自分の漫画を魅力的な作品にするためには何が大事なのか?

今回の話は文字数がかなり多いので、まとまった時間がある時にゆっくりと読むようにしてください。


<どうやったら面白い作品になるのか?>

商業で漫画を連載されている人もいれば、インディーズで漫画を作って公開している人もいます。

「面白い作品」や「魅力的な作品」というのを目指して作っていると思いますが、「どうやったら自分の漫画はそういう作品になるのか?」と悩む事も多いと思います。

漫画を連載中の方は、自分の作品がなかなか人気が取れず苦しんだりする事もあるでしょう。
雑誌や漫画アプリで連載を獲得しようとしている人は、漫画を作っても編集部の連載会議にすら出してもらえなかったり、ようやく連載会議に提出されても他の作品に連載を取られてしまったり。
またインディーズでやられている方も、「どうも自分の作品は受けが悪い」みたいに苦しんでいる人もいるでしょう。

その際に考えて欲しいのは、「自分の漫画は読んでる人の脳をこまめに気持ち良くさせているか?」という事。

これは漫画に限らずゲームや映画や小説、音楽、その他あらゆるエンターテインメントでの物作りに共通する、ものすごく重要な事なのです。

脳をこまめに気持ち良くさせる」という事がきちんとできているかどうかで、その作品の印象や評価、売れ行きが大きく変わってくるのです。


<脳が気持ち良くなる事には人は自分からお金を払いたくなる>

人は脳が気持ち良くなる事には自分からお金を払いたくなります。
甘い物、お酒、おいしい料理、ゲーム、化粧品やファッション、その他色々な物に虜になり散財している人は多いでしょう。

VTUBERにはまってスパチャとかしている人が結構いるのも、観ていて脳が気持ち良くなる人が多いからです。

なろう作品もインスタントに短時間で次々と脳を気持ち良くさせていくからこそ売れているのです。

自分の漫画を魅力的で売れる作品にするには、「自分の作品は読者の脳を気持ち良くさせる要素がきちんと入っているか?」や「そういうのが漫画内に適度な頻度で登場するか?」をよく考えて作品作りをしてみてください。

漫画制作において「面白い漫画とはなんだ?」とわからなくなった時は、「きちんと読者の脳を気持ち良くさせる漫画になっているか?」という視点で自分の漫画を見返してみましょう。
 

<漫画における脳が気持ち良くなる要素とは>

漫画における「脳が気持ち良くなる要素」については色々あります。
一つ一つ見ていきましょう。

以下にある全ての要素を自分の作品に盛りこもうとすると良くわからない作品になってしまうので、この中から自分の作品や作風に適した物を選んで漫画内に仕込んでいくと良いでしょう。


<ストーリーが夢中になるほど面白い>

「読み出すと止まらない」や「続きが気になる」など、ストーリーの面白さで読者の脳をしっかり気持ち良くさせる作品もあります。
「ストーリーを面白くするには?」については語り出すとすごい長くなるので、そういうのを解説した本を色々読んでみてください。


<意外性による面白さ>

物語が意外な展開をすると驚きがあり面白くもあります。
一方で「すでに知っている展開」みたいなのはあまり面白く感じません。

なろう作品でもたとえば追放系という作品は「主人公が邪魔者扱いされて追放される」「実は主人公が特殊な能力を持っていて追放したやつらに爽快な復讐をする」がもうほとんどの読者が体験していて、これだけでは脳が気持ち良くなりません。
追放系を今から作る場合は、何らかの新たな意外性だったり別の脳が気持ち良くなる事を仕込む必要があるでしょう。

このようにエンターテインメントは「すでに体験した事にはあまり面白さを感じなくなる(脳が気持ち良くならない)」という風になっています。

ただし、意外性が無くても他の要素で読者の脳をしっかり気持ち良くさせれば良いので、「読者をどう驚かせる物語にするか?」にばかりこだわりすぎるのもどうかと思います。

<キャラクターの言動が面白い>

キャラの言動が面白くて読み続けたくなる漫画もありますよね。
最近kindleインディーズ漫画を色々読んでいますが、キャラが面白い作品が多いです。
面白い言動をするキャラはそれだけで読者の脳を気持ち良くさせる効果があります。

<感動した時に人は脳が気持ち良くなる>

人は感動した時に心地良い感じがする(脳が気持ち良くなる)というのは、あなたが過去に体験した感動作品の事を思い浮かべてみると良くわかるのではないでしょうか。
感動系の映画を観終わった後に心地良い感じがした、という体験をした人も多いでしょう。

漫画では、感動で読者の脳を気持ち良くさせるにはある程度の尺が必要となり、またきちんと読者をキャラや物語に引き込むようにしないといけないでしょう。
感動させる漫画を作るというのはなかなか難しいですが、丁寧に物語を紡いでいく事で深い感動(強い脳の快感)を与える事ができるでしょう。

