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緑の『ルパン三世』拾遺集『LUPIN ZERO』(後編)/世文見聞録133

川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である”緑ジャケット”の『ルパン三世』について語り残していた話を取り上げます。


○第4話「ウイスキー・パイプを狙え」

川口世文:後半戦に入って、いよいよルパンと次元の相棒関係が固まる。冒頭の花火工場の爆破で壊れた次元のライターと二人の関係の修復がうまくリンクしている。

木暮林太郎:古典的な手法だけど悪くない。前回の話を踏まえてしのぶの監視が強化され、ルパンの心理的な“内圧”が高まってきたのもうまい。

川口:今回はシリーズ構成の大河内一楼が脚本を書いていなくて、独立したエピソードなのかと思ったが、実はクライマックス前の重要な足場固めだった。

木暮:それにしても二人は学校のなかにいったいいくつ“アジト”を作ったんだろう? ルパンの“実家”だけでなく、この学校の構造も知りたくなってきた。

川口:失敗したのが5か所、学校内にあるダストシュートはさすがのおれも見たことがない。そして、ようやく6つ目で落ち着いたんじゃないか? 

木暮:ストーブがあって、そこに次元が直ったライターで点火する。やけに目立っていた人体模型とゴムボートがしっかり活躍する点もよかったな。

川口:一方で、米軍が密輸したウィスキーを運ぶパイプライン──あれはいったいどうなっているんだ?

木暮:“水割り”ならともかくウィスキーの原液がボートで漕げるぐらいの川になるというのは相当な量だよな。

川口:さしもの次元もウィスキーは飲んだことがない。

木暮:それぐらい“酔っ払った”勢いが二人の関係修復には必要だったってことだ。

川口:そうだな、よく考えれば二人ともどっぷり“昭和マインド”の人間なわけだからな。

木暮:何はともあれ二人が“相棒”になって、いよいよクライマックスか?……6話構成はさすがに短かった。

川口:長めの映画一本分の尺しかないんだから、再編集して「劇場版」として期間限定公開してほしかったよ。

○第5話「その男、密かにおどる」

木暮林太郎:クライマックスとはいえ前後編のいきなりスケールのデカい話になってきた。

川口世文:話を整理しないとよくわからないかもな。沖縄の米軍キャンプからM65を盗んだのが“二世”で、彼はしのぶと組んでいる。そして、ブツを引き渡す相手が洋子の恋人で革命家のガウチョ──。

木暮:一方で“一世”は内閣総理大臣と通じていて、政府は〈大日本任侠會〉に奪還を命じる。〈任侠會〉はその助っ人を次元に依頼する──。

川口:ルパンの“実家”に乗り込んだ次元は本来の標的の“二世”ではなくルパンと対峙することになる。ここがちょっと弱いかな?

木暮:いやいや、そもそもルパンVS次元は成立しないわけだし、ここではルパンが自分の“ワクワク”に従って泥棒になることを決意させたことが重要だ。

川口:まあ、そうだよな。そして“三世”として最初に盗んだのが……“あなたの心”です。

木暮:そんなセリフあったっけ?

川口:もちろんそのセリフをここでいわせたら野暮になるけど、要するにそういうことだ。クラリスの心を盗んだように、ルパン三世は最初に次元大介の心を盗んだ。

木暮:そう考えると屋敷のデザインも、あえて屋根の上に登るのも『カリオストロの城』オマージュなのかも。

川口:このシリーズで描きたかった一つがここだろう。それはともかく「原子砲」とは物騒なものが出てきた。

木暮:M65は実在した兵器なんだな。射程30キロで、もちろん「砲弾」もセットになっているわけだ。

川口:“二世”が企んでいるらしい「ルパン帝国」の建設は本当にこんなことの先にあるのかね?

木暮:今回のサブタイトルの「その男」はやっぱりガウチョというより、食わせ物の親父のことなんだろうな。

○第6話「少年ルパン、三世を名乗る」

川口世文:前半で描きたかったのは「原子砲」の届け先とワルサーP38を賭けた“二世VS三世”の勝負だ。

木暮林太郎:『風魔一族の陰謀』に引き続いてこれを観ると本当に感慨深いよ。なかなかのいいチョイスだった。

川口:さらに裏テーマとして、かつて『うる星やつら』で“諸星あたる”を演じた古川登志夫に「しのぶ!」と叫ばせることもあったはず(笑)

木暮:しのぶのネーミングはそこからだっていうのか?

川口:あるいは首相官邸を原子砲で狙うタンカー「ブルックリン号」に雪が降ってくるシーンに『機動警察パトレイバー2』の雰囲気を感じさせることもあったかも。

木暮:考えすぎだと思うけどなぁ……ワルサーP38だけでなく、なぜ“緑ジャケット”を着たのかについてももっと掘り下げてほしかったな、おれたちとしては。

川口:次元もボタンダウンを着ていたが、さすがに例の黒い帽子はまだかぶっていない──それはまた別の話。

木暮:逆バンジーで洋子を“盗んで”、核抜き砲弾をブリッジに向けて発射して、意外と決着は早かった。そこは30分フォーマットだったからだろうな。

川口:唐突にバイクが登場してきたのも“狼狩りのガウチョ”との体格差を減らすため以外に、エンディングにつなげるためだったのかもしれないな。

木暮:次元の心は盗めても、洋子は助けられなかった。「泥棒になることはたくさん失うってことでもある」という親父の忠告を実感して終わる。

川口:シーズン2を作ることも不可能じゃないけど、そこは脳内補完でよさそうだ。栗田貫一が山田康雄より長くルパン三世を演じるようになって、今回の声優コンビが“第三世代”になる可能性も無くはない。

木暮:そういう意味でも古川登志夫の活躍はよかった。おれたちの“緑ジャケットルパン”もこれにて完結だ!


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