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釘バットは特許になるのか?

特許の実務を伝えるのに何が良いのか、、
と考えたとき、頭にふと釘バットが浮かびましたので、この釘バットを特許風に表現したいと思います。

釘バットが分からない?
そういう人は、ヤンキー漫画を読んで勉強してください!

たぶん、東京卍リベンジャーズ、特攻の拓(ぶっこみのたく)、GTOあたりで、出てくると思います!

単に、バットに釘がついているだけなんですけどね。

例として、私が発明者の特許のリンクを張りますが、特許の書類は

①書誌
②要約
③請求の範囲
④詳細な説明
⑤図面


の項目から構成されており、実際の権利範囲について記載されているのは、

③の『請求の範囲(請求項)』

と呼ばれところになります。

この請求項を上手く書くのが、弁理士・知財部員の腕の見せ所になります。

どう書くのが上手いかというと、

A:広く(上位概念で)書く
B:特許性(先行技術を含まない)がちゃんと分かるように表現されている


このA、Bの2点を守ることです。
※別の機会に細かい解説をしようと思いますが、ざっとは上記を理解すればOKです。

では、今回の釘バットを特許の請求項として表現するには、先ず、先行技術との差を見つけなければなりません。

一旦、先行技術は、従来のバットだけにします。
従来のバットの特徴は、
・木製、あるいは金属製で、棒状の形状になっている。
・持ち手の部分は、ボールが当たる打撃面に比べて細くなっている。

という感じですかね。

では、釘バットの特徴は、
・打撃面の箇所に釘(尖ったもの)が刺さっている
シンプルにいうとこれだけですね。

そうなると、最初の請求項1は、

【請求項1】
打撃面に鋭利部材を有する、棒状部材。


とでも表現しましょうか。
うーん、何だか特許っぽくないなぁと思いましたか?

これが本当に新しいアイディアなのか?という点ですか。
先行技術を従来のバットだけにしましたが、鋭利部材と聞くと、包丁が頭をよぎりますよね。
包丁との差を明確にするために請求項1を再表現します。

【請求項1】
曲面を有する打撃面と、前記曲面と交差する外部方向に向かって突出する鋭利部材を前記曲面の一部に配置した、棒状部材。

でどうでしょうか?
包丁は、曲面部を有するものは、あまりないと思います。
更にその曲面部から、外部方向に向かって突出する鋭利部材となると、包丁の中でも穴あき包丁とか、リブ(カマボコ形状のアーチ部)がある包丁はありますが、突出する鋭利部はないと思います。

こんな感じで、請求項1を決めます。
なお、このシンプルな特許に必要な最低限の発明の構成を『メインクレーム』と良く呼びます。(アメリカ出願だと、請求項をクレーム(claim)と呼ぶところから来ています。)
また、請求項1のような独立した請求項に対してぶら下げる請求項を従属項と呼びます。これは、メインクレームに対して『サブクレーム』と呼びます。

では、請求項1が出来たところで、従属項を作って行きましょう。
この従属項を作る意味は、特許出願したときに、請求項単位で特許として適格か審査官に判断されます。よって、この請求項が多いと、他の請求項がダメでも従属項の○○だと特許として認めるという判断がでるので、多ければ多いほど特許的にはありがたいです。

※ただし、この請求項が多いと、特許庁に支払う金額が上がるので、費用対効果のバランスで適切量に押さえます。

改めて釘バットをしっかり観察しましょう!
※これが大事です。舐めまわすようにみましょう。そして、触って感触も確かめましょう。冗談抜きに、知財部員は、この変態的な細かさが大事になります。
効果のない特徴は、特許に貢献しないので、その特徴がどんな効果があるかもセットでメモを取る。

従属項に使えそうな、特徴を挙げると

・持ち手の部分には、釘が無い
→これによってケガしない効果がある。
・バットの先端部に突きでも攻撃できような釘がある。
→振っての攻撃以外にも突きで攻撃可能になる効果がある。
・釘の部分が錆びたり、壊れたときに取り換え可能な機構にする。

→壊れたら使い捨てではなく、メンテナンスして長く使える釘バットになる。


上記のように書き出した特徴を請求項で表現すると、

【請求項2】
持ち手の部分に鋭利部材を配置しないことを特徴とする、請求項1に記載の棒状部材。
【請求項3】
棒状部材の先端部には、外部方向に突出する鋭利部材を少なくとも1つ以上有する、請求項1に記載の棒状部材。
【請求項4】
鋭利部材は取り換え可能な機構を有する、請求項1に記載の棒状部材。

みたいな感じですかね。
だいぶ特許っぽくなりましたね!

これが、発明して、特許の形に落とし込む作業になります。
この作業、やってると楽しくなってきますよ。

きっと、ラッパーの人達が集まると韻を踏んで言葉遊びをするのと同じで、特許業界の人達が集まると、請求項をどう表現するかで盛り上がります

また、面白い題材で、特許の楽しさ、奥深さを伝えて行きたいと思います!


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