<ゲームの売れ行きアップ方法>第4回:楽しさを阻害する要因はゲームの売れ行きをどんどん落としてしまう

 インディーゲーム開発者やパブリッシャー向けに「ゲームのクオリティアップや売れ行きを増やす方法」を解説していくシリーズ。

 第4回は「楽しさを阻害する要因はゲームの売れ行きをどんどん落としてしまう」です。

 

<ゲームの売れ行きアップ方法>第4回:楽しさを阻害する要因はゲームの売れ行きをどんどん落としてしまう


 ゲームは色々なタイプがありますが、基本は楽しい時間をすごすためにユーザーは買っているわけです。
 「そんなの当たり前だ」と思うかもしれませんが、実際は「さほど楽しくない」「楽しい部分もあるが、それ以上に楽しさを大きく損なう部分も色々入れてしまっている」というゲームが非常に多いです。
 インディーゲームだけでなく大手や中小のゲーム開発歴の長い会社のゲームでもこれをわりとやっています。

 インディーゲーム開発においては、「脳がきちんとこまめこまめに気持ち良くなるか?」や「脳が気持ち良くなるのを阻害している要因がそこかしこにないか?」を特に注意しましょう。
 この二点がきちんとできていない作品は評価も悪くなり、ストアでのユーザーレビューでも悪く書かれがちで、そういうマイナス評価のレビューを見たユーザーは買う気が無くなって売れなくなってしまいます。
 マイナスレビューが多い作品はもうセールでいくら安くしようが売れ行きは絶望的になります。

 実際に色々なインディーゲームをプレイすると、「このゲームはつまらない時間がやけに多い」とか「こういう要素がゲームの面白さを損ねている」と感じるものも多いでしょう。
 「ゲームバランス的に楽しいよりイライラの方が強い」なども。

 ユーザーインターフェイスのデザインも面白さに影響しています。
 インディーゲームによっては「ユーザーインターフェースが洗練されていなくて、操作が煩雑だったりわかりにくい」という事で楽しい気持ちを大きく損ねているのも多いです。
 UIの反応がもっさりしているのもマイナスとなります。
 階層が深いウインドウを閉じるのにいちいち一つ一つのウインドウを閉じていくのではなく、ワンボタンで全て閉じるボタンも用意するなど、ユーザーの快適性を考えたUIデザインをすべきです。

 また、「移動に無駄に時間がかかる」「ゲーム展開のテンポが悪い」「クラフト系で素材を集めるのにやけに時間がかかりすぎる」「メトロイドヴァニア系では同じような場所を行ったりきたりしすぎて、サクサクとは進まない」みたいな事でも「楽しさを阻害する」「それでゲームの評価を下げて売れ行きを落とす」という事になります。

 アクションゲーム系(ステージクリア型、メトロイドヴァニア型、3Dアクションなど)では「同じ敵(雑魚)と繰り返し戦わせすぎる」もプレイの印象を悪くさせます。
 敵はテンポよく切り替わっていくようにした方がプレイ感も動画での見栄えもよくなります。
 
 昔のアーケードのアクションゲームはテンポよく敵が切り替わっていったのですが、家庭向けのアクションゲームでは「ステージ内に登場する敵の種類が少なくて、同じ敵と何度も何度も戦わせる」というダメなゲームデザインになっているのもわりとあります。
 そういうのはプレイヤーもプレイしていて途中でつまらなく感じてきますし、プレイ動画を観た人にとっても「同じ敵ばかり出てつまらなそう」と思われ購買意欲をわりと落してしまいます。

 他にもRPGとかでは「育成メインのダンジョンRPGでキャラの成長が遅すぎる」や「同じ敵と戦いすぎて作業感が強い」、「ストーリー主導のRPGで戦闘がただの時間稼ぎになっている」なども楽しい気持ちを阻害します。「一つのダンジョンが長すぎる」なども。
 
 RPGでは「町や家の中などが無駄に広くて町の探索が面倒になる」というのもよくあります。RPGを作りなれていない人は無駄に町や家の中を広くして、こういう「楽しい気持ちを阻害する事」を入れてしまいがちです。

 アドベンチャーゲームでは「キャラクターの面白くもない会話でずいぶんとボリュームが水増しされている」という作品もわりとあります。
 楽しめる会話ならともかく、楽しくない会話が長く続くゲームはプレイヤーにとっては苦痛でしかありません。テンポが悪いだけ。
 そうなるとストアに掲載されるユーザーレビューも芳しくなくなり、売れ行きは相当悪くなります。
 
