笹木というお客さま。
時雨はいわゆる場末のスナックで、東北の名前を聞いてもわからないような工業都市で埋もれるように営業している。ジンジャエールを注文してもコーラしかないと断られるほどに来客がない。
笹木は毎週通ってくれる常連客で、私の事を源氏名で呼ぶ何人かのひとりだ。単身赴任の転勤族で営業職のキャリアは長く、たまたま他のお客が居合わせた時などは人当たりもよく、彼がカウンターに座るとホスト役をしてくれるので助かっている。
その日は私の誕生日が近くディオールの紙袋を携えて来て、年末年始のどうして過ご