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大学研究者が事業を提案する仕組み=大学提案!事業化された方へインタビューしました。

こんにちは!「大学研究者の知と想いを形にする」大学提案担当です。

大学提案のインタビュー企画、第5回をお送りします。
ご登場いただくのは、慶應義塾大学の前田 正一(まえだ しょういち)教授です。


都民の健康を支える皆様のために

 今回の前田教授のご提案は、日々、都民の健康を守り、支えてくださっている、「医療・介護従事者」の皆様に関するものです。
 近年、医療・介護の現場で、従事者への暴言・暴力等の事件が相次いでいる状況を踏まえ、何とか解決したいと考えられていた前田教授。
 まずは、前田教授からご提案いただいた「都民と医療・介護従事者を暴力等から守る、安全で安心な医療・介護環境の整備事業」について紹介します。

<ご提案いただいた事業の概要>

 いただいた提案は、医療・介護の利用者から従事者への暴言・暴力等に焦点をあて、①客観的な実態把握、②現場での対応等に関する研修プログラムの開発、③対策基盤としてのオンラインプラットフォームの開発に取り組む という内容です。
 
 どのような想いでこの提案に至ったのか、インタビューで紐解いていきたいと思います!

これまでの研究

―はじめに、先生の研究について教えてください。

前田教授:いわゆる公衆衛生(パブリックヘルス)に関わる課題の中でも、生命維持治療の中止の可否など、医療現場で生じる倫理的法的課題について研究をしています。
 直近では、COVID-19との関係で、限りある医療資源の配分に関する倫理的法的課題にも取り組んできました。

医療・介護に携わる人々が、「拠り所」をもって働ける社会に

―今回、提案をいただいたきっかけについて教えてください。

前田教授:我が国の医療・介護現場では、利用者による暴言、暴力、ハラスメント等の迷惑行為が深刻化しており、現場で働く方々や他の患者さんの生命・身体・精神に甚大な被害が生じるようにもなっています。また、医療・介護従事者の退職理由に関する調査では、暴力等の迷惑行為が原因の退職が多数に上っていることがわかっており、この状態が続けば、医療・介護サービスの安定供給にも影響が及ぶ可能性があります。

 しかし、医療・介護の現場では、地域や職種単位で、経験則的に事例や対応手法等が共有されることはありますが、客観的な実態把握を踏まえた対策や体系的な知識・技法の習得等は行われていません。そこで、都民や現場で働く方々に安全で安心な医療・介護環境を確保するために対策を講じることが喫緊の課題であると考え、提案しました。

―たしかに、カスタマーハラスメント(カスハラ)については、近年、業種を問わず社会問題化していますね。都でも、現場で働かれる方々が、拠り所を持って対応できるよう、条例化の検討を進めています。

前田教授:そうですね。医療・介護の現場で働く方々も、拠り所を持って問題対応を行えるようになる可能性があり、都における条例化の取組に関心を持っています。
 例えば、医師には、応召義務*という義務があります。

*応召義務
診療に従事する医師は、正当な事由がなければ患者からの診療の求めを拒んではならないとする医師法の規定

 そのため、利用者から迷惑行為を受けたとしても、診療の求めがある以上、それを断ることができないと考え、医師が診療を続けるというようなこともありました。今回の取組では、関係する法令等についても説明し、医療・介護現場で働く方の負担を減らしたいと思っています!

「協働」による事業実施

―今回の提案事業、どのように進めていかれますか?

前田教授:公衆衛生上の課題については、行政機関と大学・研究者とが協力して取り組むことが重要なことが少なくありません。例えば今回の事業では、理論的な検討だけでなく、実態を定量的に把握するために、広く医療機関等を対象として調査を行います。この調査では、日頃から、関係団体や医療機関等と関係を持つ都の協力があってこそ、その後の検討に資する良いデータが得られることになります。また、得られたデータの解析や解析結果の分析は、大学・研究者が得意とするところです。

―まさに、大学・研究者と都との協働による事業実施ということで、この制度の趣旨にぴったり合致しますね。

前田教授:そうですね。本事業のいずれの段階においても、両者が協力してこそ、良い結果を得られることになると考えています。今後の3年間、協働して、進めていきたいと思います。

ブレイクタイム☕

―なかなかお忙しい毎日を過ごされているところですが、最近のブームや趣味等について、教えてください。

前田教授
:最近と言いますか、私は、子どもの時から植物を育てることが好きでした。現在も、自宅前で植物を育てたりしていますが、それがきっかけで、見知らぬ方に声をかけられたり、お裾分けまでいただいたり・・・と新たな交流も生まれています(都心にもかかわらず、ミツバチも来てくれ、驚きました!)。

―たしかに、先生の研究室のHPのトップ画面も植物ですね。

前田教授:はい。本でできたプランター内で植物が芽を出している様子を示していますが、学生には、学習をし、それによって芽を出し、ぐんぐんと育っていってほしい、という意味を込めています。

<先生にご提供いただいた植物などのお写真>

今後への想い

―最後に、今後、目指していきたいところについて、メッセージをお願いします!

前田教授
:世界に誇れる健やかな都市・東京、世界都市・東京、これらは、そこに暮らす人々に「安全・安心」な環境が確保されていることが基盤になると考えています。とりわけ人々の健康に関わる局面ではこのことが重要だと考えています。未来の社会をより豊かなものにするように、微力ながら、一研究者として、理論と実践を架橋しつつ、時々に生じる課題解決に挑みたいと考えています。

<都知事から感謝状を贈呈される様子(令和6年2月)>

都では、今年度も「大学研究者による事業提案制度」を実施中です。
事前相談は5/8まで、提案応募は5/31まで受付中です。
詳細は以下のページをご覧ください。ご応募お待ちしています!