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アイデア提案部門のヒントが満載!オープンデータを用いたストーリーテリングの秘訣

都知事杯オープンデータ・ハッカソン2023のプレイベント3回目は東京大学大学院渡邉さん駒澤大学瀬戸さんに登壇いただきました。3年目を迎える都知事杯ハッカソンで今年度新設されたのがアイデア提案部門。お二人からはアイデア提案部門に向けて、とても参考になるオープンデータを用いた研究やデータビジュアライゼーションについてご紹介いただきました。

東京大学大学院渡邉さん(奥)と駒澤大学瀬戸さん(手前中央)
東京都職員清水さんと運営事務局スタッフ3名

オープンデータでストーリーを紡ぐ

オープンデータを用いて数々のデータビジュアライゼーションをおこなってきた東京大学大学院情報学環 教授の渡邉英徳さん。この日も沢山の作品をライブでデモンストレーションしていただきました。

東京大学大学院情報学環 教授の渡邉英徳さん

渡邉さんが継続的に取り組まれているのが広島原爆の実相を世界に伝える多元的デジタルアーカイブズ「ヒロシマ・アーカイブ」です。ヒロシマ・アーカイブでは個別のデータを一元化することで、ストーリーになっていきます。そして、戦前から戦後にかけての白黒写真をAI技術によってカラー化するプロジェクト「記憶の解凍」では、ストックされていたデータがフローに変わることで、ユーザーの日常に触れ、対話がはじまります。渡邉さんのデモンストレーションによって、データがストーリーになっていく様子が見事に可視化されていきました。
続いて、渡邉さんには、トルコ・シリアの地震ウクライナ危機の衛星画像のプロジェクトを取り上げていただきました。オープンデータが存在していても、その活用は専門家に限られるという課題がありますが、これらのプロジェクトではオープンデータを専門家以外の人でも理解しやすい形で視覚化したり、利用しやすい形式で提供することで利活用につながりました。特にトルコ地震に関する情報発信に対しては、本国トルコからのアクセスがもっとも多かったそうです。
また、東京大学の学生たちがオープンデータを活用したビジュアライゼーションプロジェクトに取り組んでいるとのこと。これにより、理系だけでなく文系の学生たちもデータ解析とビジュアライゼーションの技術を身につけ、将来的には仕事でこれらのスキルを活用することが期待されています。
様々な取り組みを通じて、オープンデータをストーリーとして人々に届ける技法と魅力を伝えていただきました。

地図とオープンデータでつくる次世代のまちづくり

駒澤大学准教授の瀬戸寿一さんからは、「デジタル地図を活用したまちづくりと参加」というテーマでプレゼンテーションをしていただきました。
冒頭で瀬戸さんはある古地図を紹介。中世ヨーロッパの地図の一つで、詳細で精密な建物、道路が載っている現在のイタリアのある都市の地図でした。驚くべきことに、この地図はレオナルド・ダ・ヴィンチによって作られたと伝えられ、現在の都市構造とも合致するほど精巧で、当時の都市計画に使われたと言われています。

駒澤大学准教授の瀬戸寿一さん

次に紹介されたのが21世紀における最新の都市計画での地図活用の取り組み。例えばニューヨーク市では、都市の空間的不平等を可視化するためにNPOが中心となってオープンデータが利用されたダッシュボードを開発。マンチェスター市では行政によって3Dデータビューワーが開発され、日射量のデータなどが都市計画に使われています。
一方、東京都ではセンサーなどから取得したデータをもとに、建物や道路などのインフラ、経済活動、人の流れなど様々な要素を、サイバー空間上に可視化するデジタルツイン実現プロジェクトをおこなっています。このプロジェクトのビューワーを使うことで、地域ごとの状況を立体的に可視化できるほか、ストーリーマップで他の人に共有できます。また、オープンデータとして取得した一部のデータをハッカソンに活用するというアイデアを紹介いただきました。また、本ビューワーに搭載されている静岡県の点群データをもとに東京都と静岡県を比較したソリューションもできるのではないかという提案が紹介されました。
最後に挙げられたのが、国土交通省が進めている「Project PLATEAU」。3年間でまちづくりなどのユースケースが50件以上も生まれている注目のプロジェクトです。PLATEAUのデータもオープンデータになっているので、ぜひデータやユースケースをご覧いただきたいとのことでした。
地図とオープンデータという媒介を通じて行政と市民がつながり、新たなまちづくりができる未来を感じさせるプレゼンテーションでした。

データから人の息遣いを感じ、コンテンツをつくる

この後は、参加者からの質問を受ける形で渡邉さんと瀬戸さんのパネルトークがおこなわれました。革新的なツールによってデータビジュアライゼーションなどが容易におこなわれるようになったこと、二人が現在のキャリアをつくるきっかけなどに参加者が惹きつけられました。

渡邉さんと瀬戸さんのパネルトークの様子

中でも興味深かったのがどのような視点で取り組むかという質問に対する回答です。渡邉さんはデータの裏側に人がいて、人が生み出したデータという視点で組み直していくことが重要だと指摘しました。学生が作成した出征兵士のデジタルアーカイブでは、そのことによって多くの人が心を動かされました。瀬戸さんは、様々な社会的背景を抱えたすべての人が一つのまちづくり案に合意することは無理な中でも、多くの様々なデータを使うことでより良い選択肢を提案することの重要性を話しました。
東京都の膨大なオープンデータから作品をつくっていくすべての参加者にとってとても有意義なメッセージでした。

イベントレポートではすべてを伝えることができませんので、下記にて公開している動画をぜひご覧ください。

都知事杯オープンデータ・ハッカソンについて

今年度の都知事杯の参加者エントリーは7月21日で締め切りました。
今後、9月10日のFirst Stageと10月22日のFinal Stageの2つの審査会をオンライン配信します。