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推し色は時に人生を狂わせる話。

見事な着水でした。
私は水泳の飛び込み競技には詳しくないのですが、実に美しくダイナミックだったと思います。
先程まで賑やかであったはずのその場が嘘のように静まり返り、思わず満点の札を掲げそうになってしまいました。

…選手が友人の推しのアクリルスタンドで、プールがときわ亭のレモンサワーのジョッキでなければの話ですが。


皆さまこんにちは。
自分をライターだと思い込んでいる節がある、0秒レモンサワー® 仙台ホルモン焼⾁酒場 ときわ亭の公認アンバサダー『0番隊』第3期メンバーの二ノ倉らむねと申します。

「オタクというものは罪深き生き物です」と書くと主語が大きくなりすぎてしまい、オタクの皆さまに対して失礼になってしまいます。なので、「私の周りのオタクはみな罪深き生き物です」と書きたいと思います。

私を含め、我々のコミュニティにいるオタクには見境がありません。

いつでも生活の全てで推しの概念をゾンビのように探し求めてしまう化け物たちの集まりです。

とくにメンバーカラーやイメージカラーはその最もたるものでしょう。

ある青色のオタクは青空を見て、オレンジ色のオタクは夕焼け空を見て「概念だ…」とうっとりしておりました。
流石に規模が大きすぎます。

かくいう私も昔、メンバーカラーがピンクの推しがいた名残で持ち物の全てがピンクです。
バッグもスマホケースもお財布も傘も全てピンクです。
なんなら昔、地下アイドルグループへ加入しないか?というお誘いを受けた時に「メンバーカラーがピンクじゃないからやらない」と断りました。
こんなにナメた理由で拒む馬鹿が何処にいるのでしょうか?
安心してください、ここにいます。

だんだん推しのメンバーカラー=自分の色という式が出来上がってしまうのです。
それはファンを辞めたあともずっと続きます。
今でも私は「ピンクは私の色だ!」と思い込んでいます。
とにかく、色のインパクトというのはものすごいのです。

そんな、私がまだときわ亭の公認アンバサダーをやらせていただく前のある日、オタク仲間とときわ亭へ飲みに行った時悲劇は起こりました。

その日は現場の帰り、若い方々の言葉をお借りするととても「エモい」「胸熱」な日でした。
あと何があればこの現場は完璧になるのか?
そう、お酒です。
お酒はオタクのクソデカ感情をどんどん膨らませてくれる魔法のアイテムです。
現場以外で会うことのないあの子とも打ち解けられます。
コミュ障をかき揚げにしたかのような我々の背中を押してくれるのです。

迷わず90分飲み放題コースを選び、我々は推しのアクリルスタンドをテーブル席で並べ、せっせと写真を撮りました。
推しのアクリルスタンドにお肉を食べさせる画を撮ることも忘れません。
その時です。
私の隣に座っていたAちゃん(仮名)が少しいつもと様子が違うことに気がつきました。
思わず「Aちゃん、どうしたの?具合悪い?」と聞くと、Aちゃんは今にも泣きそうな顔で「緑…緑がないよ…」と答えました。

そう、緑がないのです。

その日我々はレモンサワーの味を変えられるシロップを選び、各々の推しのメンバーカラーで『概念レモンサワー』を作っていました。
これがまたよく映え、推しのアクスタも心なしか喜んでいるようでした。

推しのメンバーカラーを飲み干せることはこの上ない幸せです。

でもそこに、Aちゃんの推しのメンバーカラーである緑色のシロップはなかったのです。
オタクとの飲み会で推しの概念を見つけられないこと…それがどれほど切ないことか例えるならば、ひとりだけあんこが入っていないあんパン、タコの入っていないたこ焼き、クリームのないシュークリームを食べ続けるくらいのことだと思います。

Aちゃんは普段とても大人しく、現場でも推しに認知されたくないタイプのオタクでしたが、とても熱い想いで推し事に励んでいました。
それを分かっていたからこそ、隣で見ていてとても切なかったので、私は「美酢のマスカットならあるよ!」とシロップを渡し、Aちゃんも「そうだね!それを入れてアクスタ(アクリルスタンド)と写真を撮ろう!」と気を取り直して写真を撮り始めました。

すると、
お酒が回っていたこともあり
あろうことかAちゃんは手を滑らせてしまい
レモンサワーのジョッキの中にアクリルスタンドを落としてしまったのです。

物理的に酒に溺れたAちゃんの推し。
しばしの沈黙の後、ざわつく周りのオタクたち。
「どうしよう!入っちゃった!!」
「お箸で取る?ああ、でもちょっと取りづらいところに入っちゃってるなあ…」

Aちゃんはいつものように静かでした。
それが逆に怖く、なんとか先程までの空気を取り戻さねばとハイテンションで盛り上げるオタクたち。

そして、Aちゃんはジョッキをじっと真顔で見つめた後、
推しのアクリルスタンドが入ったままのレモンサワーを飲み干しました。
それはもう見事な飲みっぷりでした。

そして、夜勤後のバキバキに血走った目で一言。
「ああっ…、推しの出汁が良く出ている…♡最高♡」
我々は何も言えませんでした。
狂気はいつも、日常の延長線上にあるのです。

その時私は誓いました。
推しの概念を見失い彷徨った結果、狂ってしまったこの哀しきモンスターを救わねばならないと。


Aちゃん、お元気ですか?

私、ときわ亭の公認アンバサダーになったよ。
これからもAちゃんみたいにときわ亭に推しの概念を求めて訪れるオタクの方がいらっしゃるかもしれない。
あの時あなたに何もできなかった悔しさをバネにして、私はオタクに寄り添えるアンバサダーになりたいんだ。
もう現場では見かけないけれど、どうか元気でね。
見守っていてね。
私より。

それからずっと、レモンサワーの味変シロップを選ぶたびにあのAちゃんの表情を思い出してしまいます。
どんなホラーよりも恐ろしく、背筋が凍るのです。
緑色がないことで、Aちゃんの怨念を強く強く感じます。

ときわ亭さん!!
緑のシロップがあったら!!私はとても嬉しいです!!
それかメロンソーダなんていかがでしょうか!!
流行っていますし!映えますし!!私が好きですし!!

ほかにも色のバリエーションがあったらオタクは嬉しいですよね!!!!!!!!

という身勝手な要望を、両手を上にあげながら勝手に書き殴って今回のnoteは終わりにしたいと思います。

それではまた、気まぐれに何処かでお会いしましょう。
二ノ倉らむねでした。

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