<性的なシーン>

軽いセクシーシーンや、もっと本格的なHシーンなどは生物の本能的なもので、手軽に読者の脳を気持ち良くできます。
ただしアダルト作品以外はあまりにも性的なシーンを乱発しすぎると慣れすぎて気持ち良さが薄れてしまいます。

性的なシーンを連発するより、別の事でしっかり脳を気持ち良くさせると良いでしょう。

<笑えるギャグ>

笑えるギャグは脳を気持ち良くさせます。
 
ギャグメインの漫画はこまめこまめに読者の脳を気持ち良くさせていますし、普通の漫画でも時々ギャグを入れるとそのシーンでは脳を気持ち良くさせているわけです。

ギャグがあまり面白くないと脳がきちんと気持ち良くなりませんが。

<謎が解けてすっきりした瞬間>

サスペンスや推理物で謎が解けてすっきりした瞬間でも脳内では快楽物質が分泌されています。
ストーリー物で「この後どうなってしまうんだろう?」が解消された瞬間も読者の脳はすっきりして気持ち良くなります。

謎によるもやもや感がようやく晴れてすっきり気持ち良くなるのです。


<大逆転が起きた瞬間>

それまで苦境に立たされていたのに逆転できた時も脳は気持ち良くなります。
苦労の末の成功というのは強いカタルシスを感じるものです。

かけひき系の漫画でも、一旦主人公を窮地に陥れてから逆転させる事で強いカタルシス、脳での快楽物質の分泌量の増加を狙っている作品が多いです。


<スリルや緊張感後の安堵>

人の脳はスリルや緊張を感じた後の安堵時に、脳内で快楽物質が自然と分泌されるようになっています。これは脳の生理現象です。
ゲームなどでもこの脳の特性を利用してゲームデザインをし、プレイヤーの脳を気持ち良くさせているのが多いです。
 
漫画でも適度なスリルや緊張を感じた後の安堵シーンでは読者の脳が気持ち良くなっています。

ホラーやサスペンス系の作品は、スリルや緊迫したシーンばかりではなく、時々安堵させるというシーンを挟んだ方が、その際に読者の脳を気持ち良くさせる事になります。
映画でも名作ホラーやサスペンス作品が「脅かして安堵」「脅かして安堵」という展開を繰り返すのは、そうする方が脳が気持ち良くなるからです。
逆に合間に「安堵」のシーンが無いと脳が気持ち良くなりません。

<自分が属する物や応援している人が褒められたりした時>

「日本人はこういうのが凄い!」というのは同じ日本人としては脳が気持ち良くなります。
応援している野球やサッカーのチームが大勝利を修めて色々な媒体で大きく取り上げられる事でも気持ち良くなる人は多いでしょう。
異世界転生物でも、「現代のこの技術は凄い!」みたいに異世界人に絶賛されるとやはり現代人は気持ち良くなってしまいます。
おっさん世代の人にとっては、なろう作品でおっさん主人公が無双していると気持ち良くなります。

このように自分の属している集団だったり、応援している集団が賞賛を受けると自分の事のように誇らしくなり、脳が気持ち良くなるのです。
 

<おいしそうな料理とそれをおいしそうに食べるシーン>

漫画の中でおいしそうな料理を出し、またそれをキャラクターがおいしそうに食べると読者の脳を気持ち良くさせます。

おいしそうな料理を出して終わりにするだけでなく、実際にそれをおいしそうに食べさせた方がより脳を気持ち良くさせます。
YOUTUBEなどでおいしそうな料理の映像を見せるだけの動画よりも、大食い動画のように実際に食べる動画の方が人気なのでもよくわかるでしょう。

食べ物を食う系の漫画が一定の人気があるのは、「漫画の中でキャラが物をおいしそうに食べるシーンでは読者の脳が気持ち良くなる」というのがあるからこそと言えます。

また、料理漫画や食べ物漫画ではなくても、時々登場キャラ達においしそうな料理を食べさせるシーンをそれとなく入れてみてください。
性欲同様、食欲を刺激してそれを満たすシーンは脳をインスタントに気持ち良くさせられます。
「ただの会話シーン」ではなく「食事をさせながら会話させるシーン」にしてみたり。
 

<お酒を飲んでいるシーン>

お酒が好きな人にとっては、漫画の中でキャラクターが酒を美味そうに飲み、つまみもおいしそうに食べているシーンを見ると脳が気持ち良くなります。


<爽快感のあるアクションシーン>

攻撃ヒット時の気持ち良さが伝わるような作画だと爽快感があり、それでも脳が気持ち良くなります。
読者にいかに打撃や斬撃の爽快感を伝えるか考えて作画してみましょう。
一コマだけで終わらせるのでなく連続したコマで攻撃ヒットの衝撃をより爽快に表現したりも良いでしょう。
キャラが吹っ飛ぶ際には背景の物の破壊も入れると爽快感が増すでしょう。
 

