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緑の『ルパン三世』拾遺集『風魔一族の陰謀』/世文見聞録131

川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である”緑ジャケット”の『ルパン三世』について語り残していた話を取り上げます。


○緑の『ルパン三世』拾遺集

川口世文:今更ながら緑ジャケットの「ルパン三世」で語り残した話を取り上げていこうと思う。

木暮林太郎:待ってました!──『カリオストロの城』のことだよな? それについてなら“一家言”あるぞ。

川口:残念ながらあの作品は別格だし、宮崎駿のフィルモグラフィーで語るべき作品だから、あえて除外する。

木暮:そうなのか?……わかったよ、まあ、ここはおまえの好きにしろ。それで、どの作品を取り上げるんだ?

川口:『風魔一族の陰謀』と『LUPIN ZERO』をやる。どっちも声優陣が違うけど、すでにオリジナルメンバーが総入れ替えになった今、ほとんど違和感は覚えない。

木暮:『風魔一族の陰謀』はともかく『LUPIN ZERO』は“じゃりン子ルパン”の話だろ? そもそも学生服ではなくてジャケットなんて着るのか?

川口:それは観てのお楽しみだ。確かに前者がもし山田康雄の吹替だったら、誰も何も文句はなかったと思うけど、古川登志夫も『LUPIN ZERO』では“ルパン二世”を演じているし、収まるところに収まった。それにおれはさほど嫌いではなかった。

木暮:初見のときから本当にそうだったのか?

川口:レイトショーで劇場で観たときからね。

木暮:まあ、今となっては何とでもいえるけどな。

川口:それだけじゃない。BS12で放送されたときCMが入ってさ、73分の上映時間が実にきれいな三部構成になっていることがわかった。つまりテレビエピソードにしてきっかり三話分──これは「ファーストシリーズ」の第24話~26話だったんだよ。

木暮:あくまでも“非公式の見解”だよな?

川口:だけど、23話で打ち切りになった「ファースト」がそれできれいに“2クール全26話”になるんだぜ。

木暮:わかったわかった、早速、お説拝聴と行こうか。

○『ルパン三世 風魔一族の陰謀』第1話

木暮林太郎:本当は第1話も第2話もない──あくまで“便宜上の”話だってことは最初に断っておくぞ。

川口世文:「ファースト」の最終話からおそらくは数年が経って、五エ門の“祝言しゅうげんからはじまる。

木暮:ルパンも不二子も“礼服”姿なのが新鮮でいい。

川口:そういうシチュエーションだから、五エ門は刀を持たず、次元も銃を持っていない。そこへ「相伝の壷」を狙って〈風魔〉が襲ってくる。ここまで展開が早い。これは完全に30分番組のペースだといっていい。

木暮:今更“人物紹介”の必要性もないだろうからな。

川口:和服姿の不二子がうまいこと壷を取り返すが、一方花嫁の紫がさらわれて、壷と交換ということになる。

木暮:墨縄すみなわ老人に説得されて五エ門は渋々人質との交換を諦めたのに、ルパンが一肌脱ぐわけだ。

川口:ルパンにはルパンの思惑があって、まんまと隠し財宝の“地図”を目にすることになるわけなんだけど。

木暮:彼がせっせと作っていた“クワガタメカ”がよかった。以前は“てんとう虫”サイズだったのにな(笑)

川口:一方、死んだはずのルパンが目撃されたことで、丸坊主になって出家していた銭形が呼び戻される……。

木暮:あの寺にいた女性や子供たちは何者なのかな?

川口:さあねぇ、銭形が目撃したルパンの最期のシーンといい、最終話のあといったいどんなことがあったのかいろいろと妄想させてくれるよな。

木暮:それだけにルパンとの再会シーンはグッときた。

川口:銭形復活のおかげで、最初の“追いかけっこ”が発生し、操車場の取り引きで脱出のチャンスも生じる。

木暮:今回は岐阜県警、“応援”に来るのが愛知県警。

川口:一方、壷が持ち出されたことに気づいた老人が山のほこらを猟銃で打ち壊して、第1話は終わり。

木暮:あくまでも便宜上の第1話です──!

