます。


最強の五条悟の最大の弱点

 
 五条悟が獄門疆に封印された。
 私は単行本や本誌を読んでいるので、アニメ2期が始まった時からこうなることはわかっていた。

 それでも、作画の美しさ、演出の素晴らしさと、中村悠一さんの声と演技によって五条先生がめちゃくちゃかっこよくなっていて痺れた。

 圧倒的な強さで呪霊や改造人間を薙ぎ払う五条を獄門疆の前に足止めさせたのは、彼にとっての唯一の弱点ともいうべき夏油傑の存在だった。

 五条が無下限の術式を解き、基礎的な呪力操作と体術だけで特級呪霊・花御に致命傷を与えるのを見て、漏瑚は驚愕する。

≪五条悟、逆に貴様は何を持ち得ないのか!!≫

 漏瑚がこう考えるのは、呪霊だからだ。

 もと人間の羂索は、一体いつからどこで五条のことを観察していたのかわからないが、五条悟の弱みを正しく理解している。

 五条悟の持ち得ないもの、それは掛け値なしの本音を語って心から理解し合い、喜びや苦しみを分かちえる相手、かつての親友・夏油傑だ。

 羂索が、五条悟に隙を作らせるために夏油傑の亡骸を利用したのは、実に効果的な作戦だった。

 この場に現れたのが夏油傑でなければ、五条悟はあれほど動揺し、獄門疆に封印されることはなかっただろう。

「や、悟」と呼びかける櫻井孝弘さんの声は、かつて高専時代に傑が悟の名を呼んでいた時のように、愛情がこもっていて甘く優しい。

 自分が殺したはずの夏油の姿を見て、五条は呆然として立ち尽くす。

 五条が我を忘れるほど驚くのは、夏油が離反したことを夜蛾センに聞かされた時とこの場面くらいだ。
 
 「久しいね」以降のセリフは羂索のものだから、櫻井さんが発する声にはもはや悟への親愛の情はなく、冷たい。

 視聴者にこの変化がはっきりわかるように演技をする櫻井さんはさすがだった。

本当の五条悟


 五条悟と夏油傑の関係性は、「呪術廻戦」という物語の奥底を流れ続ける旋律なのだなと改めて思う。

 本編が生まれる前の作品である「呪術廻戦0」のラスボスは夏油傑であり、クライマックスとなる乙骨との戦闘後、五条が夏油にとどめを刺す。

 この時点ではまだ、五条と夏油がかつて高専時代の友人だったが今は敵対関係にあることしかわからない。

 映画の中で、夏油が高専に現れて宣戦布告をした後、五条は一人、夕焼けの射しこむ教室の椅子に座って過去を回想する。
 夏油と過ごした青春の日々を想い出す五条は寂しそうだ。
 それでも、教室を去る時の五条の後姿には、夏油と対決する覚悟を感じた。

 たった一人の親友とあんな形で別れてしまって、最後は自分の手でとどめを刺して、五条が傷つかないはずがない。

 五条がもしも孤独を感じないほど強いなら、「一人は寂しいよ?」と乙骨に言うだろうか。

 最強で孤高の五条は、一人の寂しさを知っている。
 
 でも、五条には誰の助けも借りずに孤独や寂しさを乗り越える強さがあって、気安く心の傷跡を見せることはない。

 いつも飄々として、人を見下したようなところがあって、「軽薄、個人主義」と七海に評される通り、傍若無人で時に不真面目ささえ感じさせる。

 大人になった五条先生は、昔の傑の助言を受け入れて一人称を「僕」に変え、奔放さを少しは自制しているが、一人称「俺」で自らの力を思う存分発揮する強気で感情的な悟こそ、五条悟の素の姿だ。

 目の前の夏油が偽物だと魂で見抜いた五条は、獄門疆に封印される直前のわずかな時間だけ「俺」に戻る。
 怒りを爆発させた悟の姿に、私は胸を打たれた。
 
 自分の大切な親友の体を勝手に利用されて、悟は心底怒っている。
 現代最強の呪術師を最大のピンチに陥れる原因となったのは、傑と過ごした3年間の青い春の記憶だった。
 五条悟にとって夏油傑は、それほどかけがえのない相手だったのだ。

渋谷事変の先にあるもの


 最強の五条悟が封じられ、この先も虎杖達の戦いは続いていく。
 渋谷事変は今後、何人かの仲間を失うつらい展開になると私はすでに知っている。
 しかし、本誌では更なる地獄が用意されているのだ。
 果たして「呪術廻戦」の結末はどうなるのだろうか。
 最終回まで私のメンタルが持つかどうか、だんだん不安になってきた…。

 

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