モノクローム de サクラ
こんにちは、路上写真家のTokyo Street PIX/TPIXです。
GWも終わり、もう桜のことなんて、皆さん忘れていることでしょう。
でも、私の頭の片隅には、ずっと「サクラ」のことが引っ掛かっていたのです。
突然ですが、森山大道氏の『ango』という写真集を知っていますか?
森山大道は、日本を代表する写真家のひとりで、写真界のノーベル賞とも言われる「ハッセルブラッド国際写真賞」を2019年に受賞しています。
写真集のタイトルにもなっている「ango」というのは、小説家・坂口安吾の名前から取られたものです。
この写真集は、森山大道の写真に、坂口安吾の短編小説『桜の森の満開の下』を組み合わせ、桜をひとつの共通言語としながら、画と文で構成される、あまり見られない構成の写真集です。
ちなみに『桜の森の満開の下』は、1947(昭和22)年に発表されたもので、著作権が切れていることから、青空文庫でも読むことができます。(あくまで小説だけですが)
桜がモチーフになっていますが、この写真集を編集したのは造本家の町口景氏。森山大道氏の写真集を何冊も造っておられます。
アイデアも斬新ですが、やはりすごいのは桜をモノクロで表現したことでしょう。
桜の写真といえば、あの綺麗な花びらの色を表現するためにカラーが当たり前のようになっていますが、森山氏の桜はモノクロです。
この写真集には秘密があって、モノクロの白い部分は、単なる白色ではなく、見る角度によって薄いピンクやブルーに見えるような特殊なインクを混ぜてあるので、より立体感があるのだそうです。
ただ、もちろんベースはモノクロなので、色のイメージを使って桜を表現しているわけではなく、構図もしくは被写体の花びらや枝、もしくはその背景の形だけで桜を表現しているわけです。
写真の持つイメージの力を最大限引き出すセンス・技量には、もう言葉も出ません。
その証拠に、全編シルクスクリーン印刷で構成された『Daido Silk』という写真集に載っている桜は、圧巻です。実物を見ていただけると分かるのですが、シルク印刷は黒いインクを通す・通さないかでしかありませんから、通常のモノクロのようにグレーはありません。
グレーを表現するには、黒色の面積を小さくしていって白の比率を高めながら、階調を作っていきます。
純粋な黒と白だけしかないのに、見事に桜が表現されているんですね。
どうしたら、このようになるのか。
今年撮った桜を、モノクロで表現するために、何をすべきか考えたく、しばらく旅に出ようかと思う今日この頃です。
またお会いしましょう。路上写真家のTokyo Street PIX/TPIXでした。
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