<恋愛シーンで読者もドキドキしているような瞬間>

作中のキャラ同士の恋愛でも読者がつられて一緒にドキドキしてしまうと脳が気持ち良くなります。
主人公に読者が感情移入できている状況でキャラに惚れられるとやはり脳を気持ち良くさせます。

<キャラに萌えている時>

特定のキャラにはまった人にとっては、そのキャラが登場しているだけで勝手に脳が気持ち良くなってしまいます。
恋愛をして好きな人が近くにいる時みたいに、脳が気持ち良くなるのです。

カッコいいキャラや渋いキャラが好きな人はそういうキャラにはまったり、肉体的にごついキャラが好きな人はガタイの良いキャラを見ると脳が気持ち良くなるでしょう。
他にもロリやショタ、その他色々なキャラによってそういうのが好きな人は、そのキャラが登場しているシーンでは脳が気持ち良くなっているのです。

<自分にとって役に立つ知識を得た時>

ノウハウ系漫画とかで役に立つ知識を得た時は、脳が結構気持ち良くなります。
普通の漫画でも蘊蓄系の話をたまに入れてみたり。
「へー、そうなんだ」とか「面白い話を知ったな」と思わせてみましょう。


<癒しのシーン>

動物やかわいらしいものを見て癒されている時も脳が気持ち良くなります。
まったりした空気感のあるシーンなども。

現在は心をすり減らす生活をしている人が多く、そのため癒し系漫画を読むと心地良くなっている人も多いでしょう。
私もnoteで色々な方のコミックエッセイを毎日楽しんで読んでいます。

<メカ物などのシーン>

メカが好きな人にとっては良質なデザインのメカが登場するシーンは脳が気持ち良くなります。
今は3DCGも使って作画できるため、より構造的に複雑なかっこいいメカも登場させられるでしょう。

車だったり電車が好きな人にとっては、漫画の中でクオリティの高い作画で車や電車が登場するとそのシーンで自然と脳が気持ち良くなってしまいます。

銃マニアにとってもリアルな作画で銃が登場するとそれでも勝手に脳が気持ち良くなりだします。

 

<ノスタルジーを感じた時>

懐かしい気持ちを感じた時も脳が気持ち良くなります。
「昔話は楽しい」と感じる人も多いでしょう。
 
 

<知的好奇心を満たした時>

ワイドショーや色々なニュースをつい人は見たくなってしまうのは、知的好奇心が満たされた瞬間に脳内では快楽物質が分泌されるからです。
だから多くの人は毎日のようについ色々なニュースを見てしまう。 

漫画内でも知的好奇心を満たすようなシーンでは読者の脳が気持ち良くなっているのです。



このように、「自分の漫画は脳を気持ち良くさせるシーンがきちんと入っているか?」は毎回ネームなどの段階でしっかりチェックするようにしてみましょう。
ストーリー的に谷間の盛り上がらない回でも、上記のような脳が気持ち良くなる要素が色々入っていれば読者は面白く感じます。

「ストーリー的に話は進んでいるのにいまいち面白く感じない」という場合は、脳を気持ち良くさせる要素が漫画内にあまり入っていないか、入っていても気持ち良くさせる事が弱いという感じになっています。

色々な連載作品を見ると、「この漫画は何ページも脳を気持ち良くさせる要素が入っていない」みたいなのがわりとあり、やはりそういう作品は読者はつまらなく感じてしまいます。
最低でも数ページに一度は読者の脳を気持ち良くさせましょう。

一話の中で脳が気持ち良くなる要素をこれでもかと入れている作品ほど面白く感じ、読者の受けも良くなってコミックの売り上げも増やせます。
人気の作品は一ページ単位だったりコマ単位でガンガン読者の脳を気持ち良くさせています。
実際に色々な人気の作品を「読者の脳を気持ち良くさせる」という視点で一ページずつ見ていくとそれがわかるでしょう。

 

漫画に限らずアニメやゲームやその他のエンターテインメントもほとんどがそうなのですが、「どれだけ強くユーザーの脳を気持ち良くさせるか?」が大事です。
いくら頑張って時間をかけて作品を作っても、「読者を強く楽しませる感じにはなっていない(脳が気持ち良くなっていない)」と、どうしても売れ行きや評判は悪くなります。

商業誌や漫画アプリで連載中の漫画家はもちろん、インディーズで活躍されている方も自分のネームを見て「この漫画は脳を気持ち良くさせているか?」をページ単位でチェックしていってみてください。
もし何ページにも渡って脳が気持ち良くならないシーンが続いているなら、構成を変えたり、この記事で紹介した脳を気持ち良くさせる色々な事をいくつも挿入していくと良いでしょう。