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緑の『ルパン三世』拾遺集『LUPIN ZERO』(前編)/世文見聞録132

川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である”緑ジャケット”の『ルパン三世』について語り残していた話を取り上げます。


○第1話「少年ルパン、狼に出会う」

川口世文:以前『古畑中学生』という古畑任三郎の過去を描いたドラマがあったけど、それと似たような趣向だな。まだ三世を名乗っていないから、テーマ曲でも「ルパン・ザ・サード」とは歌っていない。

木暮林太郎:なるほど……それにしても中学生がタバコやクルマというだけで十分に不謹慎なのに、さすがに次元の拳銃には驚いた。しかも「ニューナイアガラ」では“7発”撃っている気がするし。

川口:あのタッチで描かれると、全部“あり”だな、という気にさせられる。〈トムス・エンターテインメント〉ではなく〈東京ムービー新社〉が作ったアニメの雰囲気。

木暮:確かに意図的に“あり”にしているよな。それとあの音楽ね。アレンジされてはいるけど、リアリティラインが違うんだってことがはっきりと感じられる。大野雄二のテーマ曲が存在しなかった時代ってことでもあるし──完全に前日譚プリクエルだ。

川口:まず第1話では次元との出会いが描かれる。そこに洋子という歌姫が絡んできて、「関東藤岡組」と貨物船の積み荷の爆薬を巡る争いに巻き込まれる。

木暮:洋子という女性としのぶという家政婦を足して二で割ると、ほぼ峰不二子になるってことなんだろうな?

川口:不二子本人も存在しているんだろうけど、ここで登場させちゃうとちょっと“生臭く”なるからな(笑)

木暮:当然五エ門もどこかにいる。百地三太夫ももちさんだゆうのところで修行をはじめたころか?

川口:洋子を“盗まれた”ことでルパンの心に火がついて、それを次元が見ることで彼を理解するわけだから、ここはこういう設定でいいんだ。

木暮:ルパンの“実家”も面白いぞ。もうちょっとあの邸宅の内部をしっかり見てみたいな。

川口:勝手口の横の“ゴミ箱”が時代を感じさせるな。

○第2話「列車で秘宝に食らいつけ」

川口世文:第1話でお互いの存在を認識し合ったとはいえ、ルパンと次元はまだ相棒ではない……それどころか友達ですらない。

木暮林太郎:“焼きそばパン”勝負なんかを繰り返しても決定的に関係は進展しないよな……そこであの謎の陽気な“もののけ姫”を登場させたわけか。

川口:陽気な“もののけ姫”ねぇ……言い得て妙だな。ああいうキャラも現代では微妙かもしれないが、ここでは十分に“あり”だ。彼女マリナルのまじないが効いたのかどうかはわからないが、二人の絆を太くする媒介ミディアムとしては機能してくれた。

木暮:前回が船で今回は列車というのもいいバランスだと思う。まだ新幹線が走っていなかった時期なのか?

川口:「特急こだま」がまだ健在だったということはそういう時期になるんだろう……1964年10月以前か。

木暮:首飾りを巡るすったもんだがあって、浜松で途中下車してしまうのが残念。その前に車中で用心棒として雇われた次元から銃を向けられるシーンがあっただろ?

川口:向けたはいいけど撃てなかったシーンな?

木暮:次元の銃は「スミス&マクソン」なんだな(笑)

川口:そこはご愛嬌。そんなことをいったら、あんなにたくさんの弾丸をどこに隠していたんだって話になる。

木暮:細かいツッコミはやめておくか……牛を満載した貨物列車に乗り替えてからは「ファーストシリーズ」の第21話「ジャジャ馬娘を助けだせ!」を思い出した。

川口:ディーゼル機関車を止めるために「給水場」を使うのかと思ったら、あれは石炭を補給する設備だった。

木暮:全然知らない世界だからちょっと新鮮だったよ。

川口:「チューブチョコ」とか「丸十パン」まではピンと来たんだけどなぁ。

木暮:歳がバレるぞ。おれはそんな歳じゃないからな。

○第3話「一世の孫、跡目を競う」

木暮林太郎:この話が前半の山場みたいだな? ルパンの“実家”をしっかり見たいといったけど、祖父じいさんの屋敷も別に存在していたわけか?

川口世文:「奇岩城」とはよく名付けたものだ。この話は原作で読んだ気がする。

木暮:実に食わせ物の祖父さんだな。単に“孫”というだけでは「三世」を名乗ることができないのか?

川口:“アル”ことアルベール・ダンドレジーの存在があるからな。ここでようやく「パート5」の伏線回収……っていうか、ここで伏線が初めて“敷かれた”わけだ。

木暮:ああ、あの少年がそうだったのか。だから今回は次元は“カンボジア出張”ってわけね。

川口:冒頭で洋子とデートしている名曲喫茶で『運命』が流れているのが象徴的だった。

木暮:よくあるダンジョン攻略の展開はともかく、四つの道具をそれぞれが手にしてからの駆け引きのシーンは面白かった。

川口:ルパンがそれをどう切り抜けるか、さらには一世の本当の思惑と、裏で二世まで暗躍していて、なかなかよく練られた脚本だった。

木暮:二世まで暗躍っていうのは今後の暗示だろうな?

川口:きっとそうだと思う。祖父さんも食わせ物なら、親父も食わせ物──それぐらいの家系で育たなきゃ、ルパン三世は誕生しない。

木暮:そりゃそうだな。それにしてもワックス弾っていうのは初めて聞いた。赤外線センサーとかレーザー光線もこのころすでにあったのか?

川口:少なくとも原理としてはあっただろう。ついでに消えるインクなんかも……それで思い出したけど、一世が作った契約書の元の文章をじっくり読んでみたいな。

木暮:作品内テキストフェチだからな、おまえは(笑)

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