見出し画像

もの太郎

もの太郎


昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へそんたくに行っていまし た。

実は、 おじいさんは世界的に有名なプロゴルファー、 おばあさんは仕手師として、ある界隈でMr.Xとして恐れられていました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

おばあさんは、温泉宿の一人娘として育ちました。
日本の中でも暖かい気候に位置する温泉宿には、一年中いろんな食物が育ち、育った作物を使って作られた料理は天下一品と噂になるほどでした。
また若かりし頃のおばあさんはとても心の優しい娘で、湯治にくる猿や動物たちも快く迎え入れており、看板娘であるおばあさんのおかげで温泉宿はいつも大人気。 「旅人の心を癒してくれる宿」としてお客さんが途絶えませんでした。


る◯ぶ 注7)



しかし、そんな温泉宿に悲劇が訪れます。 心優しいおばあさんの両親が、行きがかりの旅人たちに殺されてしまったのです。
温泉宿から主がいなくなりました。


おばあさんはショックで頭が真っ白になり、しばらく現実を受け入れることができませんでした。
しかし現実というのは非情なもので、両親と家と仕事を失ったおばあさんを待っていたのは、温泉宿が抱えていた借金の返済でした。
両親を失った悲しみに暮れるのも束の間、おばあさんはすぐに別の仕事を始めました。
生きていくには、お金が必要だったのです。 居酒屋、警備員のバイト、夜のスナック・・・。
おばあさんは稼げそうな仕事を見つけては必死に働きました。そして必死に働く中で社会の厳しさを知ったのです。

「生きていくためには忖度(そんたく)が必要」

おばあさんが社会の波に揉まれる中で悟ったことでした。
そして人間の黒い部分を見すぎたおばあさんから「醜い何か」が生まれました。

その後、忖度の技術を高めるため、おばあさんは銀座や赤坂にある「忖度屋」に弟子入りしました。忖度技術を身につけるには忖度師の家に住み込む必要があり、それはまるで、技術をものにするために落語家の弟子が師匠の家に住み込みをするようなものでした。
忖度師の家には、政治家やプロアスリートなど界隈で有名な方や大物が度々訪れていました。ゴルフの好きな政治家にはプロゴルファーによるレッスンを受けさせるなど、忖度師の忖度はおもてなしの域を超えるものでした。
そしてそんな中で出会ったのが、当時プロゴルファーとして活躍していたおじいさん。政治家へゴルフのレッスンをするために忖度師の家を訪れていたのです。 その頃にはおばあさんもすっかり忖度の技術を身につけており、巷では「Mr.X」と言われるほどの立派な忖度師となっていました。

そんなおばあさんとおじいさんはすぐに意気投合し、お互いに惹かれあい、結婚。子どもには恵まれなかったものの、里山に移り住み、晩年まで仲良く暮らしていました。


仲良くゴルフを楽しむ夫妻

幸せな生活を送る一方、おばあさんの心の中にはある思いが残り続けていました。

「いずれはまた、人も動物も癒せる温泉宿をひらきたい」
大好きな仕事をもう一度はじめたかったのです。

しかし社会の厳しさが体に染み付いているおばあさんには、もう一度温泉宿を開くための手段として「誰かに忖度(そんたく)をしてお金を出してもらう」ことしか思いつきませんでした。

そして心が決まったある日、忖度相手を探しに川へいきました。
すると・・・川の上流から、どんぶらこどんぶらこと大きな「もの」が流れてきました。


「大きな」ものを発見 捕捉距離1キロ



その「もの」を川からすくいあげたおばあさんは、すぐさまおじいさんの元へ。 大きな「もの」を包丁で割ってみると、中から小さな男の子が出てきました。 玉のように可愛い男の子を、二人は「もの太郎」と名付け大切に育てました。
数年経ち、もの太郎が立派な男の子になったある日、もの太郎はこう言いました。

「鬼を退治しに行ってくるよ」

「鬼なんてどこにいるんだ。危ないからやめなさい」 おじいさんは必死に鬼退治にいくのを止めましたが、おばあさんには鬼の正体に心当たりがありました。
それは、両親を殺され、社会の中で人間の闇の部分を見すぎた自分から生まれた「醜い何か」でした。

おばあさんは、なぜ、もの太郎が自分のもとに現れたのかを悟りました。
おばあさんはありったけのきび団子をもの太郎に持たせ、旅立ちを静かに見送りました。
おばあさんの愛情が詰まったきび団子を受け取ったもの太郎は、旅の道中で犬、猿、キジを仲間にしました。
そう、若かりし頃のおばあさんが働いていた温泉宿に、湯治に訪れていた動物たちです。

仲間たちと協力し、もの太郎は、見事鬼退治に成功しました。 鬼は人間たちを殺して奪った大量の金貨を隠し持っており、もの太郎はその金貨を持ち帰り、おばあさんにすべて渡しました。
そのお金を使い、おばあさんは温泉宿を再開。 温泉宿を取り戻したおばあさんは、心優しかった若かりし頃の自分も思い出し、本当の幸せを取り戻したのです。 そんなおばあさんの姿を見て、プロゴルファーから落ちぶれてSEX依存症になっていたおじいさんも、正気を取り戻すことができました。

これは、人間の醜い部分から生まれた鬼を退治する、温泉宿奪還ストーリー。
めでたし、めでたし。

以下多分に誤解を招く可能性がある用語の注釈です。

注1)そんたく:せんたくではない
注2)おじいさん:影が薄い
注3)Mr.X:旧Twitterではない
注4)温泉宿:鹿児島県にある宿。
注5)天下一品:ラーメン屋ではない
注6)看板娘:カーネルおじさん的なポジション
注7)旅人の心を癒す宿:る◯ぶで「今、行きたい宿100選(1099年版)」に選出 P205〜206
注8)忖度:http://blog.tatsuru.com/2012/05/09_1813.html
注9)銀座や赤坂:1950年代後半から1980年頃まで高級な繁華街として栄華を極め、高級料亭、キャバレー、ナイトクラブなどが多く集まっていた。赤坂を題材とした映画 ゴジラvsモスラ(1992年)ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS(2003年)
注10)忖度屋:会員制
注11)もの太郎:別名「孫卓志」
注12)きび団子:岡山のきび団子とは別物
注13)キジ:世紀末でもないのに「ケーン!」となく
注14)金貨:大判小判の類。ただしソリドュス金貨も含む

よろしければご支援お願いいたします。 昔からボランティアを多面からしていますが、時間もお金も労力もかかります。 ご支援いただける方は、私自身への支援や物理的なご支援ご協力等含めお願いできれば幸いです。