山の祠──封印の下に鍵穴がある

○『ルパン三世 風魔一族の陰謀』第2話

川口世文:真っ赤なライダースーツとバイクで不二子が颯爽さっそうと再登場してきて第2話が開幕──。

木暮林太郎:「風間組」の事務所に潜入して、そこにボスで登場するんだけど、まるで『コブラ』の“クリスタルボーイ”みたいな風貌だ……武器は百円玉なんだけど。

川口:“色味”は全然違うけどちょっと似ているかもね。一方で無事脱出した紫がルパンから“赤ジャケット”を借りて着るシーンがある。そこからもこの作品が二つのシリーズの“ミッシングリンク”だったことがわかる。

木暮:製作時期は「パートⅢ」のさらにあとだけどな。

川口:まあ、固いこというな……で、捕まった不二子は風見刑事の正体を知り、彼にペンダントを取られ、脱出時に壷を割って“黄金の鍵”を手に入れるという三つの役割を果たすわけ──脚本のこういうところがうまい。

木暮:さらにルパンが発信器を仕込んでいたペンダントが悪用されて、銭形と二度目の再会! そして、前半の見せ場の一大カーチェイスがはじまる!

川口:監修が大塚康生、作画監督が友永和秀となれば絶対そうなる。友永和秀が抜けたおかげで「パート6」の作画からルパンらしさが抜けたのは本当に残念だった。

木暮:話はここから後半戦。続々と錫杖岳しゃくじょうだけの洞窟に登場人物たちが集まってくるわけだ。

川口:最後に到着した銭形が、風魔によって崖から突き落とされた墨縄老人を救出して、あと1時間で洞窟崩壊の“タイムリミット”が発生したことを知らされる──ここで第2話が終わり。第1話と同様、老人が出てきて話を締めくくるんだ──実によくできているだろ?

木暮:そういわれると、だんだんそんな気がしてきた。

川口:『シン・仮面ライダー』のソフト版に「各話フォーマット版」という特典があるらしいけど、まさにそれと同じものが『風魔一族の陰謀』には内在しているんだ。

タイムリミットの存在を知らされる

○『ルパン三世 風魔一族の陰謀』第3話

川口世文:さて、第3話。ここからはまさに「劇場版」のクライマックスという感じ。

木暮林太郎:それにしても風魔のやり方は乱暴だぞ。落盤とカラクリで死屍累々ししるいるいじゃないか。

川口:五エ門が幻覚ガスに苦しむシーンはテレビゲームっぽかった。そのときルパンが盗んだガスが最後に切り札になるし、一方、五エ門がここで紫に怪我をさせてしまったことがラストでまた修行の旅に出る伏線になる。

木暮:一つのシーンに複数の意味を持たせているなぁ。とはいえ、地下の洞窟にあんなに巨大な“黄金の城”を建てていたっていうのはどうなんだ? 黄金のかわらをあんなに並べていたら、落盤がなくってもいずれ崩壊していたぞ(笑)

川口:どうして地下があんなに明るいかも含めて、そこはイメージ優先ってことだったんだろうな? 不二子のあのはしゃぎっぷりに免じて、許してやってくれ(笑)

木暮:“爆弾のスイッチ”を持っているぞというルパンの脅しは百円玉でバレてしまい、五エ門とボスの対決は、最終的にチームプレイの勝利だったな。

川口:追いつめられたルパンが幻覚ガスを使い、風魔がルパンの「百面相」を順番に目撃するシーンがいい。

木暮:やはり「パートⅢ」も踏まえていたじゃないか?

川口:まあ、固いこというなって……そして、お馴染みの大崩壊シーンがあり、みんな無事に脱出して、ルパンは手ぶら、不二子はちゃっかり黄金の瓦を一枚。何気に次元も前立てが欠けたかぶとを手に入れる……。

木暮:五エ門はふたたび修行の旅に。最後はまるで“寅さん”だった。それにしてもおまえがいう「ファーストシリーズ」のラストがこんな終わり方でよかったのか?

川口:いいじゃないか、最後にあんなに大きな「完」のマークを出してくれて、あれだけでおれは大満足だよ。

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