 アドベンチャーゲームではなくRPGやアクションゲームでもキャラクターのあまり面白くない会話パートが長いとうんざりするユーザーもわりといます。
 だらだらとした会話ではなく、テンポよく話が進んでいくようにしましょう。
 3D系のゲームでムービーパートが長いゲームもプレイヤーの気持ちを大きく萎えさせます。
 

 アクション系ではステージデザインだったり、バトルや敵やギミック配置などで「きちんとこまめこまめに脳が気持ち良くなるか?」を意識しましょう。
 適当なレベルデザイン、雑な敵配置、雑なギミック配置、いまいちなゲームバランスだと、「脳があまり気持ち良くなっていない」という感じになりがちです。
 過去の名作アクションはいずれもかなり考えてレベルデザインがされています。だからこそしっかり面白いのです。

 適当なゲームバランスのゲームは動画でも「このゲームなんだか面白くなさそう」と思われてしまいます。
 昨今は「動画を観て面白そうだと思ったから自分もこのゲームを買った」という人がかなり多く、そういう点でも適当に作ったレベルデザイン、適当に作ったゲームバランスはプレイ動画でつまらなく感じられてしまい、売れ行きにかなり悪い影響を与えます。

 難易度が高いゲームも、「適度にそれを乗り越える瞬間があり、カタルシスを味わえる」というなら良いのですが、「やられてばっかりで先に進めずストレスがどんどん溜まっていく」という場合は脳が全然気持ち良くなりません。
 一部の難易度が高いゲームは「難易度調整機能が無い」というのも有名タイトルでさえわりとあり、「人気らしいからプレイしたが、実際遊ぶと自分には難しすぎて途中でプレイしなくなった」という人も多いです。
 そういう人は同じ会社からまた別のそういうゲームが出てももう買いません。
 きちんと救済策として「難易度も落とせる」や「キャラ育成で難易度を下げられる」などは用意しておくべきでしょう。
 
 フロムソフトウェアのソウル系みたいに「かなり難しいけど、キャラをきちんと育成したりアイテムで攻撃力を高めると難しさはある程度落としていける」という絶妙な調整をしているなら良いですが、基本的に難易度調整機能は無いよりはあった方が良いです。
 またそのフロム作品でも実際は人によっては難しすぎてストレス過多で途中でプレイしなくなる人もわりといます。

 昔は人気が無かった洋ゲーは今では大きく売れるようになったのは難易度調整機能がきちんと付いて、上手くない人でも楽しく遊べるようになったからです。
 昔の洋ゲーはeasy的な難易度が選べなかったり、easyでもやけに難しいのが多かったです。
 今はプレイ中に好きなタイミングで自由に難易度を落としたり上げる事が可能になり、これでもずいぶんとユーザーがよりゲームを楽しめるようになっています。

 難しいゲームを作る人でわりと勘違いしがちなのが、「難しくてもプレイを繰り返すうちに慣れてきて難しく感じなくなるだろう」という事。
 実際はその「プレイを繰り返す」が「同じステージを何度もプレイするのは飽きたり苦痛である」という人が多いという事は理解しておくべきです。
 
 ほどほどの回数ならともかく、難しすぎなせいで何度も何度も繰り返し同じステージやボス戦をプレイさせるようなうんざりするゲームだと、今ゲームがあふれている時代には低評価レビューを書かれて他のゲームに逃げられるだけです。

 このように、「プレイ中こまめに脳が気持ち良くなる瞬間がある」のと「脳が気持ち良くなるのを阻害する要因が少ない」というゲームはユーザーレビューで評価が高くなり、その評価の高いレビューを見てストアでもより多く売れるようになります。
「しっかり脳を気持ち良くさせているか?」は、かなり売れ行きに影響してきます。

 ゲームを作る事にいっぱいいっぱいで、「このゲームはこまめにユーザーが楽しい気持ちになれているか?」や「楽しさを阻害する要因はできるだけ無くせているか?」はきちんと考えていないと思われるゲームがインディーゲームではわりと見かけます。
 インディーゲームでない大手メーカーのフルプライスゲームでもそういうのは良くあります。
 開発中は「プレイしている人はこまめに楽しい気持ちになっているか?」「楽しくないなら、何がそれを引き起こしているのか?」を頻繁に確認しながら作っていくべきです。

 昨今のゲームは移動にやけに時間を取られるゲームも多いですが、「ショートカット開放で移動が楽になる」や「ファストトラベルやポータル(ワープゲート)を多く用意する」などで移動の面倒くささをきちんと解消しましょう。


 

このシリーズは私のnoteの「ゲームの売れ行きアップ方法」のマガジンで連載しています。
第1回から順番にお読みください。


次回は第5回「売れるためにはグラフィックを軽視してはいけない」です。